FitEar(須山歯研)の新しいカスタムイヤーモニター「FitEar H1」が「秋のヘッドフォン祭2022」(9月18日開催)で発表された。オンキヨー製のマグネシウム振動板バランスド・アーマチュア(BA)型ドライバーを採用しているのが大きな特徴。一般販売時の店頭価格は14万3,000円前後を見込んでいる。

  • FitEar H1

  • FitEar H1製品発表会が「秋のヘッドフォン祭2022」において開催された

当日はFitEarブースで実機を試聴でき、会場限定で特別価格(13万2,000円前後)にてブラックカラーのカスタムモデル30セットの先行販売も行われた。カスタム版には音響特性と軽快な装用性を考慮し、ミドルレッグシェルを採用している。ユニバーサルモデルはコンパクトな新設計シェルに、AZLA SE1000イヤーピースを組み合わせたものとなる予定で、2023年春の発売を目指す。

  • FitEar H1の概要

なお、須山歯研とオンキヨーはブランドライセンス契約を締結したこともあわせて告知。須山歯研に対し、オンキヨーが自社製のマグネシウム振動板バランスドアーマチュア型ドライバ(Mg-BAドライバー)を供給するとともに、Mg-BAドライバーを使用したFitEarブランドのカスタムイヤホンに“Powered by Onkyo”をライセンスするかたちとなる。

  • FitEar H1の右イヤホンの耳に当たる場所に、“Powered by Onkyo”の刻印がある

H1の付属ケーブルは3.5mmステレオミニプラグの「005ブラック」。ペリカン1010セミハードケースやケーブルクリップ、クリーニングブラシなどが付属する。

FitEar H1にも採用された“Mg-BAドライバー”とはなにか

FitEar H1のユニット構成は、フルレンジのMg-BAドライバーに高周波数帯域を担当するツイーター(BAドライバー)を組み合わせた、“1+1構成”となっている。

これは従来の「FitEar Air」(2015年発売)以来、FitEarのハイブリッド製品で取り組んできた構成で、フルレンジユニット側には手を加えずに、高周波数帯域を担当するユニットを追加することで高域側を補強し、ドライバーが持つ魅力を最大限に引き出すことをねらっている。

FitEar H1でも、ワイドレンジかつ“美しい響き”を持つMg-BAドライバーの美点を活かすことを最優先したため、上述の構成を採用したそうだ。

  • FitEar H1の開発テーマ

Mg-BAドライバーには、45μmという“世界最薄”のマグネシウム振動板を搭載している。振動系を最大限軽くすることで高域再生を伸長させ、さらに特殊な表面処理技術によって高吸振性を保ちつつ、従来処理品と比べて剛性も約3〜4倍向上。音源再生を阻害する雑音成分を抑えており、構造的にBAドライバーが苦手とする低域についても、大入力時も音崩れなく“芯のある低音”を実現するという。

  • Mg-BAドライバーの特徴

オンキヨーは2019年にMg-BAドライバーを発表し、2020年にはカスタムイヤホン「シリーズ M」として製品化しているが、須山歯研でもこのユニットに着目して調達の可能性を追究。2021年にはオンキヨーから須山歯研へのユニット供給のメドがたち、H1の製品開発がスタートした。

なお、H1はシルバーシェルデザインのユニバーサルイヤホン「FitEar Silver」(2022年7月発売)とユニット構成が似ている。

  • FitEar Silver(2022年7月発売)

両機種の開発には須山歯研の若手スタッフである堀田息吹氏が携わっているが、開発の過程で発表・発売のタイミングが逆転し、H1の商品化に先がけてシルバーシェル採用のFitEar Silverが発売された、という経緯があるそうだ。

  • FitEar Silver(左)とFitEar H1(右)

FitEarでは、2001年のスタート時から同社代表を務める須山慶太氏が製品開発を行ってきた。近年は堀田氏をはじめ、社内若手スタッフを中心とした新しい開発体制に移行。H1という製品名は、“堀田氏の1号機”という開発コードネームに由来するそうだ。ただし、須山氏は「完全に引退するわけではない。製品の企画や評価はまだまだやっていく」ともコメントしていた。

  • FitEar SilverやFitEar H1の開発に携わった堀田息吹氏