私立小学校併設のアフタースクール

小学校とアフタースクールの建物をつなぐ細い路地には、子どもと仲良しの守衛さんが常駐し、いつも見守ってくれている

東京メトロ丸の内線・東高円寺駅から徒歩5分ほど。青梅街道を一歩入った閑静な住宅街にある「新渡戸(にとべ)文化アフタースクール」は、私立「新渡戸文化小学校」に併設された学童保育だ。同小学校に通う子どものために、2011年に専用の3階建て校舎が完成したという。敷地内には小学校のほかに、幼保一体の子ども園や中学、高校、短期大学まである。

運営する新渡戸文化学園の前身「女子経済専門学校」初代校長は、かつての五千円札の肖像として有名な新渡戸稲造氏だ。新渡戸文化アフタースクールは、小学校のグラウンドや体育館、音楽室、図工室、調理室などの充実した施設をフル活用して行う多彩なプログラムが特徴だという。

取材に伺った火曜日は、「TOPアスリート」「料理」「アート」「衣・デザイン」「フルート」、そして、「レゴ(R)」を使ったロボット教室「ファーストレゴリーグ」という6つのプログラムが実施されていた。プログラムは全部で約20種類あり、年度初めの体験期間を利用して、子ども達は自分のお気に入りを見つけて申し込む。プログラム料金は月謝制で、週1回5,000円~7,000円程度と通常の習い事よりお得なくらいだ。同施設を毎日利用する約90名のほとんどが、何らかのプログラムに参加しているそうだ。

早速「アート」の教室に行くと、パプリカや玉ネギを真剣に見つめて描写しているグループと、"クロッキー"と言われる速写、つまり、対象を素早く描くというグループに分かれて活動していた。「5分で描くよ! 消している暇はないよ」と画家の桜岡みゆき先生が熱心に指導していた。

このほか「TOPアスリート」は陸上競技や球技などを中心に行い、「フルート」は2対1で楽器演奏のレッスン、「衣・デザイン」では布を切ったり貼ったりしてネームプレートを作成するという。いずれのプログラムも教えてくれるのは、各界で活躍する一流の講師陣だ。

天然芝のグラウンドで、陸上競技や球技などのトップアスリートの指導を受ける。サッカーは、東京ヴェルディのプロコーチが指導!

「アート」は、画家の桜岡みゆき先生が絵画を指導する。4~7月は陶芸、1~3月は造形・染色を行い、子ども達の感性を引き出す

ネームプレート作成中! 「衣・デザイン」のプログラムでは、イラストレーターやデザイナーなどから本格的にデザインについて学ぶ

日本科学未来館の元サイエンスコミュニケーターで化石の専門家・安曽潤子さんによる化石の授業。本物の化石を見た後、レプリカをコツコツと叩いたり、色を塗ったりも

これほどプログラムが充実している理由を同施設小嶋輝夫校長に聞くと、「多感な時期に、テストで100点をとるだけではない豊かな本物体験をしてもらいたいと考えています。理科の実験をやるには理科室が、料理をやるには調理室が必要で、学校ならそれが実現可能です」と熱く語ってくれた。同施設の開校準備室を立ち上げた2009年、全国のどこを探しても思い描くような学童保育はなく、まさにゼロからのスタートで試行錯誤を重ねて現在の形になったという。

振り替え休日や臨時休校の日も開校

入会に就労条件はなく、同小学校児童の6年生まで参加できる。預かり時間は7時30分~19時まで。夕食提供はない。帰宅時は、最寄り駅や最寄りバス停まで送ってくれるので安心だ。スタッフは、教員や保育士を目指す学生アルバイトと子育て経験豊富な主婦が中心。さらに、小学校併設なので学校との連携は抜群によく、行事の振り替え休日や台風などの悪天候で臨時休校の時にも、アフタースクールは開校している。同施設の休みは、土日祝と12/29~1/3の年末年始のみだ。

「共働き家庭でも子どもに習い事をさせて可能性を広げてあげたい」というニーズも高いが、これまでは、送迎ができないことを理由にあきらめているケースが多かった。放課後、学園内で様々な体験を通して良質な教育が受けられる同施設は、そういった背景もあり年々応募者が増えているそうだ。

ただ、付加価値が高い学童保育は、その分費用が高額なものが中心で、公立公営や父母会運営学童などの平均月額が約7,300円(「学童保育実施状況調査」(2012年5月1日現在)より)なのに対して、民間学童は月額5万円から10万円程度のものもあったりと様々だ。同施設は、週1回のレギュラー利用が8,400円~週5回利用で3万4,000円(ともに4月・1~2年生)と比較的リーズナブルで、専業主婦からフルタイム勤務の方まで、幅広い利用者がいるとのこと。

学童に求めるものは、家庭によって違うだろう。選択肢が広がることで、見極める目も養っていく必要がありそうだ。後編となる次回は、宿題サポートや給食などを詳しくお届けする 。