今回の「SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM」は、シグマの特殊低分散ガラスであるSLD(Special Low Dispersion)ガラス×3枚を採用し、特に色収差を良好に補正したAPOモデルの望遠マクロだ。マクロレンズといえば、50mm~100mmの焦点距離を浮かべる方が多いと思うが、シグマは105mm、150mm、180mmと、高性能な望遠マクロを充実させている(50mmマクロと70mmマクロは2015年に生産完了)。

なかでも、「SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM」は、他にないスペックと卓越した光学性能を持つ。発売は2011年と少し前だが、現在でも高い人気を保っている。果たしてどんな性格と写り、性能だろうか。試用にあたって、カメラはキヤノンの「EOS 5Ds R」を使っている。

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「EOS 5Ds R」+「SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM」

ズッシリとした重さとシルキーなツヤ消し黒塗装は、Artライン登場以前のシグマ高級レンズの趣である。質量は1,150gと、キヤノン「EF MACRO 100mm F2.8L IS」(625g)や、シグマ「MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM」(725g)と比べるとかなり重いが、意外にコンパクトなので、中身が詰まっている印象だ。持った感じのバランスはよい。

フォーカスリングはとても幅が広く、ゴムの指掛かりが良好、適度なトルクと、回しやすい。AFで使う場面が多いとしても、マニュアル時の回しやすさは大変重要だ。また、HSM(超音波モーター)で駆動されるAFは静粛で速く、手ぶれ補正のOS(Optical Stabilizer)もよく機能する。しっかりした三脚台座は、締めるのも外すのもワンタッチだ。

ソフトなボケ味はポートレイトにも最適。作例は絞り開放で撮っているが、まつげはシャープに、肌はなだらかに、髪の毛や肩の輪郭は優しく背景に溶けていく感じで描写できた
1/50秒・f2.8・ISO800
モデル:熊乃あい

三脚を構えて絞り込んでも非常にシャープだ
1.3秒・f22・ISO400

この一本がカメラバッグに加わるなら……

望遠マクロの性能と使い勝手がもっとも生きるのは、昆虫や小動物の撮影だろう(もちろん花や植物も)。「SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM」はレンズ前17.5cmで等倍になり、小さな昆虫でも余裕のワーキングディスタンスが取れ、被写体が逃げにくい。動物園など被写体に近づけない場合も重宝し、優秀な手ぶれ補正によって、手持ちでも不安感はない。

1/2500秒・f3.5・ISO200

1/1250秒・f5.6・ISO400

1/1000秒・f3.5・ISO400

1/100秒・f5.6・ISO800

美しいボケ味も望遠マクロの魅力だが、「SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM」は9枚羽円形絞りを採用していることもあり、前も後ろも素直でソフトなボケ味だ。

マクロ6 1/800秒・f2.8・ISO100

マクロ7 1/200秒・f5.6・ISO200

ピントが決まりさえすれば(マクロ撮影では往々にして難しかったりもする)、優れた解像感、ボケ味は素直でなめらか。一言でいうと非常に使い出のある高性能レンズだ。それなりの大きさと重さがあるため、気軽に持ち歩いたり、テーブルトップの小物や料理を撮ったりには向かないし、画角が狭いのでポートレイトを撮るのも距離が必要となる。しかし、この一本がカメラバッグに加わるなら、大きさや重さ以上に写真の可能性が広がることは間違いない。