ついにというか、やっとというべきか、東京モーターショーで新型「NSX」が公開され、来年にも販売開始される見込みとなった。発売時期で比較して25年の差がある先代モデルとは、パワーも価格も2倍以上となりそうだ。はたして先代同様の名車となれるか?

東京モーターショーのホンダブースに展示された新型「NSX」

日本の誇るスーパーカー「NSX」がついに復活を果たした。先代モデルの生産終了から10年もの空白を経て、あらゆる意味で別次元へと進化したその姿は、凛々しく、また頼もしくも見える。だが、どんなクルマなのか、どんな評価を受けるのかは、ふたを開けてみないとわからない面がある。

ハイブリッドシステムが新型「NSX」の最大の武器になる!?

新型「NSX」はハイブリッドのパワートレインを手に入れ、最高出力は573PSと先代から倍増した。このスペックは一般的には驚きを持って迎えられているようだが、じつはさほど高い数値ではない。「NSX」のライバルは、先代ではフェラーリ「328」であり、その最高出力270PSに対して、「NSX」は280PSだった。ちゃんと上回っていたのだ。

一方、新型「NSX」のライバルは、現在のフェラーリのラインアップなら「488GTB」となるだろうが、その最高出力は670PS。「NSX」は100PSも負けている。さらにいえば、「488GTB」と並んで直接的なライバルと考えられるアウディ「R8」やランボルギーニ「ウラカン」はともに610PSで、やはり負けている。

あまり数字をいくつも並べることは避けるが、これらライバル3モデルに対して、新型「NSX」は最も重く、最も非力で、公表されている最高速度も一番低い。もちろん価格は飛び抜けて低いが、だから大丈夫とはちょっといえないだろう。

となると、新型「NSX」の最大の武器は、そのハイブリッドシステムということになる。リアに1個、フロントに2個のモーターを使用するこのハイブリッドシステムは、アウディが「R18 e-tron クワトロ」で採用し、ル・マンを席巻したシステムと、あるいはポルシェがその歴史上最速のモデルとして発売した「918 スパイダー」と、基本的に同じものと考えて良さそうだ。

したがって世界初というわけではないが、アウディはこのシステムを市販車に採用していないし、「918 スパイダー」は約1億円という価格で、スーパーカーの中でも別格の存在だ。約1,800万円といわれる新型「NSX」がこのシステムを採用したことは、スーパーカーとしての魅力という意味で十分にライバルを凌駕する付加価値となりうる。また、走りの面でも車重と最高出力のハンディを跳ね返し、サーキットのラップタイムやエキサイトメントでライバルを打ち負かせる可能性を秘めている。

そもそも、ターボエンジンにハイブリッドを組み合わせる新型「NSX」の最高出力は、セッティング次第でどうにでもなる。ライバルを超える数値に持っていくのは不可能ではなかったはずだ。そう考えると、パワーではあえて負けておいて、実際の走りで打ち負かす作戦かとさえ思えてくる。

後で「Type R」を追加し、ライバルを超えるのではないかとの見方もできるが、やはりホンダは不毛なハイパワー争いから距離を置いたのではないだろうか? スーパーカーというカテゴリでは、最高出力や最高速度、0-100km/h加速といったスペックの数字の比較がいまだに大きな意味を持つ。そこへあえて新たな価値を提示しようとしているのだとしたら、いかにもホンダらしい。