俳優の佐々木蔵之介がこのほど、読売テレビ・日本テレビ系ドキュメンタリー特番『ドイツが愛した日本人―佐々木蔵之介が巡る、ある医師の物語―』(5日15:00~16:25)の取材に応じ、同番組のロケで昨年12月にベルリン滞在中、テロ事件があったことを明かした。

俳優の佐々木蔵之介

この番組は、日本ではあまり知られていない日本人にスポットを当てたドキュメンタリー特番の第2弾。今回は、第二次世界大戦下のドイツで、自らの命と引き換えに人々を病から救った日本人医師・肥沼信次氏の足跡を、佐々木が現地を訪れてたどっていく。

オファーを受ける前、肥沼氏のことは知らなかったそうだが、ちょうどナチスの強制収容所をテーマにした主演舞台『BENT ベント』の公演が終わったタイミングで「とても興味があったので、すぐに手を挙げました」と、出演を快諾した佐々木。

現地に行くと、お墓が作られていたり、「肥沼杯」と名を冠した柔道大会があったりと、肥沼氏への感謝の思いが多く残されており、それに感銘して「僕は表現者として、偉業を成し遂げた方を紹介する立場にあるのではないかと思いました」と使命感を受け止めたそうだ。

ロケで特に印象的だった場所は、ザクセンハウゼン強制収容所。前述の舞台で、看守が囚人の帽子を壁に向かって投げ、それを取りに行かせることで、逃亡と見なして撃たれるという理不尽さを演じたが、それが現実に行われていたことに衝撃を受け、「かなり僕は震えました。早く帰らないといけないのに、いつまでも資料館にいて写真を撮っていました」と振り返った。

こうして、ドイツのさまざまな場所をめぐった佐々木だが、そんな中、昨年12月19日にベルリンのカイザー・ヴィルヘルム記念教会近くのクリスマスマーケットに、大型トラックが突っ込むというテロ事件が発生した。このクリスマーケットを取材したのは、わずか2日前で、その夜に日本大使館を訪問し、「最近はテロもあるので、あまり人混みの中には…」といった話もしていたという。

そして、事件が起こったのは、ブランデンブルク門でベルリンロケ最後のシーンを撮った後、夕食をとっていたときだった。佐々木は「僕が1リットルのビールを飲んでいるときに、コーディネーターの方が『テロがあった!』と言って、『あそこやん…』って知って…。どういうことなんだと思いました」と、ショックを語る。

翌日の昼に、次のロケ地であるヴリーツェンへの飛行機に乗る予定だったため、佐々木は翌朝、テロ事件の現場へ。「警察もいて(テレビの)中継車も何台もいて、あんなに楽しかったところが、こんなに残念なことになるのか…」と絶句し、「こういう番組のロケをやっているときに『なんでこんなことで人の命が…』と思いました」と、あらためて命の尊さについて考えさせられたことを話した。

肥沼氏は、研究者としてドイツに留学したが、第二次大戦の戦況悪化で大使館から日本人に帰国を促す指示が出ていたにもかかわらず、ドイツに残ることを決断。ポーランドとの国境に近い古都・ヴリーツェンで、猛威を振るっていた伝染病・発疹チフスに苦しむ人々の治療にあたったが、わずか半年で、その病気で命を落とした。番組では、そんな肥沼氏の功績を再現VTRを交えて紹介。佐々木は「命の大切さ、命の尊さは感じていただけるのではないだろうかと思います」と、見どころをアピールした。

ドイツロケの様子=読売テレビ提供