在宅時間の増加とともに、販売台数が大きく伸びている家電のひとつがホームベーカリー。2020年は前年比で160%以上も出荷台数が増えたそうです。ホームベーカリーで国内トップシェアのパナソニックが、9月1日に「ホームベーカリー ビストロ(SD-MDX4)」を発売しました。
ビストロシリーズといえば、パナソニック調理家電のプレミアムシリーズ。SD-MDX4は、ホームベーカリーとしては初のビストロブランドです。気になる実力をさっそく試してみました。
高級生食パンが自宅で気軽に作れるように
もともとビストロシリーズは、パナソニックの高機能スチームオーブンレンジのブランドです。2021年2月には、初めてビストロブランドを冠した「オーブントースター ビストロ(NT-D700)」を発売。デザイン性の高さと焼き上がりの美味しさから、一時は店頭で品薄になるくらいの人気家電となりました。今回試用したホームベーカリーのSD-MDX4は、スチームオーブンレンジ、トースターに続く3ジャンル目のビストロシリーズです。
新モデルのSD-MDX4ですが、従来のフラッグシップモデル「SD-MDX102」と大きな違いはありません。デザインや機能もほぼ同じ。従来モデルとの違いは「リッチ パン・ド・ミ」コースと「低糖質パン」コースを搭載した点です。
従来モデルのSD-MDX102には、高級生食パンで人気の「乃が美」が監修した「おうち乃が美」と呼ばれる「生食パン」のレシピがあります。ただ、このレシピは強力粉に「イーグル」、バターは「よつ葉乳業の無塩バター」、塩は「ぬちまーす」、ドライイーストは「金サフ」、生クリームは乳脂肪分35%が必要など、材料をそろえるのが少々面倒なのがネック。
そこで新モデルのSD-MDX4では、新たに「リッチ・パン・ド・ミ」コースを搭載。従来の「おうち乃が美」は標準的な「パン・ド・ミ」コースを利用していましたが、リッチ・パン・ド・ミコースは「ねかし」工程を増やしたり、発酵時間を最適化することで、街のスーパーで手に入る材料だけで美味しい生食パンが作れるようになりました。強力粉や塩、イーストなどはブランド指定はなく、バターも一般的な加塩バターでOK。生クリームも乳脂肪分の指定はありません。また、コクを出すためか、材料に加糖練乳(コンデンスミルク)が加えられています。
気になるリッチ・パン・ド・ミの味は、材料に生クリームやコンデンスミルクが入っていることもあり、乳製品のコクをしっかり感じる濃厚な味。なのに、クラム(パンの中身の柔らかい部分)の食感がシルクのようにしっとり滑らかなうえ、フワフワと軽くクドさを感じさせません。
生食パンとは「焼かずにそのまま食べられる口溶けの良いパン」のことだそうですが、リッチ・パン・ド・ミは一般的な食パンと比べると、まさに「とろけるような」口あたり。個人的には、味も食感も有名店の生食パンに負けていない印象です。
パン・ド・ミも普通の「食パン」より柔らかいのですが、リッチ パン・ド・ミはさらに柔らか。焼き上がってすぐの状態だと、軽く手に持つだけで指の跡が付くのでカットにコツがいります。そのぶん食感が軽く、クラムは弾力があるのにフワフワと口溶けが良いのが特徴です。通常のパン・ド・ミより優しい甘みもあり、バターを塗らなくてもパクパク食べられました。
リッチ パン・ド・ミは生クリームやコンデンスミルクを使うので、一般的な食パンよりも材料費は高くつきます(とくに生クリームは高い!)。とはいえ、高級生食パンは一斤で1,000円近くすることを考えれば、コスパは抜群。なにより自宅で手軽に美味しい生食パンが食べられるのは大きな魅力。焼きたての美味しさを味わえるのも、自家製だけの楽しみですね。
この美味しさは初めてかも! 異次元の食感だった低糖質パン
SD-MDX4のもうひとつの新メニューが「低糖質パン」です。一般的なホームベーカリーの低糖質パンは「ふすま(小麦ブラン)」、「おからパウダー」、「大豆粉」などを利用します。これらの材料で作ったパンはパサパサした食感になりやすく、独特の臭いもあって「美味しくないから続けられない」という声もよく聞きます。
一方、SD-MDX4の低糖質パンメニューは、日清フーズが監修した「低糖質パンミックス SD-LCM10」という専用パンミックスを使います。このパンミックス、低糖質パンなのに主原料が小麦粉なのが特徴。パナソニックによると、小麦粉から糖質となる成分を抜くことで、「美味しさ」と「低糖質」を両立しているとのこと。非ブラン系の材料ながら、なんと糖質は約60%カットできるそう。
実際に低糖質パンミックスでパンを焼いてみると、驚くのが水分量の多さ。SD-MDX4では通常、1斤の食パンに250gの強力粉を使いますが、低糖質パンミックスは1パック150gしかありません。これに卵とバター、水を加えて調理すると、250gの強力粉を使ったレシピと同じくらいの大きさで食パンが焼き上がります。
できあがりを食べてみると、粉の全体量が少ないからか、とにかく軽い食感がきわ立ちます。クラムは弾力もあるのにしっとり。口に入れるとほどけるように溶ける舌触り。とにかく今まで食べたことがないような空気を含んだ軽さです。
パンの中身の柔らかさが好きな人なら、ダイエット目的ではなく、この食感と味のために「低糖質パンミックス SD-LCM10」をリピートしたくなるかもしれません。ただし水分量が多いため、時間がたつとパンがしぼみやすい点は注意が必要です。
低糖質パンミックス SD-LCM10の価格は5回(5斤)分(ドライイースト付き)で2,484円、一斤約500円です。高価な製品も多い低糖質パンですが、続けやすい価格もうれしいところ。
パナソニックのホームベーカリーが人気の理由
ここまで新機能で焼いたパンを紹介してきましたが、パナソニックのホームベーカリーはなぜ人気なのでしょうか? 実は我が家も数年前にパナソニックのホームベーカリーを購入したのですが、選んだ一番の理由は「パン・ド・ミ」メニューの存在でした。
パナソニックによると、パン・ド・ミとはフランス語で「中身のパン」。フランスパンがクラスト(皮)を楽しむ食べ物なのに対し、柔らかなクラムを楽しむためのパンなのです。パン・ド・ミは通常の食パンより皮がパリッと薄く、中身がもっちりしつつも、ふんわりソフトなのが特徴。もちろん、厚めの皮や密度の高いクラムのどっしりとした食パンが好きな人向けに、SD-MDX4には通常の「食パン」コースも用意されています。
SD-MDX4のパン・ド・ミは、一斤に使うするイースト量が1.4g。普通の食パンの約半分ということもあって、焼き上がりのイースト臭さが少ないのも個人的に気に入っています。そのぶん発酵に時間がかるので、調理時間は約5時間と長めです(通常の食パンモードは約4時間)。
練りや発酵といった生地作りも優秀。パンケース内部には突起を配置しており、この突起に生地をひっかけることで生地の「叩く」「伸ばす」を実現しています。これにより、パンにあわせた練りが可能に。また、発酵は室内と庫内にある2つのセンサーで温度を管理し、加えてイースト自動投入機能によって室内温度など環境に応じて発酵をコントロールしています。
高機能ホームベーカリーのSD-MDX4は、軽い食感の食パンが好きならパン・ド・ミ、どっしりした食感なら食パンコースと、豊富なメニューから自分好みのパンを選べるのが魅力です。SD-MDX4は新コース「リッチ パン・ド・ミ」と「低糖質パン」の追加で、焼けるパンの幅がさらに広がりました。軽い食感が好きな筆者は新メニューの低糖質パンがかなりお気に入り。
フラッグシップモデルだけにそのほかの機能も豊富です。従来モデルから引き続き、天然酵母パンを焼くコースを備えるほか、おもち、うどん、ケーキ、発酵機能を使った甘酒など、パン以外にも活躍します。在宅時間が増えて「おうちごはん」を充実させたい人にピッタリの製品ではないでしょうか。