空気が乾燥し、湿度が気になる季節になってきました。そろそろ加湿器の購入や買い替えを検討されている皆さんも多いのではないでしょうか。ここ数年は感染対策のほか、エアコンによる乾燥を防ぐために、ほぼ一年を通して加湿器を動かす人が増えています。

加湿器は水を入れて使う家電なので、日常的にこまめなお手入れが必要。簡単なお手入れで衛生的に使えて、パワフルな加湿量で潤う加湿器があったらうれしいですよね。

我が家も乾燥肌の子どもがおり、いろいろ試した結果、昨年(2020年)にダイニチ工業の加湿器「HD-LX1220」を購入しました。しっかり潤い、お手入れも簡単で満足しています。もっと早く買っておけばよかった……と後悔したほどです。

ダイニチ工業からは2021年、ハイエンドとほぼ同等の機能を備えたミドルクラスの「HD-RXT」シリーズが発売されましたので、我が家にある昨年モデルのHD-LXシリーズと比較しながらHD-RXT921をレビューします。

  • ミドルクラスで高機能なHD-RXT921、ついに発売!(本体カラーはショコラブラウンとサンドホワイトの2色、写真はショコラブラウン)

  • 2020年に自腹で買ったハイエンドモデルのHD-LX1220(写真左)

RXTシリーズのラインナップは、最大加湿量が570mL/hの「HD-RXT521」、800mL/hの「HD-RXT721」、960mL/hの「HD-RXT921」の3モデル。価格はオープンですが、2021年10月下旬の実勢価格はHD-RXT521が21,000円前後、HD-RXT721が24,000円前後、HD-RXT921が28,000円前後となっています。

ハイブリッド式で効率よく湿度を上げる

ダイニチ工業の加湿器はハイブリッド式です。水を含んだ抗菌気化フィルターに風を当てて加湿する気化式と、温風を当てて加湿する温風気化式を組み合わせています。湿度が低いときは温風気化式ですばやく加湿し、設定湿度に近付くと温風を使わない気化式に切り替え、加湿量を調整します。

温風気化式でも、ヒーターで暖められた風は抗菌気化フィルターで水が気化するときに熱が奪われるので、吹き出し口からの風が温かいわけではありません。また、スチーム式や超音波式のような湯気やミストは見えません。

  • 吹出口、操作・表示部は上面に。持ち運び用の取っ手も付いています

一般的な加湿器には、超音波式や気化式、スチーム式などいろいろな方式がありますが、気化式・温風気化式は効率よく湿度を上げることができ、衛生的で、スチーム式と比較して電気代が低いところも魅力です。

加湿器は水を使うので、一番気になるのは衛生面。これまで数々の加湿器を試してきましたが、なかにはお手入れで挫折するものもありました。

HD-RXT921は、タンクキャップに「Ag+抗菌アタッチメントEX」を搭載し、水中に溶け出した抗菌成分がタンク内で雑菌の繁殖を抑制します。抗菌気化フィルターには抗菌・防カビ加工が施されており、トレイも抗菌仕様です。さらに、エアフィルターも抗菌・防カビ・抗アレル仕様。水タンクも吸水口が広いので、お手入れしやすいのです。

  • 水タンクは上に引き出します

  • キャップに「Ag+抗菌アタッチメントEX」を搭載

  • トレイを引き出したところ。青い部品が抗菌気化フィルター

お手入れを断然ラクにする使い捨てトレイカバー

そして、なんといっても便利なのがトレイに使い捨てカバーを採用していること。これまではハイエンドシリーズのみでしたが、ミドルクラスにもついに搭載されました。面倒な水受けトレイの掃除が不要になって、ワンシーズン(約6カ月)使ったら別売の使い捨てトレイカバーに交換すればいいのです(3枚で1,650円)。

Ag+抗菌アタッチメントEXも別売の消耗品なので、ワンシーズンごとにランニングコストがかかりますが、常に清潔な状態を保てる点は高い評価を得ています。

  • 抗菌気化フィルターを外した抗菌フラットトレイ

  • 抗菌フラットトレイにカンタン取替えトレイを装着

音が静かで、寝室にもぴったりの容量

RXTシリーズの適用乗数は部屋のサイズに合わせて選べます。今回試したのは加湿量がもっとも大きいHD-RXT921で、適用床面積は木造和室が24平方メートル(14.5畳)、プレハブ洋室が40平方メートル(24畳)です。本体サイズは高さ375mm×幅375mm×奥行210mm、重さは約5.1kg。ミドルクラスとはいっても水タンクの容量が6.3Lもあるので、連続加湿として標準で約7.3時間も使えます。

ショックだったのは、ハイエンドのLXシリーズに搭載されている水タンクの「タンクWとって」がなかったこと(我が家では2020年モデルのHD-LX1220を使っています)。水タンクの上下に取っ手があると、給水して重くなった水タンクをひっくり返すのもラクですし、両手でスムーズに持ち運べます。

「タンクWとって」はダイニチ工業の石油ストーブ(の灯油タンク)にもある便利な機能で、とても使いやすくて気に入っていたのに……。HD-RXT921も満水の水タンクは6kg以上になるため、「タンクWとって」がないことはとても残念でした。

  • 左がHD-LX1220の水タンク、右がHD-RXT921の水タンク。容量はほぼ変わらないのに、HD-RXT921にはキャップ部分の取っ手が省略されています

本体の表示部には。現在の部屋の湿度が1%刻みで表示されます。運転モードは、標準、静音、エコ、のど・肌加湿、ターボ、おやすみ快適という6通り。湿度の設定は、50%、60%、70%から選べます。

  • 本体の湿度表示。表示を消すこともできます

HD-RXT921は本体の真上から湿気を含んだ風を吹き出すので、風が肌に当たることがなく、運転中も寒いと感じることはありません。乾燥しているときはファンが高速回転して湿度を上げていきます。

運転音は少ししますが、リビングなどでは生活音にまぎれて気になりませんでした。これまでさまざまな加湿器を使ってきましたが、HD-RXT921の運転音はとても静かで、そこも気に入っています。8畳ほどの部屋で運転してみたところ、10分で15%も湿度が上がりました。

  • 水分を含んだ風を出す温風気化式ですが、風が温かいわけではありません

木造住宅の我が家は、冬になるとカラッカラ。湿度が上がらず、いろいろな方式の加湿器を試してきましたが、温風気化式は効率がよく、一番早く湿度が上がります。ダイニチ工業の加湿器シリーズは、ファンが高速で回転して上向きに風を出すので、そばにいても寒く感じないところも気に入っています。

寝室にもぴったり。運転音を抑えているので、寝るときに動かしたままでも気になりません。「おやすみ快適ボタン」を推すと、部屋の湿度に関係なく風量を最小に抑えて約1時間加湿。あまりにも静かで、本当に運転しているのか心配になって確認したほどです。そのあとは、選んだ設定湿度になるように加湿します。

音の感じ方に個人差はありますが、寝るときは音が気になるという人にはぜひ使っていただきたい機能です。RXTシリーズは3種類あり、一番小さいHD-RXT521は適用床面積が8.5畳(木造和室)なので、寝室にはそちらもおすすめです。

  • タイマー機能もあるので安心

雑菌が繁殖しにくく、お手入れも簡単

HD-RXT921はトレイなどに抗菌加工を施しているせいか、ぬめりなどは気になりません。加湿器によってはすぐにぬめぬめと雑菌が繁殖するものもあります。その点でも安心して使えました。なお、本体のお手入れサインが点滅したら、トレイを出してさっと洗い、蛇腹状の青い抗菌気化フィルターも洗浄します。

抗菌気化フィルターは、お手入れサインが点滅したときには既に変色している場合があります。4日ほど日中まわし続けた抗菌気化フィルターを確認したところ、上のほうが少し変色していました。この状態であれば、水道水をシャワーにして当てるだけですぐに落ちます。

  • 3~4日間、日中稼働していたら抗菌気化フィルターがうっすら変色してきました

  • 水洗いするだけでこんなにキレイになりました

  • こんな風にシャワーを当てるだけでいいので簡単

ただし、長期間放置して汚れが染みついてしまうと取れなくなります(既に経験済み……)。取扱説明書には「1カ月に1度、クエン酸を溶かしたぬるま湯に30分~2時間ほど浸けておく」――と書かれていますが、汚れが広がってしまったあとではなかなか落ちません。変色が気になるようなら、お手入れサインが点滅する前に、こまめに洗ったほうがよさそうです。

取扱説明書を読むと「抗菌気化フィルターは5シーズンに1回は新品と交換する」とあります。我が家のHD-LX1220は、2020年から2021年にかけて使ったものが完全に変色してしまったので、新しい抗菌気化フィルターに変えました。こまめなお手入れができていれば心配なさそうですが、念のため毎年交換しようと思っています。

HD-RXT921の消耗品は、Ag+抗菌アタッチメントEX(1,320円)、カンタン取替えトレイカバー(550円)です。これらはシーズンごとに購入が必要で、毎年1,870円かかります。抗菌気化フィルター(1,870円)は毎年交換する必要はありませんが、数年に一度は合計で3,740円となります。

少々高いような気はするものの、そのぶんお手入れはとてもラク。汚れやすい内部を清潔な状態に保てるので、納得できる出費です。我が家のHD-LX1220も、消耗品を一通り購入しました。掃除がこれだけシンプルになるのであれば、妥当な価格ではないでしょうか。

  • トレイの部品も外して洗えます。とにかくお手入れしやすい!

水を扱う家電なので、不衛生な状態で使用すると健康被害も考えられます。パワフル加湿、そして音が静かで、清潔に湿度を保ちたいのであれば、RXTシリーズやLXシリーズはまさにぴったり。特に小さなお子さんやシニア家庭で安全な加湿器をお探しなら、選択肢のひとつに入れてみてはいかがでしょうか。