2020年3月に放送スタートした『魔進戦隊キラメイジャー』が、2021年2月28日の放送で最終回を迎えた。

  • 井上テテ……脚本家として、映画『イニシエーション・ラブ』(2015年)、テレビ東京系ドラマ『マッサージ探偵ジョー』、東映特撮作品では『宇宙戦隊キュウレンジャー』『魔進戦隊キラメイジャー』に参加。「天装戦隊ゴセイジャーショー」以降、約10年にわたってシアターGロッソで行われているヒーローショーで脚本・演出を務めている。撮影:大塚素久(SYASYA)

本作では、誰しもが心の奥に宿している"輝き"を原動力に、人々から希望や輝きを奪おうとするヨドン軍と戦うヒーローたちの活躍が描かれてきた。魅力的なキャラクターが織り成すドラマが視聴者を引き付けながらも、そのタッチはどこか軽やか。いつもより少し明るめの「スーパー戦隊」に、沈みがちだった2020年を支えられたファンも少なくないだろう。

視聴率や映画の観客動員数、SNSでのトレンド入りなど、作品の人気を測る指標はいくつかある。一方で、数字で表すことができない、肌身に感じるファンの熱量が作品の真価をより正確に伝えている場合もある。シアターGロッソで行われている「キラメイジャーショー」の最新弾を見て、そう思った。

機会を設けていただき、この『魔進戦隊キラメイジャーショー』シリーズ第4弾「Gロッソ最終決戦 輝け!キラメキの光!」で脚本・演出を務める井上テテ氏、アクション監督・渡辺智隆氏の話を聞くことができた。本稿では、井上テテ氏のインタビューをお届けする。

※記事ではショーの内容に触れている箇所があります。ご注意ください。

井上氏からは、今回のショーだけではなく、『キラメイジャー』本編制作の裏側も聞くことができた。そして、話を聞く中で最も印象に残ったのは、ヒーローショーをやる意味についての井上氏の言葉「"ヒーローはいる"ことを伝えるために全精力を注ぐ」ということ。ヒーローショーというと、「シアターGロッソで僕と握手」(※現在は新型コロナウイルス感染症防止対策のため中止)のイメージが強い筆者だったが、ショーに込められた深い思いと意味をインタビューを通して知ることができた。

――『キラメイジャー』でぜひお聞きしたかったのが、毎回のユニークなタイトルです。井上さん担当回でもエピソード38「叔父の月を見ている」など、映画作品を彷彿とさせる遊び心を感じさせるタイトルは脚本家のみなさんからの発案だったのでしょうか。

あれは、塚田英明さんをはじめとしたプロデューサーの方たちが面白がってつけていた感じですね。「Gロッソ最終決戦 輝け!キラメキの光!」も過去の映画のタイトルを文字っていたりします。

――井上さんが担当されたエピソード11「時がクルリと」は、1回目の緊急事態宣言によるドラマ中断明けの放送でした。

撮影の途中で中断してしまったエピソードですね。リセットボタン邪面に時間を何度も戻されて同じ場所のシーンが続くので、放映後に視聴者の方から「これはコロナ対策じゃないのか」という声も見られました。でもこれはまったく関係なくて、本当にたまたまなんです。

――脚本を手掛ける上で、『キラメイジャー』ならではの大変さはありましたか?

『キラメイジャー』は、普通の熱血戦隊ではないんです。そもそも、熱田充瑠/キラメイレッド(演:小宮璃央)以外はそれぞれの場所でトップレベルの人たち。それに充瑠くんは人としては平凡かもしれないけど、卓越したヒラメキと輝きをもっている。なので、ピンチになりづらい方々なんですよ。

劇中でもそのあたりはかなり工夫されていて、常にプロデューサーの塚田さんや荒川稔久さんをはじめとした脚本家の方々が注意を払っていたところだと思います。話のうねりは作りながらも、いつも通りのピンチにはならないように。ストーリーの中での落ち込み方が、いつもの戦隊とは違っているんです。

「時がクルリと」でも、最初はもっと普通に射水為朝/キラメイイエロー(演:木原瑠生)がピンチに陥る流れにしていました。というもの、放送前のまだ台本しかない状態だったので、どんな人たちなのかまだよくわかっていなかったんです。でも、為朝はそんなことでピンチになるヤツじゃないんですよね。そうしたズレは、最初のプロットの段階から塚田さんに軌道修正してもらうことができたので、本編はかなり塚田さんに頼り切っていた部分があります。そうして、為朝は強いが故の悩みで、それによってライバルにも負荷をかけてしまうという、ちょっといつもとは違う落ち込み方をする流れになりました。

一方で、ヒーローショーを作るフォーマットでもありますが、一度ピンチになって立ち上がるという流れはどうしてもやりたい。『キラメイジャー』の場合は、このピンチがキャラとぶれていないのか、整合性が取れているのかを注意しなければならないというところに難しさがあったかもしれません。

――「ピンチらしいピンチがない」というのは、確かに思い返してみるとそうですね。

ほかにも、けっこう例年通りでないところがあるんです。例えば、キラメイジャーはなかなか6人そろって変身して名乗って戦うということがありませんでした。それは、塚田さんがストーリーをかなり重視していたということでもあるんですけど、いくつかの話を並行して進ませることが多かったからなんです。そうすると、やっぱり6人そろわないんですよね。そういうときはだいたいクリスタリア宝路/キラメイシルバー(演:庄司浩平)がどこかに行かされちゃう(笑)。そういう面では王道の戦隊ではないけれど、でもヒーローとしては王道という感じがして、ちょっと不思議な戦隊ですよね。