カリフォルニア くるみ協会はこのほど、高齢者がくるみを摂取することで血中コレステロール濃度が好転するという「くるみとヘルシーエイジング(the Walnuts and Healthy Aging)」の研究結果を明らかにした。

くるみは多価不飽和脂肪を非常に多く含んでいる(イメージ)

同結果は、加齢に関連した健康問題に対するくるみの効果を調べる目的で実施する「WAHA研究」で明らかにされたもの。バルセロナ・ホスピタルクリニックとロマリンダ大学の研究者が、2年間にわたる二元臨床試験で実証している。

研究者は、707人の健康な高齢者を2つのグループに分け、一方には通常の食事に1日量のくるみ(カロリー摂取量の15%以下)を追加し、もう一方にはナッツ類抜きの通常の食事をしてもらうよう指示した。参加者には、総カロリーと多量栄養素の摂取量に関する助言や、くるみに代わる食品についての助言は与えなかったという。

1年後の計測では、どちらの食事でも体重、トリグリセリド、HDLコレステロールに対する影響は、ほとんど見られないことがわかった。しかし、くるみを追加した食事をとったグループでは、ナッツ抜きの食事をとった対照グループと比べて、LDLコレステロール値が大幅に低下していたことが明らかとなった。

バルセロナ・ホスピタルクリニックのエミリオ・ロス博士はこの結果を受け、「体に良い脂肪などの栄養素をくるみから摂取しつつ、体重を増やさず、血中コレステロール濃度を下げるのは、高齢者が全体として望ましい形で栄養をとる際に重要なこと」とコメント。くるみの摂取が高齢者にとってメリットとなる可能性について言及した。

同博士は今後、特にくるみの摂取が、認知機能の低下や加齢による黄斑変性といった公衆衛生上の大きな問題に、どのような効果を及ぼすかを評価していくという。

エミリオ・ロス博士

また、食や健康に関する調査研究が発表されるEB2016(Experimental Biology2016)では、くるみが及ぼす健康要因において、3つの最新研究結果が発表された。

米国農務省(USDA)農業研究局の研究者が行った最新研究では、毎日1.5オンス(約42.5グラム)のくるみを摂取すると、心臓の健康の指標として知られている2つの要素(炎症とコレステロール)の低下という好ましい形で、腸内微生物に大きな影響を及ぼすことがわかった。

ジョージア大学の研究者は、飽和脂肪の多い食事が続いた後に多価不飽和脂肪の多い食事をとると、空腹マーカーと満腹マーカーが好ましい方向に変化することを明らかにした。くるみには1オンス(約28g)当たり13gの多価不飽和脂肪が含まれており、多価不飽和脂肪を摂取する手段として、非常に有効だという。

オレゴン州立大学の研究者は、典型的な高脂肪の西洋食に、くるみおよび高ポリフェノール食品を追加するマウス実験を行った。その結果、くるみを含む食事にラズベリー、チェリー、緑茶などの高ポリフェノール食品を追加すると、炎症の抑制に効果がある可能性が示された。

くるみを単独で、もしくは他の高ポリフェノール食品と一緒に摂取したマウスには、肝臓遺伝子の発現および代謝物質レベルの変化(どちらも代謝状態の改善を示す)に加え、メタボリックシンドロームに関連する要素にも著しい改善効果が見られた。なお、この研究は動物で行われたため、現段階では人間に当てはめることはできないとのこと。

くるみは多価不飽和脂肪(1オンス当たり13グラム)を非常に多く含んでおり、この脂肪には植物由来のオメガ3脂肪酸であるαリノレン酸(ALA)が含まれている。1サービング(1オンス)当たり2.5gという多量のALAを含んでいるのは、ナッツ類の中でもくるみだけだという。

日本では、厚生労働省が「日本人の食事摂取基準(2015年版)」で、1日に必要なオメガ3脂肪酸を1.6~2.4g(成人男女の目安量)としている。同協会によると、ひとつかみのくるみで、1日の摂取量に十分なオメガ3脂肪酸をとることができるという。