NHK連続テレビ小説『まんぷく』で、萬平(長谷川博己)の秘書役・望月綾を演じ、注目を集める女優・玄理。5月3日に公開を迎えた映画『薔薇とチューリップ』では韓国のアイドルグループ・2PMのジュノの相手役、現在放送中のNHKドラマ10『ミストレス~女たちの秘密~』(毎週金22:00~)ではビジネスウーマンを器用に演じ分けている。ジュノ演じるカリスマ画家ネロ・パークを献身的に支えるマネージャー・ミョンアと、佐藤隆太演じる悟史との夫婦生活がぎくしゃくしていく冴子。2作は両極端の役柄ではあるが、そこには玄理ならではの職業観が通底していた。

■ジュノのお姫様抱っこシーン秘話

玄理

女優の玄理 撮影:島本絵梨佳

――ジュノさんにとっては、邦画初主演となる『薔薇とチューリップ』。日本語もお上手な方なんですよね。

スタッフさんが全員日本人だったので日常会話は日本語で話されていて、私とお話しする時は韓国語が多かったです。韓国では連ドラの主演をたくさんやられて演技経験も豊富な方なので、とてもやりやすい雰囲気を作ってくださいました。

――俳優として最も印象に残っていることは何ですか?

これまでずっと日本で仕事をしてきて、韓国の俳優さんと接する機会があまりなかったせいかもしれませんが、ジュノさんがお風呂に入るシーンで恥ずかしそうにされていて。それがすごく新鮮というか、きっとファンの方々にとっても魅力的な部分でもあるんだろうなと感じました。現場でそこまで深いお話はできなかったのですが、役柄にとってもそれが良かったと思っています。

――この映画の中で個人的に一番好きなのが、ジュノさんが玄理さんを「お姫様抱っこ」するシーン。役柄の感情がとても表れていたのですが、どのようなやりとりがあって成立したシーンだったのでしょうか?

先程の話とつながるかもしれませんが、ジュノさんが私をお姫様抱っこした時に私の足元にはカメラがあって。短いタイトなスカートだったので、すごく心配してくださったんです。後で編集してもらえるので私は気にしてなかったんですが(笑)、抱きかかえる向きを変えたり、そういう気遣いをしてくださったこともすごく新鮮でした。アーティストだけでなく、俳優としても経験豊富な方なので、そのような対応力を兼ね備えていらっしゃるのだと思います。

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――また、それが役柄としての関係性にも活きてきそうですね。

そうですね。役の距離感を縮めるきっかけにもなりました。

――共演者一人ひとりにそのような気付きがあるんですか?

私は、現場の空気が良いとそれが映像にも現れると思っています。ジュノさんがとにかくお忙しくて、スケジュールはかなりタイトでしたが、スタッフさんの団結力がすごくて。現場ではいろいろなハプニングが起こるのですが、監督がすごく穏やかな方なので自然と乗り切ることもできて、撮影から1年以上経っていますが、スタッフさんとは今でもご飯に行く間柄です。

――東村アキコさんが、大ファンであるジュノさんのために描き下ろしたマンガが原作になっているそうですね。東村さんと会う機会はありましたか?

現場に来てくださったので、そこでお話させていただきました。以前、『相棒』で漫画家の役をやらせていただいた時に浦沢直樹さんに指導していただいたのですが、当時浦沢さんのマネージャーさんが東村さんも担当されていて。そんなご縁もあって、マネージャーさんと一緒にいろいろなお話をさせていただきました。

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――役柄のヒントも原作から?

原作となったのは完成したマンガというよりも、ラフがあって、そこから脚本を書き起こしたものです。それを読ませていただいて、スタイリストさんやヘアメイクさんもすばらしい方々だったので、「ミョンアってこんな感じだよね」と話し合いながらキャラクターを作り上げていきました。スケジュールがタイトだったのですが、監督とも相談させていただいたり。東村さんも現場で「うわー! ミョンアだ!」とすごく喜んでくださったので安心しました。

――そうした作り上げたキャラクターを韓国語で演じるとなると、難しい部分もありそうですね。

全編韓国語でお芝居するのは、今回が初めてです。ネイティブぐらい話せるとはいえ、知らない単語や言い慣れない言葉があったりして、ジュノさんは日本語を、私は韓国語でお互い分からない部分を確かめ合いました。いつか全編韓国語の役はやると思っていましたが、デビューしてから10年経っているので、「ようやく」という感じです。実際にやってみると、主人公の相手役、しかもジュノさんですから独特のプレッシャーがあって。やり切った達成感と、これからの自信につながりました。