今年20周年を迎えるサントリーの「伊右衛門」は、緑茶を代表する有名ブランドの1つと言えるだろう。だが、同ブランドは2023年、発売以来過去最低の販売数量を記録(本体緑茶のみ)。そんな現状を打破すべく、サントリー食品インターナショナルはリニューアルした伊右衛門を3月12日より発売する。2月29日に開催された発表会では、ブランド戦略や新しい伊右衛門がお披露目された。

  • サントリー「伊右衛門」、過去最低の販売量を記録 - 起死回生のリニューアルとは?

苦戦を強いられる伊右衛門

「日本茶飲料は飲料市場で最も大きいカテゴリーであり、このカテゴリーで負けるわけにはいかない」。そう意気込むのはサントリー食品インターナショナル SBFジャパン ブランド開発事業部の多田誠司氏だ。

  • サントリー食品インターナショナル SBFジャパン ブランド開発事業部 部長 多田誠司氏

同社の2023年の国内清涼飲料出荷実績は前年比102%と、過去最高を記録した。一方で、主力商品ともいえる「伊右衛門」の販売数量は発売以来過去最低に(本体緑茶のみ)。

近年、競争が激化する緑茶市場。もともとサントリーをはじめ各社ナショナルブランドを展開していたが、2022年の価格改定以降、プライベートブランドが勢いを増した。さらに、麦茶やミネラルウォーターにユーザーが流出するなど、緑茶の生き残りは困難を極める。

「緑茶は単に喉をうるおすためのペットボトル茶の1つとなってしまい、緑茶ならではの独自価値が希薄化。その結果、いわば単なる止渇飲料(喉をうるおすための飲料)になってしまった。我々はこれこそが伊右衛門不振の原因だと考えています」

続けて、多田氏は「伊右衛門の原点は、最もおいしい緑茶を提供し、うるおい豊かな生活文化を創造すること」だと説明。独自価値を提供することで販売不振からの脱却を図るという。

近年、スッキリとした飲料が求められる一方で、濃い味わいへのニーズも高まっているとし、同社は"わかりやすい質の良さ"を追求。『一度飲めば違いがわかる、本当においしいお茶』をテーマに、緑茶本来の味わいが楽しめるよう伊右衛門を進化させた。

"一度飲めば違いがわかる"味わいとは

「伊右衛門本体史上最高レベルの濃さです」と、サントリー食品インターナショナル SBFジャパン商品開発部の伊藤康友氏は話す。「よりお茶らしい味わいとコクを存分に体感できる味わいへと進化をさせています」とそのこだわりを伝えた。

  • サントリー食品インターナショナル SBFジャパン商品開発部 伊藤康友氏

リニューアル商品は、茶葉の味わいをしっかり感じられるよう、厳選した茶葉量を1.5倍に。さらに、"香り抹茶"とうまみを引き出す"うまみ抹茶"の二種の石臼挽き抹茶を使用。"うまみ抹茶"を現行品の3倍にすることで、なめらかなコクを感じるようになっているという。

筆者も実際に、発売時・現行品・リニューアル商品の3種を飲み比べてみた。見た目・味わいともに、違いは明らかで、リニューアル商品は一口目から濃いうまみがグッとやってきた。渋さというよりもコクが増し、余韻も楽しめたように感じる。

  • (左から)発売時、現行品、新・伊右衛門。飲み比べることができた

またパッケージも、歴史ある堂々としたたたずまいに刷新。加えて、日本の文化や縁起物をテーマにしたイラスト(全8種)や、おみくじなどの遊び心もしのばせる。

  • 右側がリニューアル品

そのほか、堺雅人と古川琴音を起用したテレビCM、発売前サンプリングや流通向けセミナーなどプロモーションにも力をいれる。

多田氏は、「とにかくやれることは全部やります。過去最低の実績を受け、もう一度伊右衛門の原点に立ち戻り、過去最高レベルに濃い中身の伊右衛門ができました。一度は飲んでいただきたい。全社一丸となって新しい伊右衛門を成功させたい」と想いを伝えた。

20周年を迎えた伊右衛門の起死回生は果たしてどうなるのか。今後から目が離せない。