―― 日本語版Cortanaの開発で難しかった部分、その結果生まれた特徴などはありますか。

日本語版Cortanaは駄洒落を操る

Ash氏「Windowsは、どの国でも、スタートボタンやタスクバーがデスクトップに並び、ユーザーの目的に応じてアクションを起こすというスタイルは共通しています。Cortanaに関しても同じでした。

しかし、国々の文化や生活様式の違いによって、必要なものは異なります。開発面では、再利用可能なパーツを共通化していますが、この部分を重視しすぎると各国の特質を見失いかねません。その上で、国々に合ったカスタマイズを行いました」

石坂氏「例えばメール送信時など、『鈴木さんに~』と『鈴木様に~』では、同じ名前でもニュアンスに変化が生じます。こうした"ゆらぎ"の部分を、MSDで調整しました」

ヤマモト氏「私はユーザーからいただいた情報をサーバー側で処理する担当ですが、一番感じたのは日本語の難しさです。英文は一定のルールに沿って処理できますが、日本語は句読点で文章を区切っても語順の自由度が高いため、処理が複雑なんです。

また、音声認識部分では同音異義語も重要でした。登場頻度が高い語句のピックアップも苦労した点の1つです。この部分は、道半ばといった感じでしょうか。その半面、日本語(言語としての)データはきめ細かく、整理されているため助けられた部分も少なくありません」

マイクロソフトデベロップメント Search Technology開発統括部 業務執行役員のヤマモトジン氏

マイクロソフトデベロップメント Windows & Devices開発統括部 プログラムマネージメントチーム プリンシパルグループプログラムマネージャーの石坂直樹氏

―― 日本語版Cortanaはローンチしたばかりですが、登山に例えると何合目くらいでしょう。

ヤマモト氏「CortanaはWaaS(Windows as a Service)の1つであるため、終わりはありません。一方の機能を向上させると、他方でもバランスを取るため改善の必要が生まれます。その意味で『終わりのないチャレンジ』といえばいいでしょうか」

石坂氏「象徴的なのは『コルタナさん』と発言することを、恥ずかしく感じる現状かもしれませんね。パーソナルアシスタントが受け入れられる時代になると、普通に話しかけても周りは気にしないようになります。そこまで変われば、一定の成功を見たといえるかもしれません」

Windows 10の音声認識言語にも「この言語のネイティブでないアクセントを認識する」という項目を用意し、標準語以外にも一応は対応済みである

―― 日本語の方言についても、Cortanaが理解して、ユーザーと方言でやりとりできるようになるのでしょうか。

ヤマモト氏「まずは標準語にしっかりと対応させるのが、目下の目標です。方言については、イントネーション以外に、言葉の使い方も地方によって異なる部分に注目しています。その点は優先度を上げて対応を進める予定です」