東京ビッグサイトで10月20〜22日の期間おこなわれたイベント「Femtech Tokyo(フェムテックトーキョー)」にて、予防医療普及協会理事の堀江貴文氏と、同理事で産婦人科医の三輪綾子氏によるセミナーが開催されました。

セミナーのテーマは「経済、社会を大きく変えるフェムテックとは? ~女性の健康課題の解決が日本経済を救う~」。実業家でもある堀江氏は経営者として、三輪氏は産婦人科医として、それぞれの視点から女性の健康課題について意見を述べ、参加者に知見を共有しました。

  • (左から)堀江貴文氏、三輪綾子氏

HPVワクチンの普及を目指し活動

セミナーでは女性特有の疾患における予防医療として、子宮頸がんを予防するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンがあげられました。日本産科婦人科学会の発表によると、子宮頸がんの95%以上はHPVのウイルス感染によって発症。同ウイルスは女性の50%以上が生涯で一度は感染するとされています。

主な感染経路は性交渉であるため、性交渉を経験する前にHPVワクチンを接種することが有効な予防策ですが「日本はワクチン接種率も検診受診率も、先進国のなかで飛び抜けて低い」と三輪氏は言います。

日本では2013年4月、法律に基づいて市区町村が主体となって実施する「定期接種」にHPVワクチンが加えられ、各家庭への個別通知による勧奨もおこなわれていましたが、副反応に対する懸念から積極的勧奨は中止に。しかし、世界的にHPVワクチンの有効性が認められていること、子宮頸がん患者の増加を受け、2021年11月厚生労働省は8年ぶりに積極的勧奨の再開を発表しました。

勧奨を中止していた8年の間に接種の機会を逃してしまった人は、HPVワクチンが無料で接種できる「キャッチアップ接種」が可能です。その対象となるのは2013〜2021年の間、HPVワクチン接種の対象年齢だった1997~2005年度生まれの女性(詳細は政府の専用サイトにて確認を)。現在、予防医療普及協会は、副反応や後遺症への不安から接種を控えている層への普及を目指し、ワクチンの有効性などについて啓蒙活動をおこなっているそうです。

ちなみに子宮頸がん発症者数のピークは、30歳代後半の女性。堀江氏は「女性は我慢強い方が多く、子宮頸がんや乳がんが進行してから初めて受診する方も多い」と話し、ワクチン接種だけでなく定期的な検診による早期発見の重要性も訴えました。

「儲けたい」ならフェムテックを知るべき?

堀江氏と三輪氏は『女性の「ヘルスケア」を変えれば日本の経済が変わる』という書籍を共著で出版。女性の体に起こる生理(月経)、それにともなうPMSなどの症状について経営者がきちんと理解できれば企業の収益は増加すると堀江氏は提言しています。

現在は女性の健康課題の解決に取り組む堀江氏も、以前は知識がなかったため「休みがちな女性に対して、サボっているのかと思うこともあった」と言います。

生理休暇は労働基準法で定められていますが、実際には申請せず、薬を飲んで頑張っている人も。ですが、それでも症状が抑えきれず、パフォーマンスが低下してしまうことがあるそうです。

堀江氏は「優秀な女性が実力を発揮できないのは、会社にとって大きな損失」としたうえで「女性側も言いづらいから、こちらも認知できない。話してくれたとしても正しい知識がなければケアもできない」と、自身の経験を振り返ります。

経営者が自ら率先して女性の健康課題に取り組み、フェムテックを取り入れた的確なサポート体制を構築できれば、生産性が向上し「結果的に企業が儲かる」と、堀江氏。

正しい知識が女性の社会進出を後押しする

一方で、セミナーでは女性たちの知識や考え方を変えていく必要性についても語られています。

鎮痛剤を飲めばいつもどおりに過ごせるからと言って、自分の生理は軽いと考える人も未だに少なくありません。ですが、「そもそも薬を飲む必要があるレベルで痛いのは異常な状態」だと三輪氏。ひどい生理痛には、子宮内膜症やチョコレート嚢胞、子宮頸がんといった病気が潜んでいることも。しかしながら、"生理は痛いのが当たり前"だと思い込み、病院に来るのは深刻な状態になってからと言う女性は少なくないそうです。

これらの病気は不妊の原因にもなり得ると言い、三輪氏は「自分の体と将来を守るために正しい知識を身につけ、適切な予防をおこない、定期的な検診を受けてほしい」と、呼びかけました。


女性の健康課題を解決するフェムテックは日々進化していますが、それも正しい知識がなければ活用できません。女性が活躍できる社会を実現するには、まずは女性が自分自身の体について深く理解するところから始まるのかもしれません。