NHKの大河ドラマ『麒麟がくる』、連続テレビ小説『エール』への出演も話題となり、俳優として活躍の幅を広げている板垣瑞生(20)。ここ1年、大きな心境の変化があったという。「ずっと役のままでいてよくなった。許された感じがしています」。演技のことだけに集中できる今の環境に感謝しているという板垣に話を聞いた。

板垣瑞生

芝居に集中するようになって1年以上が経ち、「役者の仕事は面白いです」と俳優業のやりがいを改めて感じている。「とてもファンタジックなことをしています。メイクをして現場に入り、撮影ではカメラを向けられ、工程はファンタジーなのに、やっている芝居はリアルを目指すという。そこに役者個人の思いが出てくると、役柄が面白いものになる」。

それは「役柄の感情と自分自身が思っていることがリンクした時」のことだという。「その瞬間、強いものが届くような気がする。それが素敵だなと思います。しかも狙いでそうなったのではなく、共演者の皆さんの優しさも影響してくる」という。「たとえば、それに応えたいというお返しの精神じゃないけれど、役者しかわからないような無言のパスがあった時に、そこに役柄と重なるように自分の気持ちが乗ることがあるんです。それは役者をやっていてよかったなと思う瞬間のひとつです」と醍醐味を語る。

俳優業の醍醐味はほかにもある。大舞台だった朝ドラ『エール』や大河ドラマ『麒麟がくる』という国民的ドラマに続けて出演したことで、「『観たよ』と言われると、すごくうれしいですね」という反響を感じることに加え、撮影現場で先輩俳優の仕事を目の当たりにできる時間も、板垣にとって大切な時間になった。

「『麒麟がくる』の現場では吉田鋼太郎さんのお芝居を観る時間があり、ずっと観ていました。圧巻ですよね。お金払ってないのに観ちゃっていいのかなって(笑)」。実は根は芝居オタク。いい芝居をいつも見ていたいという。「それもありますが、人見知りなので基本的には撮影現場に早く入って、ほかの方がどういう感じか見て準備しないと芝居ができないんです。純粋に芝居を見ていることも大好きですけど(笑)」

大河の現場では、俳優としての学びも多かった。「その役で“いる”ことを学びました」と述懐する。「もっと究極があるとは思います。僕もまだ全然わかっていないので、ずっと探していることではありますが、結局は楽しみながらやろうと。そうすれば、みんなもついてきてくれると思うので」。

そして、今までとは異なるアプローチでいける役者の仕事の本質を知ることになった。「吉田鋼太郎さんなど大人の方たちを見ていると、誰よりもリラックスしているんです。普通の会話をするのですが、それでいてどこか役のことも忘れてはいない。何かを握ったまま話している。そして、それを本番で開放する。そういう学びがありました。気が張っているだけでも仕方がない。リラックスしながら緊張する、そのためには誰よりも楽しまないといけないと思いました」。