イベントの後半には、8K高画質のオリジナル映像を製作するクリエイターがトークに参戦。株式会社ピクスの映像監督である池田一真氏、ならびに株式会社ロボットの諸石治之氏がプロデューサーを担当し、完成させた8K/HDRの実写オリジナルショートムービー『LUNA(ルナ)』がAQUOS 8Kで上映された。

この日は機材の都合により、本来HDRで撮影されている映像をSDRで映すかたちとなった。それでも、8Kの超高精細な映像で描かれた、現代版・かぐやひめ『LUNA』の瑞々しい映像、清純な主人公たちによって描かれる物語の舞台に自然と引き込まれてしまった。

8Kで「フィクション」作品をつくることにこだわったという『LUNA』の映像監督・池田一真氏

8Kになって映像のキャンパスが広がることが多くのクリエイターを刺激するだろうと期待を語る諸石治之氏

作品の上映を終えた後、池田氏と諸石氏から『LUNA』製作時の裏話がたっぷりと語られた。今回の作品をつくったきっかけについては諸石氏が「実用放送のスタートが間近に迫る中、私たちのようなコンテンツメーカーも良質な8K作品の制作に一石を投じたいと考えてチャレンジした。昨年(2016年)、イマジカが都内に8Kの編集スタジオをオープンしたことも、製作に一歩踏み出そうとしていた私たちの背中を押してくれた」と振り返る。

池田氏は「8Kのデモコンテンツといえば、自然を映した環境映像などのノンフィクション、音楽ライブなどの映像が多いようだが、私たちはそこから一線を画すかたちで『心を動かす物語=フィクション作品』を8Kでつくることを目指した」と企画意図を説明。

画面に収まるすべての被写体にピタリとフォーカスを合わせるような説明的な表現を敢えて控え、時には光や色を使いながら奥行き方向のフォーカスをボカしたり、CGと実写を合成しながら、ファンタジーとしてよりリアルな空間演出を駆使した。AQUOS 8Kの画面に映る『LUNA』の映像を見ながら、シーンごとに詳しくわかりやすい解説を加える池田氏のトークを多くの来場者が熱心に聞き入っていた。

イベントの司会から「8Kの可能性」を訊ねられた池田氏は、「これから普及が進むと、色んなクリエイターが独創的な表現に挑戦するようになると思う。モーショングラフィックスやアニメーションも駆使した、いままでに誰も見たこともないような映像が次々と生まれるのでは」とコメント。諸石氏も続けて「8Kになると、いま主流の2Kよりもキャンパスが格段に大きくなる。クリエイターにとってはできることが増えるので大歓迎。HDRの技術を掛け合わせるとさらに表現の幅も広がる。8Kのリアリティあふれる映像の力が、家族全員をもう一度リビングに呼び寄せるのでは」と見解を語った。

イベントの司会を担当したアイドルの松村香織さんとアスキーの末岡氏

8Kテレビを開発する立場であるシャープの高倉氏、高吉氏も「私たちがキャンパスとなる高精細なテレビを用意するので、ぜひクリエイターの皆様に8K/HDRの魅力を活かした面白い作品をつくって欲しい」とエールを送った。高吉氏は、「私たちは放送のスケジュールにばかり注目してきたが、ゲーム業界からも8K対応ソフトを来年(2018年)春に発売するというアナウンスがあったようだ。もしかすると想定外の色んな8Kコンテンツが登場して、来年は相当盛り上がる1年になるのでは」として、AQUOS 8Kテレビのスタートダッシュに期待を寄せていた。