第73期ALSOK杯王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定リーグが進行中。10月10日(火)には羽生善治九段―佐々木勇気八段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、横歩取りの熱戦を96手で制した羽生九段が開幕2連勝を飾りました。

七番勝負の続き

近藤誠也七段との激戦を制した羽生九段。本局では先手の佐々木八段による横歩取り青野流の作戦提示を受けてさして時間を使わず玉を立つ変化を採用しました。相横歩取りの要領で力戦に持ち込む意図で、今年2月に指された藤井聡太王将との王将戦七番勝負第5局でも後手を持って採用しています(結果は藤井勝ち)。

盤上は飛車角総交換を経て一段落。しばらく前例同様の変化をたどったのち、先に変化したのは佐々木八段のほうでした。2筋の歩を成り捨てたのはその対局の感想戦でも触れられていた手で、後手陣を乱しつつ自陣右方への飛車の打ち込みを消す意味があります。これを受け後手の羽生九段は8筋への飛車の打ち込みに狙いを切り替えました。

余分だった利かし

羽生九段が香得を果たしたのに対し佐々木八段は両桂を中央に跳ね出して反撃開始。後手の玉頭に照準を合わせたのが好着想で、ここからしばらく先手の攻勢が続きます。4筋に飛車を打ち込んだのが厳しい金銀両取りで先手好調を思わせましたが、佐々木八段はこの直前に136分の長考で竜取りに金を寄った手を悔やむことになりました。

単に飛車を打っておけば先手から銀と竜を捨てて「玉は下段に落とせ」の寄せを実現する可能性があったところ、実戦の形では後手の竜が急所に利いているため先手は一気の寄せに踏み込めません。佐々木八段はやむを得ず攻めの手を緩めますが、そこには羽生九段の厳しい反撃が待っていました。

2枚の銀で先手玉への右辺に絡みついて左右挟撃を目指したのが羽生九段の決め手でした。駒を渡しても羽生玉に即詰みはありません。終局時刻は18時23分、最後は攻防ともに見込みなしと認めた佐々木八段が投了。勝った羽生九段は2勝0敗、敗れた佐々木八段は1勝2敗となりました。次局で羽生九段は豊島将之九段と、佐々木八段は近藤誠也七段と対戦します。

  • 50分ほど続いた感想戦では終盤の詰む詰まないの変化が重点的に検討された(写真は第62期王位戦挑戦者決定戦のもの 提供:日本将棋連盟)

    50分ほど続いた感想戦では終盤の詰む詰まないの変化が重点的に検討された(写真は第62期王位戦挑戦者決定戦のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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