2011年の東日本大震災以降、東北地方で「児童の肥満」が深刻な問題となっているという。なかでも福島県は、小学校の計4学年(小1、小2、小4、小6)で「肥満傾向」の割合が全国で最も多いことが、文部科学省が実施した平成26年度学校保健統計調査により明らかになった。

元来、東北地方は降雪の影響から運動不足になりやすい地域だが、東日本大震災の影響で、子供の「外遊び」が制限されたことも、肥満傾向が増大した要因のひとつだと考えられているとのこと。現に、2014年、福島県保健福祉部子育て支援課が作成した報告書でも「子供の外遊びが減少していることなどによる、子供の肥満傾向の増大、体力低下に向けての対策」が最重要課題のひとつとして挙げられている。

この現状を踏まえ、糖尿病治療薬の開発を行っている小野薬品工業とスポーツで地域社会の振興を図るスポーツNPO「SCIX」(理事長・平尾誠二氏)が共同で、復興支援活動の一環として、福島、宮城、岩手の3県で“子供たちの健やかな体づくりを応援する”プロジェクト「すこやカラダ大作戦」を立ち上げた。

同プロジェクトでは、アスリートや生活習慣病の専門医とともに、継続的に運動することを促進し、その結果を計測する機会を提供することで、「スポーツや運動する楽しさ」を伝えながら食生活や生活習慣に変化を与えていくことを目的としており、2015年から3年間、活動を予定しているとのこと。

すこやカラダ大作戦 in ふくしま

3月22日、福島県会津美里町で「すこやカラダ大作戦」の第一弾となる「すこやカラダ大作戦 in ふくしま」が開催された。この日、同町の高田体育館に集まったのは、元バドミントン日本代表の潮田玲子さん、フリースタイルフットボーラーの徳田耕太郎さん、北京五輪トランポリン日本代表の外村哲也さんらトップアスリート。

午前10時30分、ゲストのパフォーマンスから始まった同イベントでは、トランポリンの外村さんが世界でも限られた選手のみが可能だという「3回宙返り」を披露し、子供たちは大興奮。バドミントン、フリースタイルフットボール、トランポリンの妙技に目を輝かせた。その後、子供たちは3チームに分かれてトップアスリートのレクチャーを受け、それぞれの競技を楽しんだ。さらに、会場内には「身体&体力測定コーナー」が設けられたほか、保護者向けの「健康セミナー」が催された。

「すこやカラダ大作戦」を主催する小野薬品工業の相良暁代表取締役社長は「子供たちの肥満が問題になっている東北で、私達に何かできる事はないかと思い、この活動を始めました。今日、子供たちの熱心さを目の当たりにして、これから3年間、福島、宮城、岩手で展開していく自信が持てました」と語る。

97名の児童がスポーツに親しみ、大きな盛り上がりを見せたこの日の高田体育館。イベント終了後、保護者たちに話をきくと「プロのアスリートの方から直接とても丁寧に指導していただいて、子供にとって本当に貴重な経験になったと思います。親である自分も、もっと体を動かしたいという気持ちになりました」と振り返った。また、参加した小学2年生の女子児童は「いままでバドミントンをちゃんとやったことがなかったけど、潮田さんがとても優しく教えてくれたので楽しかったです」と満足した様子だった。

なお、同プロジェクトでは、3月22日を皮切りに、福島では5月から7月にかけて継続したスポーツに親しむプログラムを実施していく予定とのこと。今後3年間、スポーツを通して東北の復興を支援する「すこやカラダ大作戦」。取り組みの成果として「児童の肥満」がどのように改善されていくか注目していきたい。

(本折浩之)