アマゾンが毎年開催するセールの中でも、プライム会員を対象にした大型セールが「プライムデー」だ。2019年は7月15日から48時間に渡って世界で同時開催した。年に一度、毎年7月に開催し今年で5回目だが、いまではすっかり定着し、年末商戦と双璧を成すイベントになりつつある。

  • 2019年のプライムデーが48時間に渡って開催された

プライムデーの目玉は、時間帯ごとに実施されるタイムセールだ。だが最近では安売りだけでなく、新製品や地方の特産品の販売機会としても注目を浴びている。

48時間の開催で最高売上を記録、「Pay」も後押し

2019年のプライムデーに販売された商品は、世界で1億7500万点以上。日本では12月の「サイバーマンデー」や過去のプライムデーを超える、アマゾン史上最大の売上を記録したという。

セールの開催期間も過去最長となる48時間に伸びたことから、売上増は順当な結果といえる。日本では天然水やモバイルバッテリー、紙おむつがベストセラーとなっており、普段使いの消耗品を安く補充する人が多かったようだ。

また、東京、大阪、新潟ではプライムデーの体験イベントを実施した。天候に恵まれない日が多かったのは残念だったものの、アマゾン製のデバイスやセール品が並び、盆踊り用に作られた「Alexa音頭」が流れるなど、さまざまな試みがみられた。

  • プライムデー体験イベントの大阪会場。東京と同じく雨模様だった

プライムデーの対象は「Amazonプライム」の会員だが、会員以外の人にも無料体験を提供した。日本で盛り上がるポイントや「Pay」とも連携し、最大5000円相当のアマゾンのポイント還元や、NTTドコモの「d払い」が20%還元を実施したこともセールを後押ししたといえそうだ。

2018年12月にアマゾンに対応したd払いは、7月に1万円相当を上限とした20%の還元キャンペーンを実施した。「ドコモ口座」を利用すれば、携帯料金との合算払いとは別枠で買い物ができることを利用して、セール品をさらにお得に買えた人も多いのではないだろうか。

  • d払いは7月の1か月間、20%還元を実施した(画像はNTTドコモのWebサイトより)

新製品投入イベントとしても存在感を増す

プライムデーを振り返る上でもう1つ注目したいのが、話題の新製品や地方の特産品が販売される機会が増えており、単に安売りだけのイベントではなくなっている点だ。

たとえばKONAMIの「PCエンジン mini」は、発売日こそ2020年3月とまだ先だが、プライムデーに先行予約を開始することで大きな注目を浴びた。体験イベントにも試遊台を設けるなど、集客にも利用していた。

  • プライムデーに先行予約が始まった「PCエンジン mini」

地方の特産品も増えている。プライムデーに先駆けて開いた発表会では、北海道の占冠村が生産に取り組むメープルシロップを紹介。アマゾンでの取り扱いをきっかけに、全国で知名度が上がったという。

  • 占冠村産のメープルシロップ「トペニワッカ」

一般に入手できるメープルシロップの数倍の価格がついた高級品だが、レビューの評価は高く、ギフトとして贈ってみたい商品になっている。こうした特産品はアマゾンの「Nipponストア」に多数、掲載されている。

  • Nipponストアでは各地のグルメや特産品を販売している

もちろんアマゾンには膨大な数の商品があり、アマゾンに掲載するだけで売れ始めるとは限らない。だが、プライムデーにはお得な商品を探し回る人が殺到する。欲しかったものを指名買いするだけでなく、これまで興味のなかったジャンルの商品を知る機会でもあるというわけだ。

それに加えて、プライム会員はアマゾンでの買い物に慣れており、配送先や決済手段も登録済み、ボタンを押せばすぐに買い物ができる体勢だ。基本的に買い物意欲の高い人に向けて新商品をすすめるのは、販売側にとって実に好都合といえる。

日本は格安? プライム会費の値上げはある?

今後の展開として気になるのは、プライム会費の値上げだろう。日本では長らく年会費3900円(税込)に据え置かれていたが、5月から4900円(月会費の場合は500円)に値上げされた。アマゾンジャパンでプライム事業を統括する事業本部長のノア・ボルン氏は、プライムのサービス内容が増えていることを値上げの理由に挙げている。

米国のプライム会費は年間119ドルと高く、日本でもさらに値上げの余地があるとの指摘は多い。だが配送の特典以外にもビデオや音楽といったコンテンツ、試着サービスなど特典は増え続けており、それでもお得感はまだまだ高い。アマゾンの強さがしばらく揺らぐことはなさそうだ。