AIBOの製品ページは今も公開されたままだ

各種報道によれば、ソニーは18年前のAIBOと異なり、ただの「愛玩具ロボット」ではなく、人とたわむれ、人の言うことを理解し、家電連携などが可能になるロボットを目指すとされている。

ソニーは、8月にディープラーニングのプログラムを生成できる統合開発環境「Neural Network Console」を公開している。6月には同社のディープラーニングライブラリをオープンソース化しており、同社にも技術がないわけではない。また、同社が2016年5月に資本参加した米CogitaiのAI技術も活用するとみられる。

一方、オープンソース全盛、クラウド時代と言われている中で、どこまでソニーの技術が通用するのか。GoogleのTensorFlowなどのグローバル・スタンダードになりうるディープラーニング ライブラリは、ユーザーコミュニティが立ち上がり、クラウド基盤も含めて全世界の開発者がユースケース開発や機能改善のため議論を日々交わしている。

ソニーも外部に連携機能を開放するとみられるが、どこまで開発者を巻き込めるのか。希望の光があるとすれば、ソニーは日本企業で数少ないITプラットフォームの成功者だ。PlayStationは、単なるゲームプラットフォームを超え、同社のエンターテインメントプラットフォームとして少なからず存在感を発揮し、収益化の面でも「ソニーの三本柱」の一つに据えられるレベルまで達した。

ゲーム開発者とは異なり、他の家電メーカーとの連携、Web・アプリ開発者は未知の部分もある。特に後者はその母数が世界で数百万人単位にのぼり、「インディーズゲーム開発者と連携する」といったレベルとは異なるアプローチが求められる。前述のライブラリのオープンソース化においてもソニーは外部から1500名程度の反応があったと語るが、本気でプラットフォームを構築するつもりであれば、桁が1つ少ないのではないか。

強いソニー、ロボットで返り咲きなるか

「モノづくり大国日本」という言葉は、電機メーカーと自動車メーカー、そしてそれらを支える中小の部品メーカーによって神話化した。

しかしこの10年で電機メーカーは中国・韓国メーカーに飲み込まれ、自動車メーカーもEV化が迫られるなど、岐路に立っている。ただ、このモノづくりの底力を見せる可能性があるのがロボット分野だろう。

現在、ロボットの主力は産業用ロボットであり、この分野で日本はファナックや安川電機などの世界大手がいることもあり、5割程度のシェアを持っているとされている。家庭向けロボットと産業用では、製品の大きさなど整合性がない部分もあるが、ロボット工学としてはトヨタやホンダがロボットの研究開発を続けているように、一定の価値は存在する。

産業用ロボットが主流のロボット産業だが、2021年にはサービスロボットなどコンシューマ範囲にもロボットが浸透するとみられる(スライドはソニーモバイル発表会のもの)

何より、ロボットは単にCPUとディスプレイ、無線部品を組み合わせればいいスマートフォンなどと異なり、製品ごとの細かい駆動部の設計、組み合わせ、高い技術力を必要とする。愛玩具を超えたSFの世界のロボットを実現できれば、その先行力は10年スパンで武器になりうる。

ロボットはある意味でIoTの先端事例だ。IoTに必要なのは、ハードウェアとソフトウェアの"両輪"であり、ソニーがこれまで蓄えてきたハードの知見、ソフトの知見を活かそうとAIBO復活に注力しているのがその表れだろう。前述のXperia Hello!でも、ソフトウェア技術で外部流用していたものを、内製化することで知見を蓄えたいとソニーの倉田氏は語っていた。

新しいソニーのロボットに対して「AIBO」と冠するかどうかはわからない。ソニーはこの事業を犬型ロボットにとどまらず応用する可能性を示唆している。営業利益5000億円への道が見える中で、業績だけではない「強いソニー」を示せるのか。10月31日の第3四半期決算と11月1日の発表、2日連続の吉報が待たれるところだ。