TSUTAYAがプロ・アマ問わず映画企画を募集するコンテスト「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2016(以下TCP)」の開催を記念し、前回の受賞者を招いたトークイベントが1日、東京・渋谷の同社内にて行われた。

左から久保田修氏、片桐健滋氏、加藤卓哉氏

記念すべき第1回となる昨年は474作品の企画が集まり、中江和仁氏の『嘘と寝た女(仮)』がグランプリ、加藤卓哉氏の『裏アカ』と片桐健滋氏の『ルームロンダリング』が準グランプリを受賞。各作品の製作費(最大5,000万円)は同社が持ち、2017年の完成に向けて近く撮影に入る運びとなっている。

この日招かれたのは、第1回受賞者の加藤氏と片桐氏。助監督経験のある2人に、『ジョゼと虎と魚たち』『のぼうの城』といった数々の名作を手掛けてきた映画プロデューサーで審査員を務める久保田修氏が加わり、第2回の応募者に向けてのアドバイスや(応募締め切りは6月13日)、応募のきっかけ、映画業界の現状などを語った。

「日本の映画界で助監督を一生続けていきたいという人はいないと思う」と笑顔で場を和ませながら、「いつか監督になりたいという思いがあった」と胸の内を明かす加藤氏。ネットニュースで開催を知り、「5,000万円くれる企画募集はなかなかない」と応募を決意したという。一方の片桐氏も「思いは加藤さんと同じ。助監督が監督をやれる機会はなかなかない」と共感。居酒屋で企画の話でプロデューサーと盛り上がり、知らぬ間に応募してくれていた厚意に感謝した。

映画監督になることの難しさについて、久保田氏は「ここ数年の問題ではなくて1970年代以降の話」と説明。映画会社がスタッフや役者を雇用するシステムが崩壊したことで「映画監督になる道筋、王道のセオリーがなくなった」。その代わりとなるきっかけとして自主制作、フリーランス、テレビ番組制作会社などの例を挙げるも「正攻法がない時代」と語り、だからこそTCPの存在意義があると強調する。

後半には質疑応答の時間が設けられ、イベント参加者から企画書の作り方について聞かれると、これまで数多くのものに目を通してきた久保田氏は「定型があるわけではない」と言い、「難しいんだよなぁ……伝わるものは伝わるんです」と苦笑い。「ヘタな文章でもちゃんと伝えたいこと、やりたいことがある場合は伝わる」と断言し、「最終的には脚本が面白いか、面白くないか」「受験じゃない。傾向と対策を考えてもこの仕事は面白くないと思う」と指摘しながら、「人に読んでもらうことも大事」とアドバイスした。

前回の最終審査に残った7人の内、助監督は2人だけで他は映画製作を経験済みの監督たち。加藤氏は舞台袖で「俺らにもっとチャンスをくれよ!」と2人で語り合っていたことを明かして会場の笑いを誘い、「『こんちくしょう』と思って応募してもらえたら」とメッセージ。一方の片桐氏も「書かないよりかは書いた方がいい。出さないよりかは絶対に出した方がいい。落ちようがどうしようが、出した方が絶対に得です」と呼びかけた。

第2回TCPのエントリーは6月13日まで。「5,000万円まで」だった製作費が、今年は「5,000万円以上」に増額し、副賞として50万Tポイント、TSUTAYA DISCAS1年間無料権が贈呈される。6~7月の1次審査、9~10月の2次審査、11月の最終審査を経てグランプリ1作品、準グランプリ2作品が決定。完成した作品は全国のTSUTAYA、ネット宅配レンタルのTSUTAYA DISCAS、映像配信のTSUTAYA TVでのレンタル展開を予定している。