ドイツはベルリンで開催された家電見本市「IFA 2019」には、世界の家電メーカーが多く出展。その中から、調理家電やキッチン家電のトレンド、注目の製品を見ていきましょう。

全自動調理ができる電気鍋は世界のトレンドに

近年、日本でも人気を集めているのが、具材と調味料を入れるだけで、全自動でほったらかし調理ができる電気調理鍋です。「全自動で料理を作れる調理家電」というトレンドは欧州も同じ。多くのメーカーブースに、電気調理鍋が並んでいました。来場者が押し寄せていたのは、独・ボッシュのブースです。

ボッシュが新たに発表した「Bosch Cookit」は、一言でいえばフードプロセッサー兼電気調理鍋。ポット内に、カッターやブレンダー、泡立て器などのアタッチメントを取り付けられる構造です。

  • Bosch Cookit

    ボッシュの新しい調理家電「Bosch Cookit」。画面に従って操作するだけで、多彩な料理を作れます

ヒーターなどを備えた本体部分には、タッチ対応のカラーディスプレイを配置していて、ここで作りたい料理を選べます。本体には200以上のレシピを内蔵し、基本的には画面の指示に従って操作するだけ。

  • Bosch Cookit

    大型のポットに、様々なアタッチメントを取り付けられます。メニューを選ぶとアタッチメントの装着が促されます

さらに、Smart HomeConnect機能を搭載しており、Amazon Alexaによる音声操作もサポート。スマホアプリからレシピをダウンロードしたり、音声で残りの調理時間を確認したりといった操作が行えます。

調理家電としても非常に優秀です。最大200℃まで加熱できるため、炒め調理や、ステーキに焼き色を付けることも。加熱温度は37℃から200℃まで、1℃単位で調整可能です。

  • Bosch Cookit

    カラーディスプレイには、写真付きでメニューやレシピを表示

ボッシュの担当者によると、発表時点で価格は未定ですが、プレミアムな価格になるとのこと……。2020年春ごろ、ドイツでの発売を予定しているそうです。日本での発売は未定となっています。

さて、似た製品をグループセブのブースで見かけました。KRUPSの「Prep&Cook XL」で、こちらも加熱調理ができるフードプロセッサーです。加熱温度が30℃~150℃なので炒め調理は無理ですが、多彩はアタッチメントを内蔵しており、手軽に自動調理できます。ソース、スープ、デザートなども含めて、6つの自動プログラムを搭載しています。

  • Prep&Cook XL

    KRUPSの「Prep&Cook XL」で作ったリゾットを試食。とても美味しかった! 混ぜながら加熱できるからこそのメニューといえますね

スマートフォンとBluetoothで連携するモデルもラインナップ。欧州ではすでに発売されており、約900ユーロです。このほか、日本市場で展開しているブランドでも、新型や未発表の電気鍋が展示されていました。

  • Cook4me

    日本ではティファールから発売されている「Cook4me」ですが、IFAではKRUPSブランドで展示。写真のブラックモデルは、日本で未発売のコネクテッドモデルです。Bluetoothでスマホとつながって、スマホアプリからダウンロードしたレシピを鍋に転送できたりします

  • 大石アソシエイツが日本市場で展開しているラッセルホブスも、新作の電気鍋を展示。肉などに差して中央部の温度が測れる芯温センサーが付属し、緻密な真空調理スロークックに対応します

日本市場でも、かき混ぜ機能を搭載したシャープのヘルシオホットクックなど、手軽に使える自動電気鍋が人気を集めています。自動調理できる電気鍋は世界的なトレンドとなっていきそうです。

日本市場とは異なるオーブンの進化に注目

続いて、新作のオーブンを見てみましょう。まずは独・AEGの「9000 STEAMPRO」です。真空調理に対応したスチームオーブンで、ハンドル内側に庫内を写すカメラを搭載しています。調理中の様子を、スマートフォンから見られるのが特徴です。

基本的な調理方法は、食材をビニール袋などに入れて真空密封した状態で、最大80度のスチームで加熱するというもの。食材の水分が失われず、ジューシーに仕上がります。加えて便利なのは、ワイヤレス&バッテリーレスの芯温センサーが付属しており、塊肉などに差して温度を計測できること。センサーに必要な電力はワイヤレスで給電される仕組みです。

  • 9000 STEAMPRO

    ハンドル部分にカメラを装備した、AEGのCookview対応「9000 STEAMPRO」。スマホ連携でアプリからの操作が可能です

サムスンの「Dual Cook Steam Oven」は、名前の通り上下2段を分けて調理できるオーブンです。庫内全体の加熱調理だけでなく、上だけ、下だけ、上下同時など、様々な組み合わせが使えて、さらにスチーム調理とオーブン調理を同時に行えます。

  • Dual Cook Steam Oven

    上下バラバラに加熱料理できるサムスンの「Dual Cook Steam Oven」は、新たにスチームとオーブンの同時調理に対応。2020年に欧州で発売予定です

また、オーブンの性能や機能以外で注目したのが、ハイアールのコンセプトモデル。これまで、スマートホームやスマートキッチンに不可欠なディスプレイは冷蔵庫のドアに配置されていましたが、ハイアールのコンセプトモデルはオーブンのドアをまるごと、スマートホーム用のディスプレイとして利用します。

冷蔵庫ドアのディスプレイよりも横幅が広く、表示に余裕があって見やすかったです。ディスプレイには、宅内のスマート家電を操作するためのボタンが並び、冷蔵庫の中身も確認できます。

  • ハイアールが展示していた、スマートディスプレイ搭載のオーブン。オーブンのドアをディスプレイとして利用する新しい提案です

また、WebブラウジングやYouTubeの閲覧にも対応します。画面が横に広いため、動画視聴にも便利そう。コンセプト展示でしたが、すぐにでも製品化できるのではないでしょうか。

冷蔵庫はインテリアへ。新たなカラーの挑戦

この数年、新しい冷蔵庫のトレンドといえばスマート機能の搭載でしたが、IFA 2019で最も多かったのはデザインの提案です。

例えば、サムスンは韓国で展開している「BESPOKE」シリーズの冷蔵庫を展示。8種類のサイズやタイプ、9色のカラー、3種類のテクスチャーが選べる冷蔵庫です。ライフスタイルに合わせてモジュールを足して、冷蔵庫の容量や機能を増やせて、さらにカラーとテクスチャーのパネルで冷蔵庫そのものを彩ることができます。

  • 1ドアから4ドアまで、様々なモジュールで構成されるBESPOKE冷蔵庫。シングルなら1つ、カップルなら2つ、ファミリーなら3つと自在に構成できます

  • BESPOKE冷蔵庫のアレンジ版。ドアパネルをペイントする提案です

同じくカラー冷蔵庫の展開は、様々なメーカーのブースで見られました。海外メーカーの冷蔵庫は長い間、ステンレスのシルバー調が主流でしたが、小型冷蔵庫から新しいトレンドが始まろうとしているのかもしれません。

  • トルコ・ベステルがシャープブランドで展開する、レトロスタイルのカラー冷蔵庫を展示。来場者から人気投票を行っていました

  • ボッシュのブースにあった冷蔵庫のカラーサンプル。自在にカラーを変えられます

  • 独・リープヘルも、小型冷蔵庫に様々な写真やイラストをペイントして展示。こちらも来場者の注目を集めていました