世のビジネスワーカーが人脈作りの糧としている異業種交流会。中でも「育休中のママ」を対象としたイベントが東京都港区のホテルにて開催されると聞き、訪ねてみた。その名も「ママだけの異業種交流パーティー」。今春からの職場復帰を控えるママなど約20人は、どのような思いで交流会に参加したのだろうか。

「ママだけの異業種交流パーティー」が開催

託児付きの異業種交流会

今回の交流会は3月9日、託児付きのレストラン利用サービスなどを提供している「ここるく」と、ライフスタイルマガジン「ケノコト」が共同で開催したもの。今春からの職場復帰を控えている育休中のママら約20人が、東京都港区の「第一ホテル東京アネックス」にある会場に足を運んだ。

会場の隣には「託児スペース」が用意されていた

この交流会の大きな特徴の1つは、託児サービスが付いていることだ。保育者たちが、会場の隣に設けられた託児スペースで子どもたちに声をかけたり、おもちゃを使って遊んだりして保育を実施し、ママたちが安心して楽しめるようにバックアップしていた。

ホテルの料理を味わいながら、育児や仕事の話題で盛り上がる参加者たち

「乾杯! 」の合図で始まった交流会では、初対面のママたちが名刺交換を開始。ビュッフェ形式の料理の数々をお皿に取り分け席につくと、すぐに育児や仕事の話題で盛り上がる。ママたちのはじけるような笑顔が印象的だ。

ワーママを助ける「交渉術講座」がスタート

組織変革コンサルティングを専門とするワークシフト研究所の代表取締役、小早川優子さんが講演した

会場が盛り上がってきたところで始まったのは、「周囲のみんなを自分の味方にしちゃう交渉学入門」と題された講座。組織変革コンサルティングを専門とするワークシフト研究所の代表取締役社長、小早川優子さんが講演した。小早川さんは、「どちらかが負けるのではなく、"Win-Win"の交渉術を身につけましょう」と提案。ポイントとしては、(1)状況把握をする、(2)お互いのゴールを設定する、(3)ゴールに向けた解決案を考えるという手順を踏むとよいのだという。

参加者は真剣にメモをとっていた

講座の中でも興味深かったのが「今日から使える上手な頼み方&断り方」の紹介だ。例えば夫に子どものお迎えを頼みたいとき、「15時までは仕事が忙しいんだよね? 」「15時以降は手が空く? 」「そうであれば、子どものお迎えいけるよね? 」というように、複数回に分けて聞くことで外堀を埋めていくといいのだという。たしかに、「子どものお迎え頼める? 」と最初から聞いてしまうと、いろいろな理由をつけて断られそうだ。

さらに職場で仕事を頼まれた時にも、自分の事情だけを説明するのではなく、相手の要求に応える案を出すことが大切とのこと。そう考えると、「仕事を頼める? 」と上司から尋ねられたら、「今日はできません」ではなく「明朝ならできます」が正解となる。お互いのゴールが期限にこだわらず「1つの仕事を完結させること」にあるならば、まさに"Win-Win"な結論に導くことができる。

「交渉は幸せのツール」と語った小早川さん。ワーキングマザーにとって家庭や職場で役立つ技術といえ、参加者たちは真剣にメモを取りながら話を聞いていた。

"みんな同じ"という安心感

交流会は、主に参加者どうしの雑談が中心だ。お話中にお邪魔すると、ママたちのさまざまな不安や悩みが聞こえてきた。5月から職場復帰するという1児のママは、「ずっと赤ちゃんと2人でいたので、職場復帰は未知の世界」と語った。「今までは、残業や急なトラブル対応も可能だったが、これからは従来どおりの働き方ができない。大丈夫かなと不安です」。

また「子どもが熱を出して会社を休む可能性が2倍になる」と不安を打ち明けたのは、4月から2人目の子どもを保育所に預けて職場復帰するというママだ。周囲では家庭内で病気の感染が広がり、合わせて3週間ほど会社を休んだ人もいたという。1人目で職場復帰を経験しているとはいえ、新たな課題もあるのだ。

職場復帰の不安や、お互いの業界事情について語り合った

このほか、お互いの会社におけるダイバーシティの考え方について議論したり、上司との付き合い方について考えを共有したりと、まさに"異業種交流"に花を咲かせた参加者たちもいた。自分の意識を「仕事モード」に切り替える一助になっているのかもしれない。

最後に交流会の感想を尋ねてみると、ある参加者は、「それぞれ業界や境遇は違うけれど、不安や仕事に対する思いはみんな同じだと感じ、安心した」と話してくれた。彼女たちはこれからも、Facebookのグループページで交流を続けていくという。職場にまだまだ多いとは言えないワーキングマザーが本音を話せる場所。さらに広がってほしいと感じた。