第73期ALSOK杯王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定リーグが進行中。10月4日(水)には渡辺明九段―佐々木勇気八段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、急戦矢倉の熱戦を佐々木八段が87手で制して初白星を挙げました。

佐々木八段の急戦矢倉

ともに初戦を落として迎えた2戦目で先手・佐々木八段は矢倉の作戦を選択。囲いの一部をなす左銀を前線に繰り出したのは急戦を仕掛ける狙いで、ここで「佐々木八段の攻め対渡辺九段の受け」という構図が明確になりました。ともに想定の範囲内だったか、駒がぶつかってからも両者速いペースで指し手を進めます。

対局開始から1時間ほどながら盤上では激しい駒交換の応酬が続きます。銀桂交換の駒得を果たした佐々木八段がこの銀ですぐに飛車角両取りをかけたのはいかにも好調を思わせますが実際の形勢は難解。渡辺九段も豊富な持ち駒を背景に反撃の時を待ちます。数手後、佐々木八段が飛車を打ち込んで王手した局面が終盤の分岐点となりました。

終盤の誤算とがめ佐々木八段勝利

王手に対してサッと玉を上がって対応した後手の渡辺九段ですが、局後この手を後悔することに。直後に佐々木八段のほうから馬を引き付ける手が先手で入ることを軽視したようで、代えては合駒を打っておくのが安全とされました。実戦は佐々木八段が二枚飛車と馬の3枚をきれいに連携させて寄せの好形を築くことに成功しました。

その後も難しい部分はあったものの、一度傾いた流れを取り戻すのは渡辺九段をもってしても容易ではありませんでした。終局時刻は17時21分、攻め合い一手負けを読み切った渡辺九段が投了を告げて佐々木八段の勝利が決まりました。これでスコアは佐々木八段が1勝1敗、渡辺九段が0勝2敗となっています。

  • 佐々木八段は序盤の進行について「(渡辺九段より)先に研究を外れてしまった」と明かした(写真は第30期竜王戦決勝トーナメントのもの 提供:日本将棋連盟)

    佐々木八段は序盤の進行について「(渡辺九段より)先に研究を外れてしまった」と明かした(写真は第30期竜王戦決勝トーナメントのもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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