ガソリンエンジンもあり? 新型フィットの走りはどうか

原動機はガソリンエンジンとハイブリッドの2種類から選べる。このうちハイブリッドは、前型フィットでリコールの対象となった1モーターではなく、2モーター方式の「e:HEV」(イー エイチイーブイ)を採用する。基本構想は、上級車種の「アコード」などで採用されてきた方式と同じだ。

  • ホンダの新型「フィット」

    新型「フィット」の燃費(WLTCモード)は、「ベーシック」のガソリンエンジン車で20.4km/L、同ハイブリッド車で29.4km/L(写真は「リュクス」のハイブリッド車)

2つのモーターを採用したことにより、走りの基本はモーター駆動となる。エンジンは基本的には発電に専念するが、高速道路では走行の動力としての役割も果たす。

モーターは、電気自動車(EV)などで紹介されるように動き出しの力が大きいため、軽くアクセルペダルを踏むだけで滑らかに発進できる。このとき、駆動用のバッテリーに十分な電力が蓄えられていれば、エンジンを始動させず、EVのようにモーターだけでしばらく走れるので、とても静かだ。充電残量が約3割程度に減ってくるとエンジンが始動し、充電をはじめる。それでも、アクセル操作に応答するのはモーターだ。かなり強い加速を求めると、そこでエンジンも加勢する。

高速道路に入っても、バッテリーの電力が十分あればモーター走行を続けることが可能だ。やがてエンジンが始動するが、エンジン走行と充電のための発電が並行して行われ、再びバッテリーの充電量が増えるとモーター走行に切り替わる。

ハイブリッド車(HV)のほうは、モーターやバッテリーなどの部品が増える分、車両重量が増えるので、全体的には落ち着きのある走行感覚だった。

対してガソリンエンジン車は、90キロほど車両重量が軽くなるので、走りは軽快だ。搭載されるエンジン排気量はHVより小さいにもかかわらず、その元気な走りに気分も盛り上がる。運転することを楽しく思わせ、新型フィットの素性のよさを体感することができた。2輪駆動のFF車であれば、ガソリンエンジン車でも燃費は20km/L(WLTCモード)近くの数値であり、車両価格はハイブリッド車に比べ30~40万円ほど安く手に入れられるので、身近に新型フィットの魅力を味わえるはずだ。

  • ホンダの新型「フィット」

    車重の軽さによる元気な走りが楽しめるガソリンエンジン車もオススメできる

先進技術の出来栄えも、印象深かった。「ホンダセンシング」と呼ばれる運転支援機能は、「違和感があると使われないので、違和感を無くすことに努力した」と開発担当者が語るように、ACC(車間距離制御装置)もLKA(車線維持装置)も作動が滑らかかつ的確で、高速道路での走行をより快適にしてくれる。

ACCの加速でやや出遅れる場面もあったが、LKAの車線維持機能はかなり的確だ。「ハンズオフ」と呼ばれるハンドルから手を離した運転のための機能ではないが、車線をはみ出さないようにする補助機能は、確実性が高く、例えば横風の強い日に高速道路を走行する際などには安心をもたらすだろう。

今回は試すことができなかったが、新型フィットではオートハイビームが標準装備となっている。夜間やトンネル内で日常的にハイビームを利用できるので、暗い道を運転する際の不安を和らげてくれるはずだ。

そのほか、前後への誤発進抑制機能や歩行者事故軽減ステアリングなどを含め、ホンダセンシングに関わる11の機能がグレードを問わず全車に標準装備されているところも、ホンダの良心といえるのではないだろうか。

  • ホンダの新型「フィット」

    新型「フィット」は全てのタイプでホンダセンシングが標準装備となっている

全体的なクルマとしての上質さが高まって、コンパクトカーでありながら実用一点張りといった安っぽさがない。上級の3ナンバー車から5ナンバーのフィットに乗り換えても、乗り味が劣化したような印象は抱かないはずだ。

新型フィットは見る、乗り込む、運転するというそれぞれの場面で驚きの連続だった。販売店を訪ねてみたいと思わせる、喜びに満ちた新車だ。

  • ホンダの新型「フィット」
  • ホンダの新型「フィット」
  • ホンダの新型「フィット」