普段、「モテない」「彼氏ができない」「結婚したい」などの、小さな胸に積もり積もった愚痴や願望を吐露していると、こんなことをよく言われます。

「出会いを積極的に求めてないのがいけないんじゃない?」
「そんなに女子会ばっかりしてたら、どんどん男が遠ざかっていくよ」
「仕事に夢中っていう印象だから、本当に結婚したいように見えない」

周りの友人たちも、

「猫飼ってたら、男運が遠ざかる」
「趣味にハマりすぎて、男から見たら『男なんかいらないんだな』って感じがする。だからモテないんじゃない?」
「一人の生活が充実しすぎてて、男がつけ入る余地がない」

などと言われることがあるそうです。

何をしたら結婚できない?

私はこれらの、特に結婚している人が言うアドバイスを、真剣に聞いていました。そして、素直にアドバイスの通りに行動しようとしました。
「今月は、先週も女ばかりで飲んだし、今週はちょっとやめておこうかなぁ」
「最近、宝塚が好きなんだけど、あまりハマると男運が遠ざかるのかもしれない」
「猫、飼いたいけど、飼ったら結婚できないのかもしれない……。せめて次に引っ越してからにしよう」
というように、「こういう風にしてたら結婚できないよ」というアドバイスに、なるべく従うようにしていたのです。

それで私の生活がどうなったかというと、どんどんつまらなく、息苦しく、ちまちましたものになっていきました。これらの「○○したら、結婚できない(○○しないほうがいい)」というアドバイスに従うと、生活の中にどんどん「○○していては結婚できない」というタブーが増えていきます。そして、結局、結婚もできていないうえに、楽しくもない私の生活ができあがっていったのです。

「○○していては結婚できない」。果たしてそれが真実なのでしょうか。そんなことを全部、細かく気にしながら、楽しいこともろくにしないでくすぶっている女が、恋愛や結婚に近い存在だとは、あまり思えないのです。

ひとつひとつ考えてみると、たとえば「女子会をしすぎると恋愛が遠ざかる」というのは、女子同士で「え~、でも○○ちゃんかわいいよ! いくらでも男選び放題に見えるけどな~」などという、その場しのぎの慰めを言い合ったり、お店の片隅で周りのお客さんがドン引くような赤裸々すぎる本音トークを展開したりする行為が、はたから見ると醜く、とてもモテそうにないから言われることで、女同士で飲むこと自体が、まるで呪いのように婚期を遠ざけるものではないはずです。

宝塚にハマっている女性は、既婚女性も非常に多いですし、猫を飼っていて彼氏がいる女性、結婚している女性だって当然います。仕事を一生懸命していても、結婚する人はします。

「楽しさ」を実感しよう

一度、その「○○していては結婚できない」という枠組みを取り払って、自分の楽しいことをしてみよう、と考え、今月から実行していますが、そうすると自分の毎日がとても充実しているように感じられました。

以前は、人の集まる場所に行っても、「今日も出会いのない場所に出かけてしまった……」などと落ち込んでいましたが、そういうことを考えなければ、それは面白い人たちとたくさん会えて、ただひたすら楽しい会だったし、女子会をしては「また女同士で飲んでしまった……」と、タブーを破った感に打ち震えていましたが、禁止事項だと思わなければ、それはただ大好きな女友達と、心が触れ合うような有意義な会話ができて本当にうれしい、という、喜びに満ちた時間だったのです。

「○○していては結婚できない」という言葉には、確かに一抹の真実が含まれているとは思います。しかし、その真実が何かを吟味することもせず、ただ「しないでおけば無難」とばかりに、細かい禁止事項ばかりを積み重ねていては、不自由になるばかりです。

ときには、そういった禁止事項を捨てて、深く深呼吸するような気持ちで、「私の人生って、楽しいんだなぁ」ということを確かめてみる時間も、独身生活の中では必要なのではないでしょうか。

<著者プロフィール>
雨宮まみ
ライター。いわゆる男性向けエロ本の編集を経て、フリーのライターに。その「ちょっと普通じゃない曲がりくねった女道」を書いた自伝エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を昨年上梓。恋愛や女であることと素直に向き合えない「女子の自意識」をテーマに『音楽と人』『POPEYE』などで連載中。

イラスト: 野出木彩