発表会ではまず、日本エイサーの社長の代表取締役社長 ボブ・セン氏が登壇。今日は暑いと前置きしつつ「PC市場の冷え込み」に言及。原因の一つとして、メーカー側の訴求点がユーザーのニーズとズレがあるのではないかと問いかけた。Acerとして今後は、法人向け製品の訴求ポイントを「高い生産性で成熟した仕事のツール」として広く提案する。

日本エイサー 代表取締役社長 ボブ・セン氏

今回発表する2製品も、高い生産性がテーマ。2in1 PCのSwitch Alpha 12は、特許取得の液体冷却システムを使って性能と静音性の両立を実現。Windows 10 Mobile端末のLiquid Jade Primoも「ポケットPC」と呼んだ。移動中、オフィススイートとContinuum機能によって、ビジネスシーンに生産性をもたらす製品と紹介した。

続いて製品担当者による新製品の解説に移る。プロダクトマネジメント部の石川氏はSwitch Alpha 12に関して説明し、2in1 PCはPCモードとタブレットモードという2つの機能が必要だが、タブレットモードでは静音性が重視される。他社製品の場合、Core i CPUを使った製品はパワフルだが冷却ファン搭載で静音性を多少なりとも損なっており、一方でCore m CPUを使用すると静音性には優れるが、パフォーマンスが落ちると指摘。

そこでSwitch Alpha 12は、Core i5-6200Uを採用しながら、冷却ファンやポンプなしで冷却できるAcer Liquidloop Coolingを世界で初めて搭載。17.1dBAという抜群の静音性と、ファンやポンプがないことで信頼性が向上していることを強調した。Switch Alpha 12には、メモリ容量とストレージ容量が異なる2モデル(4GB/128GBと8GB/256GB)がラインナップされている。

また、独自構成のキックスタンドは165度まで無段階に調節が可能で、USBコネクタもType-A/Cの2つを搭載。スタイラスのAcer Active Penも同梱しており、3カ月の連続使用が可能と、Windows 10 Aniversary Updateで実装されるWindows Inkを意識した製品となっている。価格はオープンプライスだが、想定価格はメモリ4GBモデルで12万、メモリ8GBモデルで14万とのこと。出荷状態でWindows 10 Aniversary Updateは適用されていない。

日本エイサー プロダクトマネジメント部 石川達也氏

Switch Alpha 12のスペック概要。Core i5-U6200、メモリが4GGBまたは8GBという実用的なスペック

Switch Alpha 12の特徴概要。高性能かつ静音性に優れ、インタフェースの多さ、キーボード&ペン同梱なのが特色

高性能CPUは欲しいところだが、タブレットではファンレスと熱くならないこと重要で、両立しにくい

独自の放熱機構「Acer Liquidloop Cooling」を搭載することで、ファンレスながらCore i5搭載が可能となった

メインメモリとストレージの異なる2製品をラインナップするが、Office入りは今後検討するという

プロダクトセールス&マーケティング本部の楊氏は、Liquid Jade Primoに関して説明。昨年(2015年)のIFAで発表してから1年をかけて開発し、順次販売を開始。日本市場でもこの「ポケットPC」を発表する運びとなったと概要を述べた。CPUにQualcommの最上位製品群であるSnapdragon 808を、メモリに3GB、そして5.5インチAMOLEDディスプレイを採用することで、PCとほぼ変わらないエクスペリエンスを実現したと自信を見せる。カメラ機能も、2,100万画素のソニー製CMOSセンサ(フロントカメラは800万画素)と、業界で最上級のものを搭載した。

そして、8.4mmの薄さ、約150gの軽量性、連続通話24時間、連続待ち受け400時間と性能のハイエンドWindows 10スマートフォンになる。Continuum機能も無線と有線の両方に対応し、そのために必要なドッキングステーション、無線キーボード・マウスも、Liquid Jade Primo本体のパッケージに同梱している。

日本エイサー プロダクトセールス&マーケティング本部 ジェネラルマネージャーの楊博光氏。手に持っているのはLiquid Jade Primo

Liquid Jade Primoの主なスペック。Snapdragon808でメモリ3GB、2,100万画素カメラとハイエンド製品らしいスペック。通話時間が長いのはうれしい

一方、パフォーマンスを優先するために、いわゆるヨーロッパ版を日本に投入した事でLTEの対応バンドが「1 / 3 / 7 / 20」となっており、事実上、日本国内では「LTE 1 / 3」の2バンドしか使えない。ドッキングステーションに有線LAN端子がないので、オフィス内でも無線LANを使う必要がある、というのが難点かもしれない(USB接続のLANアダプタが使えるかどうかは未検証とのこと)。また、Liquid Jade Primoはnano SIM×2枚に対応するが、説明員によるとデュアルスタンバイではなく、片方のスロットはmicroSDカードとの排他利用となる。

価格はオープンプライスだが、想定は10万円。高いと感じるかもしれないが、企業向けWindows 10 MobileのライバルをiPhone 6S(あるいはその後継機)と考えた場合、同程度の価格ならば既存のWindowsシステムとの親和性や、社内アプリのユニバーサル化によるTCO削減効果などがあれば、競争力を持てると見ているようだ。

Continuum対応Windows 10 Mobileとしてはかなり高いスペック。PCまたはタブレット+ガラケーまたはスマホという2台持ちの解消を狙う

Windows OS搭載による管理性、セキュリティの高さに加えて、システム更新がMS主導というあたりで企業導入を見据える

PCのように利用できるContinnumは無線だけでなく有線接続にも対応。必要な機器もセットで販売される

想定価格は10万円程度

OSメーカーや販社と一体となって法人向けWindows市場を盛り上げたい

ゲストとして日本マイクロソフトの金古氏と、ダイワボウ情報システムの松本氏も登壇。金古氏は提供が始まったWindows 10 Anniversary Updateの特徴を説明し、新機能となるWindows Ink(ペン機能)のみならず、(かつてEnterprise Data Protectionと呼んでいた)Windows Information ProtectionがWindows 10 Proを搭載するSwitch Alpha 12で使えることを紹介。法人マーケットに対してタブレットを訴求しているAcerに期待を寄せていた。

日本マイクロソフト 執行役員 コンシューマー&パートナーグループ OEM 統括本部長 金古毅氏

Windows 10 Anniversary Updateの主な機能。Switch Alpha 12はこの新機能に合致する

Acerが魅力ある企業向けPCを作り、ダイワボウ情報システムは企業にしっかり送り届けるというパートナーシップの意義を語っていた

ダイワボウ情報システムの松本氏は、2015年8月に日本マイクロソフトと共同でWindowsモバイルビジネスセンターを設立したことを紹介。利用促進と業種別の提案によって、法人向けのモバイル市場拡大に努めてきた。その結果、ここ半年の目立ったポイントとして2in1製品が伸びており、ダイワボウ情報システムが扱うタブレットの半数以上がWindows PCになっているそうだ。今後はWindows 10 Mobileの新しいニーズの創出に向けて活動するという。

今回の新製品は、どちらももダイワボウ情報システムを通じた販売となり、個人向けの販売に関しては少々口を濁したところがあった。ただ、日本エイサーの個人向け製品一覧に今回の新製品が掲載されているので、個人ユーザーでも買えるようになることを期待したい。

ダイワボウ情報システム 販売推進本部 取締役 販売推進本部長 松本裕之氏

法人向けタブレットの出荷は順調に伸びており、Windows率が高いのが特徴だ

法人向けモバイルビジネスも、2in1とタブレット、そしてWindows 10 Mobileを伸ばしたいという

フォトセッション。左からダイワボウ情報システムの松本氏、日本エイサーのボブ・セン氏、日本マイクロソフトの金古氏