映画監督に、出演役者の印象を伺っていく「監督は語る」シリーズ。今回とりあげるのは、佐藤勝利(20)だ。2011年にアイドルグループ・Sexy Zoneのメンバーとしてデビューして以来、その存在感を示し続けている。

『ハングリー!』(12)、『SUMMER NUDE』(13)、『49』(13)などテレビドラマに出演する一方で、帝国劇場の舞台『JOHNNYS' World -ジャニーズ・ワールド-』『JOHNNY‘S ALL STARS ISLAND』などにも出演し、幅広く活躍する佐藤。

最新作『ハルチカ』(3月4日公開)では、気弱ながら真面目で頭脳明晰な高校生・上条春太(ハルタ)を演じ、女優の橋本環奈とW主演を果たした。

■市井昌秀監督
1976年、富山県出身。劇団乾電池の研究生を経て、ENBUゼミナールに入学。2004年、初の長編作品となる自主映画『隼(はやぶさ)』が、数々の賞を受賞し、国内外から高い支持を得た。2013年、商業映画第1作目となる『箱入り息子の恋』が単館公開ながらも1億を超えるスマッシュヒットを記録。近作はWOWOWドラマ『十月十日の進化論』、映画『僕らのごはんは明日で待ってる』など。

佐藤勝利の印象

実は完璧主義者なんですよね。僕は生っぽい芝居が好きなので、撮影でそんなにリテイクを重ねる方ではないのですが、勝利くんは熱心な姿勢で、ちょっとでも違和感があったら何度もやりました。本当に研究熱心で、今回ホルンに挑戦してもらいましたが、「Band Journal」という吹奏楽の専門誌をちゃんと読んでいました。実際にホルンで「サリーガーデン」を吹くシーンでは、どうしても勝利くんの音でやりたいので、たくさん練習してもらいました。

良い意味で不器用な面も持っていると思っていて、真面目で不器用なところがハルタに近い印象です。観客の想像をかき立てる表情をしているところは、頭脳明晰でクールというハルタ像に近似してます。基本的には環奈ちゃん演じるチカの目線で話が進んでいくんですが、勝利くんが出てくると場面をかっさらうというところはありましたね。

撮影現場での様子

割とハルタに近いんですけど、普段そんなにしゃべるわけではないのに、しゃべったらその場を持っていく、というところがあったと思います。あと、勝利くんは本心を隠すところがあって、寡黙だけど強気なのはすごく伝わってきました。アイドルだと、どうしても"見せる"ということで気を張っている部分があるのかもしれませんが、等身大の部分では人間誰しも弱い部分があると思うので、今回は映画の中で、少しそこを引き出せたのかなと思います。

作中で勝利くんが指で髪の毛をくるくるするのは原作にもないんですけど、何かちょっとそういう遊びを入れたかったので、やってもらいました。等身大な高校生でいて欲しかったので、決め台詞や決めポーズはないけれども、ついつい癖でやってしまう仕草という感じですね。

映画『ハルチカ』でのおすすめシーン

吹奏楽部が揉めて揉めて揉めまくったところに、ピシッとするハルタや、造船所でチカをそっと元気付けるハルタだったり、ちゃんとチカを勇気付ける存在になれているシーンはおすすめです。でも、最初のヘタレのところもすごく良いですよ。芝居はキャッチボールなので、環奈ちゃんの幼馴染としての触れ合い方をしてくれたと思います。

僕はリハーサルはしない方なんですけど、吹奏楽部が揉めるシーンはさすがに撮影より前に、角川さんのスタジオで一回リハーサルしました。流れだけを決めて、即興芝居のような形で進めたので、そこでセリフが増えた人もいます。本番は日も落ちかけていたし一回限りで、すごいプレッシャーの中だったんですが、これが最後だからという気迫がこもったシーンです。

(C)2017「ハルチカ」製作委員会