パナソニックは9月28日、エアコン「エオリア LXシリーズ」の2023年モデルを発表しました。LXシリーズは、昨年の2022年モデルから換気・加湿機能が搭載されたフラッグシップモデルです。

今回の新モデルは換気機能がさらに進化し、吸気換気だけでなく排気換気も可能になりました。ラインナップは2.2~9.0kWまでの10モデル。2.2~3.6kWまでは単相100V、4.0~9.0kWまでは単相200V電源に対応します。価格はオープン、市場推定価格は280,000円前後~500,000円前後です。実機をチェックしてきました。

  • 2023年モデルのLXシリーズと、マイナビニュース・デジタルの林編集長。加湿・換気機能が搭載されていることから、室外機のサイズは一般的なエアコンより大きめ。説明のため、室外機は一部カバーを外してあります

  • 室内機のサイズは幅799×奥行き385×高さ295mm。奥行きが長く、前に張り出したデザインです

吸気換気に加えて、排気による部屋の換気も可能に

部屋の壁に取り付けたエアコン(室内機)は、屋外に設置する室外機とパイプでつながっているため、外の空気を取り込んで換気ができると思われがち。でも、ほとんどのエアコンは内気循環式です。エアコン(室内機)に室内の空気を取り込み、温度と湿度を調整して再び室内に送り出すため、エアコンを運転しても部屋の空気は換気されません。

そこでパナソニックが2022年に発売したのが「換気と加湿ができるエアコン」です。それまで、換気・加湿対応のエアコンといえばダイキンの一強でしたが、パナソニックという選択肢が増えました。

  • LXシリーズの室外機内部。中央の白い円盤状パーツは吸湿素材。この素材で外気中の水分を取り込み、室内に湿気を送ります。給水タンクなしで加湿可能

2022年モデルのLXシリーズは、外の新鮮な空気を取り込む「吸気換気」に対応していましたが、2023年モデルでは部屋の空気を外に追い出す「排気換気」も選べるようになりました。排気換気では、夏場のムシムシした部屋の空気をすばやく外に出したり、部屋の中で汚れた空気を外に出したりできます。

  • 吸気と排気の切り替えは、独立した3つのフラップを開閉することで行う「開閉弁方式」を採用。機密性が高く、安定した換気性能を確保しやすい方式とのこと

  • 換気機能を搭載したエアコンは運転音が大きくなりがちですが、新モデルは換気用の配管形状などを改良することで静音性も高くなりました。写真右が新モデル、左が旧モデルの換気用パイプ

パナソニックのエアコンといえば、除菌・除臭などができるイオン「ナノイーX」の存在が欠かせません(一部モデル。エアコンのほかにもナノイーX搭載の家電製品はあります)。エオリアシリーズは、このナノイー機能による清潔性にも力を入れています。

新しいLXシリーズは、このナノイーXと排気運転を組み合わせた「排気プラス」機能も搭載しました。たとえば、エアコン内部にカビが発生することを抑制する「内部クリーン」時には、ナノイーXを充満させて除菌・除臭するほか、排気換気でエアコン内部の湿気を直接外に逃がします。また、排気機能があることで、ニオイを含んだ空気を外に放出する「においケア」にも対応できるようになりました。

  • 「排気プラス」機能の仕組み

  • フィルターも清潔性が高いものに変更されました。2022年モデルまでは付着した菌の増殖を抑えるAg+(銀イオン)フィルターでしたが、新モデルはAg+に加えて有機性抗ウイルス加工したフィルターになりました

エアコンの基本である暖房と冷房機能もより快適に

基本となる冷暖房の快適性もアップしています。石油ファンヒーターなどと比較して、エアコンは十分に温かい風が出るまでの立ち上がり時間の長さがデメリットといわれてきました。

そこでLXシリーズは従来モデルから、すぐに部屋を暖められる「すぐでる暖房(おはようチャージ)」機能を搭載しています。毎日の運転スタート時間を学習し、エアコン運転開始前から自動的に余熱運転をする機能です。余熱をすることで、非搭載モデルと比べて3割ほどすばやく温かな風が立ち上がります。

  • 従来の「すぐでる暖房(おはようチャージ)」は、「朝のみ対応」「1パターンのみ学習」という2つが課題とされていました

ただし旧モデルの「すぐでる暖房(おはようチャージ)」は、朝にしか利用できませんでした。学習できるのは1パターンのみで、平日と休日で起床時間が異なる生活リズムには対応していません。

2023年モデルのLXシリーズは、新しい「すぐでる暖房(AIチャージ)」へと進化。朝と昼(あるいは夜)という2つの時間を学習できます。さらに、曜日別のデータを区別して記憶するようにもなりました。これなら、使う時間が長くなるほど賢くなって、平日の朝も土日の朝も起きたときから快適に過ごせそうです。

  • 新しい「すぐでる暖房(AIチャージ)」では、「時間帯別×曜日別」で自動的に「すぐでる暖房」を有効に使えます

一方、冷房は通常の冷房運転のほか、「しっとり冷房」ができるように。一般的に冷房運転をすると空気が除湿されて湿度が下がりますが、しっとり運転は湿度をある程度保ったまま部屋の空気を冷やします。

湿度があると乾燥しにくくなるほか、夏は冷房による手足の冷えを抑える効果も。これは冷房が苦手という人にとってもうれしい機能ではないでしょうか。さらに、除湿を控えることで通常冷房より15%ほど省エネにもなるということです。

  • 「しっとり冷房」の実験に参加したパナソニックの担当者によると、足の冷え具合の違いを思いのほか実感したとのこと。冷房運転から120分後、足先の表面温度は「しっとり冷房」の有無で2.2℃も違います

このほか、前モデルと比べて加湿性能がアップしたほか、温度低下を抑えて除湿量をアップさせる新・パーシャル制御を搭載するなど、さまざまな機能がアップグレードしています。

個人的に気に入ったのはIoT機能の進化。LXシリーズはスマートフォンからの操作が可能ですが、これまでは操作のたびに操作内容をエアコンに送信してよいか、確認する画面が表示されました。これが面倒というユーザーの声も多かったんだとか。新アプリではこの確認ステップなしで、目的の操作をエアコンに直接送信できるようになっています。

【動画】スマホアプリでエアコンの設定を変えると、「送信しますか?」といった確認なしですぐにエアコンへ送信、反映されます
(音声が流れます。ご注意ください)

そしてもうひとつ、パナソニックのエアコンには「エネチャージ」という独自の機能があります。エアコンに内蔵されているコンプレッサーの排熱を蓄え、必要なときに利用するというもの。

一般的なエアコンは、暖房時の室外機霜取り運転で定期的に暖房が止まりますが、エネチャージ機能があると霜取り中も暖房運転が続きます。また、冷房時もエネチャージで蓄えた熱を利用することで、省エネ運転が可能です。もちろん新しいLXシリーズにも、エネチャージ機能が引き続き搭載されています。

このエネチャージをはじめ、除菌と除臭に花粉などアレルゲン抑制が可能なナノイーX、換気・加湿など、LXシリーズはまさに多機能モデル。とくに、冬の季節は水の補充なしで加湿できる機能と、部屋を冷やさずに換気できる機能、そしてエネチャージは快適性を高めてくれそうです。