第49期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は、挑戦者決定トーナメントの佐藤康光九段―佐々木勇気八段戦が6月27日(火)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、148手の熱戦を制した佐々木八段が次回戦進出を決めました。

相雁木の力戦形

振り駒で先手となった佐藤九段は角道を歩で止める矢倉系の出だしを採用。後手の佐々木八段が近年流行の雁木の構えを取ったのを受けてこちらも雁木に組み替えた結果、本局は相雁木の戦型に落ち着きました。両者の右銀に注目すると佐藤九段が5筋、佐々木八段が6筋に上がっているのが細かな違いです。

駒組みが頂点に達したところで後手の佐々木八段は意表の一手を披露。自玉を守る要の左銀を中央に繰り出したのがそれで、なんとしてでも歩をぶつけて先攻したい意図が読み取れます。成否は微妙ながら、この動きをきっかけに局面は徐々に佐々木八段のペースに傾き始めました。佐藤九段は手厚い▲5七銀型を頼りに受けに回る時間が続きます。

佐々木八段が激戦制す

盤面全体を使った激しい応酬ののち、先手の佐藤九段にも反撃の機会が訪れます。7筋に歩を打って銀取りをかけたのがその合図で、ここから盤上は激しい駒の取り合いに。佐藤九段が7筋に馬を作ったのに対して後手の佐々木八段が角を打って下駄を預けた局面が終盤の分岐点になりました。局後、佐々木八段はこの角打ちを悔やみました。

手番を得た佐藤九段は好調な寄せで佐々木玉を危険地帯におびき出すことに成功しますが、迫りくる秒読みの中でミスが出ます。後手の桂を外して丁寧に指そうとしたのが敗着で、後手からの歩成りが詰めろになっては速度が逆転。ここは怖くても強く攻め合いに活路を見出すのが正着で、それならば佐藤九段の一手勝ちが見込まれました。

終局時刻は20時10分、最後は難解な終盤戦を切り抜けた佐々木八段が佐藤九段の玉を寄せきって勝利。勝った佐々木八段は「(中盤で相手の手の)面倒を見すぎた気がします」と一局を振り返りました。佐々木八段は次回戦で糸谷哲郎八段―北浜健介八段戦の勝者と対戦します。

  • 佐々木八段は3度目となる佐藤康光九段との対局で初勝利を挙げた(写真は第30期竜王戦決勝トーナメントのもの 提供:日本将棋連盟)

    佐々木八段は3度目となる佐藤康光九段との対局で初勝利を挙げた(写真は第30期竜王戦決勝トーナメントのもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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