今や名所ともなっている「横浜外国人墓地」など、東京周辺にはじっくりと巡ってみたい墓地がある。今回はそんな、休日にわざわざ行ってみたくなる神奈川県と埼玉県の墓地を紹介しよう。

異国情緒たっぷり「横浜外国人墓地」

墓地でありながら、横浜の観光名所のひとつともなっているのが「横浜外国人墓地」(神奈川県横浜市)。洋館を思わせる重厚な門と、そこに並ぶ十字架がいかにも異国を思わせる。

「横浜外国人墓地」は元町中華街などの観光地とあわせて巡るのもいい。(c)flickr: Gnurou

ここは1800年代に開かれた外国人のための墓地。亡くなった水兵を埋葬するため、あの黒船のペリーが埋葬地を江戸幕府に要求したことが始まりだったという。それから現在までに埋葬されたのは40カ国以上、4,400人ほどの外国人とのこと。通常は公開されていないが、3月~12月の土曜・日曜・祭日の12:00~16:00には一般人でも立ち入ることができる。入場の際は200~300円の募金が必要。ただし、雨の日は入れないので注意しよう。

墓石は十字架だったり、石に名前などが刻まれていたりするものがほとんどだが、いつの時代のものなのか、大きな石の棺桶のようなものもある。十字架であっても国によって違う形のものが集まっており、時代や国を超えたお墓がこの墓地にはあるようだ。

なぜか墓地には猫が多いが、ここも同様。特に入り口付近の資料館あたりのお墓には猫がたくさんいる。どうやら猫にも気に入った場所があるようで、細い墓石の上に器用にのってはしっぽをゆらゆら揺らしている。その表情がいかにも「これは私のだ」と言っているようで、相手が猫といえども「そうですか」と言って引き下がるしかなさそうに思える。

場所は元町中華街と港の見える丘公園のあたりにある。墓地散策後の楽しみには事欠かないだろう。アクセスは、横浜高速鉄道みなとみらい線「元町・中華街駅」よりアメリカ山公園経由で徒歩3分となる。

英国庭園を思わせる「英連邦戦死者墓地」

あまり知られていないが、横浜にはもうひとつ、ぜひ訪れてみたい外国人墓地がある。それが、「英連邦戦死者墓地」(神奈川県横浜市)。ここは兵士のための墓地で、第二次世界大戦時に日本で亡くなった兵士ら約1,700人が埋葬されている。エリザベス女王など英国の要人が来日の際に訪れる場所でもあり、過去には故ダイアナ妃、2015年2月にはウィリアム王子が訪問。黙祷を捧げたという。

13ヘクタール(東京ドーム約2.7個分)もの広大な敷地は美しく整えられ、ところどころにはベンチが置かれている。まるで英国の庭園のような風景だ。大きな十字架の碑の前には芝生が広がり、低い墓石が丁寧に並べられている。厳かでありながらほっとひと息つけそうな墓地となっている。

ここにはイギリスだけでなく、アメリカやオランダ、インドの兵士も眠っおり、各国の碑はそれぞれ形が異なる。参観時間は8:00~17:00まで。広いうえに階段や坂道もある。歩きやすい靴で行った方が良さそうだ。アクセスは、JR横須賀線/湘南新宿ライン「保土ヶ谷駅」よりバス「児童遊園地前」下車となる。

あの著名人がここに!「狭山湖畔霊園」

東京からそう遠くない墓地ながら、話題に上がることはまずないであろう「狭山湖畔霊園」(埼玉県所沢市)。ここには、誰もが知る著名人のお墓がある。

特に有名な人としてはシンガーソングライターの尾崎豊、絵本作家のいわさきちひろなど。実は尾崎豊のお墓の中には遺骨は入っていないという。盗難防止のため、東京都内の某所に移されたとのこと。しかし、亡くなってから20年以上経った今でも、彼のお墓にはファンからの花が絶えることはない。

湖畔の霊園というだけあって、ここは狭山湖と多摩湖に挟まれた小高い丘の上にある。豊かな緑に囲まれ、秋には紅葉、春には桜の名所となる。アクセスは西武線各線「西武球場前駅」より徒歩10分となる。

古いけどお墓「吉見百穴」

同じく埼玉県に、ちょっと変わったお墓がある。「吉見百穴」(よしみひゃくあな)(埼玉県吉見町)だ。お墓というより遺跡なのだが、なかなか面白いので紹介したい。

「吉見百穴」も興味深い"お墓"である。(c)flickr: wellflat .

吉見百穴は6世紀~7世紀に造られたといわれているお墓で、こんもりとした丘に無数の穴が開いているというもの。現在は遺体などはないが、入れそうな位置にあるものは実際に入ってみることができる。広めの穴には削って作られたベッドらしきものがあり、おそらくそこに遺体が安置されたのだろうと想像してみると少々背筋が寒くなったりするかもしれない。

また、ここには第二次世界大戦中に軍需工場として使われるはずだった巨大な洞窟も残されている。薄暗い電球を頼りに中を進んで行くのだが、ほのかに照らされている岩肌を見ているだけでも結構不気味。洞窟は奥へと長く続いているものの、途中から格子があって入れないようになっている。その先には一切電気がないため、まさに闇といったところだ。

アクセスは東武東上線「東松山駅」からバス「百穴入口」下車。なお、入園には300円が必要となる。

お墓は亡くなった人の眠る場所だが、生きている人が憩いを感じられる場所であってもいいかもしれない。あくまで故人を尊重しつつ、散策を楽しんでみたい。このほか、東京都内の墓地を巡ってみたくなったら「東京都にある霊園探訪! ハチ公に寄り添われた上野博士にアートな岡本太郎も」もあわせてどうぞ。

筆者プロフィール: 木口 マリ

執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスに綴ったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。