ワコムは3月21日、公式YouTubeチャンネルにて「ワコムオンラインセミナー【早描きチャレンジ!】魅せる線画を学ぶ!まごつき先生のイラスト講座【液タブ】」を開催。新進気鋭の映像制作チーム「Hurray!(フレイ)」で活躍中の”まごつき”さんがイラストの描き方を解説したほか、代表者の”ぽぷりか”さんが映画製作の裏話を明かしました。

  • ワコムが公式YouTubeチャンネルで無料の「まごつき先生のイラスト講座」を開催

    ワコムが公式YouTubeチャンネルで無料の「まごつき先生のイラスト講座」を開催

早描きのコツとは?

今年(2024年)の初夏には、Hurray!の3名が手がけたオリジナル劇場アニメ『数分間のエールを』の公開が控えています。そこで今回のオンラインセミナーでは、アートディレクターのまごつきさんが制限時間内でキャラクターを描きあげるライブドローイングに挑戦しました。

  • 2人のプロフィール。Hurray!代表のぽぷりかさんはチーム内でディレクションを担当。まごつきさんはコンセプトアートやキャラクターデザインなどのビジュアル部分を担当

まごつきさんは日常的にWacom Cintiq Pro 16を使っているそう。この日は「Wacom Cintiq Pro 17」と「CLIP STUDIO PAINT」の組み合わせで、映画の主人公「朝屋彼方」のイラストを描きはじめます。画面には、作業をする手元の様子が映し出されました。

  • Wacom Cintiq Pro 17でドローイング。まごつきさんからは「サイズ感がちょうど良いですね。これ本当に欲しい...」というコメントも

同じ美術大学の同期で、授業では席も隣り同士だった2人ですが、こうして白紙状態からイラストを描き始めるまごつきさんを見るのは、ぽぷりかさんとしても「初めて」とのことです。

  • まったくの白紙からスタート

テーマは、MV(ミュージックビデオ)の制作に没頭する男子高校生の朝屋くんが、両手でLの字をつくってフレーミングを考えているポーズに決まりました。下書きのない状態からスタートしましたが、迷いのないサササッと勢いのある描きぶりで、ペン先からは次々に柔らかい線画が導かれていきます。

  • 勢いよくペンが走る!!

まごつきさんは普段、どんなブラシを使っているのでしょうか?そんなMCからの問いかけには「最近はCLIP STUDIO ASSETSで面白そうなブラシを見つけて使っています。以前、オンラインセミナーに出演したときはガサ伽サ線画ペンを使っていました」と回答します。この日は「てんペン」を使用。ファーストタッチのインクにじみが良いアクセントになっていました。

  • クリスタのストアでダウンロードした「てんペン」を使用

では、イラストを早く描くコツは?まごつきさんは「迷わないこと」を意識しているそう。「たとえば目の輪郭を描いているとき、なぜか上手く決まらない、ということがあります。そんなときは一旦、ほかのところを描き進めます。同じところで立ち止まってしまい、1時間近く顔をこねくり回している、なんてことになると気持ちも萎えてきますから。先にシャツを描くか、なんて切り替えたほうが上手くいきます」と話します。

  • 作業開始から、ここまで10分ほど。視聴者からは「まごつきさんの力強くて格好良い絵が大好きです」という書き込みも

映画『数分間のエールを』で監督を務めているぽぷりかさんは、今回の作品について「フル3Dだけれどイラストチックなルックになっているので楽しみにしてもらえたら」とアピールします。なぜ、3Dアニメにしたのでしょう?

「やったことが無駄にならないのが3Dなんです。初期の頃は2Dのアニメーションを作っていました。ただ、映画のような尺の長い作品になると、手書きの2Dアニメでは何年かかるか...(笑)。たとえば2Dのアニメを1カット描いてもらったときに『あと少しだけアオリ(下から見上げる構図)で描いてもらえたらイメージ通りかも』なんて伝えても、直すことはできません。2Dの手描きだと、描いたものは修正がきかないんです。その点3Dなら、描いたあとから角度も調整できますし、場合によっては『全部のキャラクターの目を少しずつ大きくする』なんて修正も容易です」(ぽぷりかさん)

まごつきさんは、黙々と手際よくイラストを進めていきます。寄って細部を描き、引いてバランスを整え、頻繁にキャンパスを回転させて、ときには左右反転させて。特徴のある描き方は、しかしとても効率的に映ります。ぽぷりかさんも「絵を左右反転させても、どっちから見てもキャラクターのバランスが崩れていない。うまい絵だねぇ」と褒め讃えます。

  • ここで左手デバイスを紹介。手にフィットする形状で、クッションがあって手が疲れないそう。ボタンが多いのもお気に入りで「これがイチバン使いやすい」とまごつきさん

使用するレイヤーは少なめ(ほぼ1枚)。色ごとに分けたりはしていません。この描き方について、まごつきさんは「たとえば手などは、後から形を変えるかも知れないので取り敢えず別レイヤーで描いておいて、問題ないと思ったら結合します」と解説します。

  • レイヤーは少なめで、手など動きのある部分にだけ使う

ところで映画監督って、どんなことをするのでしょう?ぽぷりかさんは、今回の制作で担当した作業を順を追って説明していきました。

それによれば、まずは映画のテーマを決定。そしてストーリーの流れ、キャラクターの設定、ざっくりした方向性を決めていきます。脚本家に依頼して、内容をすり合わせ。コンテを作り、BGMのイメージもはめていきます。ここでぽぷりかさんは「コンテだけで3~4か月かかりました」と苦笑い。3Dモデルのデザインをモデラーに発注して、修正して、ときには自らモーションキャプチャのアクターも務めて。アニメーションのディレクションをして、まごつきさんとも相談しながら絵づくりを詰めていく。現在はその最終段階にあり、自分たちで1カットずつ絵を描いている、との話でした。

視聴者から「影響を受けた作品」について聞かれると、まごつきさんは「NARUTO -ナルトです」と即答。一時期、キャラクターを熱心に模写していたそうで「いまも好きな人のイラストを模写することがあります。この人の絵がとても好きだなぁ、と思ったら模写してみる。すると線の選び方、身体の描き方など、自分が持っていないものが見つかります。逆に、自分の手癖だけで絵を描き続けてしまうと上達がなくなり、方向性が凝り固まってしまいます」。

  • そして塗り工程へ

作業開始から40分ほどで塗り工程をスタート。まごつきさんは「投げなわ選択でホイホイ色を塗っていくのがお気に入りです」と話します。

  • 塗り残し部分に塗るツールも使って時短

ぽぷりかさんに「描くのが早いねぇ」「ヘッドホンのアクセントが効いているねぇ」などと褒められながら、限られた時間内にイラストを仕上げていくまごつきさん。ときには2人で相談しながら構図を決める場面もあり、オンラインセミナー視聴者にもHurray!内の良い雰囲気が伝わったようでした。

  • イラストが完成!!

視聴者からは「色合いが爽やかで、温かな風を感じます。素敵な絵をありがとうございます」といった絶賛コメントが寄せられました。なおセミナーの様子は、現在もワコム公式YouTubeチャンネルにてアーカイブで視聴できるようになっています。

  • ワコムでは『Wacom Oneペンタブレットsmall』が当たるコラボキャンペーンも実施中。詳しくは公式サイトNEWSページを参照のこと