新型「WRX STI」と同時に発表されたのが、スバルが新たに提案するスポーツセダン「WRX S4」だ。事前試乗会では、一般道を想定した国際レーシングコースの外周路と、スラローム用の駐車場が試乗コースに指定された。

総合的なポテンシャルの高さが際立つ新型「WRX S4」

フロントマスクは「レヴォーグ」に通じるスバルらしいデザインだ

ミッションにCVT採用、「EyeSight(Ver.3)」も標準装備

新型「WRX S4」のトピックといえば、ミッションにCVTが採用されたことだろう。CVTといえば、一般的には小型車が燃費を稼ぐためのミッションというイメージが強く、スポーツセダンである「WRX S4」にはマッチしていないように感じる。

しかし、実際に運転してみるとまったく印象が違った。まず驚かされたのが即応性の高さ。アクセルを踏み込むと、トルクフルなエンジンがすぐさま反応する。ベタ踏みしても鈍い加速しかなかった従来的なCVTとは段違いの鋭さだ。オートモードでもトルクコンバータ式のATに引けを取らないばかりか、凌駕するほどの性能を見せる。

「SI-DRIVE」で「S#(スポーツ#)」モードを選択し、8速マニュアルモードに切り替えると、レスポンスはさらに鋭くなる。シフトラグもきわめて少ない。最高出力300PSという、新型「WRX STI」と比べてもわずか8PSしか変わらないパワフル&トルクフルなエンジンも相まって、ワインディングロードなど快適なスポーツ走行を楽しめる環境では、じつに気持ちの良いフィーリングを得られそうだ。サーキットでも十分に通用する。

ミッションはなんとCVT。エンジン性能は新型「WRX STI」に引けを取らない

一方で、スバルによると従来型はもちろん、「BRZ」や他社のスポーツモデルに比べても回頭性は優れているそうで、ジムカーナのようなパイロンを絡めたスポーツ走行環境にもうってつけ。そこではシフト操作のいらないオートモードが活躍するだろう。直進安定性も高く、ロングドライブにも適している。

オートモードなら、渋滞の市街地も苦にならない。足回りは市販車の中では若干固い部類に属するだろうが、その分グリップ性能も抜群で、グレーチングやマンホールをまたいでも滑らず、都市高速のギャップなどで威力を発揮しそうだ。

歩道の段差もしなやかにかわすが、それでも極力マイルドな乗り味を望むのであれば、ビルシュタインのダンパーが採用された「2.0GT-S EyeSight」ではなく、ノーマルのダンパーが採用された「2.0GT EyeSight」を選ぶと良いだろう。個人的にはコツコツ感の少ないノーマルのほうが、より好ましく感じた。

ミッションと並ぶ大きなトピックである剛性の向上も、その進化に驚かされた。高速旋回時にはとにかくブレないし、減速時にも暴れない。回頭性が高いからハンドルがスパッっと決まり、なんだか運転がうまくなったような気にさえさせられる。軽量化と低重心化、空力性能の向上が寄与しているのかもしれない。

室内は嫌味がない程度にスポーティさをアピールしたデザインに

後部座席はやや拡大された。4:6の分割可倒式で、トランクの拡大も可能

ユーティリティの面でも、セダンとして優秀なレベルをキープしている。ホイールベースの拡大がそのまま寄与したリアシートのスペースは、長距離ドライブも苦にならないサイズ。トランクルームもゴルフバッグを4本収められるサイズだ。いまやスバルの看板技術となった「EyeSight(Ver.3)」も標準装備されている。スポーツシートもホールド性が高く、レザー&アルカンターラの組み合わせでもそれは同様だ。

デザイン面も、インテリアではカーボン調パネルやレッドステッチ、レッドイルミネーションメーターなどが、嫌味のないレベルでスポーツ性を強調してる。「レヴォーグ」に通じるフロントマスクも、コンサバなルックスで好印象だ。サイドシルやリップスポイラー、リアバンパーなども、セダンの上質さを失わない範囲の主張にとどめられている。

セダンとしての使い勝手も優秀。トランクはこのクラスとしては広いほうだ

サーキットから市街地まで、万能にこなせそうな新型「WRX S4」。セダン好きの筆者にとって、個人的に非常に「ハマるクルマ」だった。走りから使い勝手まで、過不足のないスペックと装備でまとめられており、総合的なポテンシャルはきわめて高い。老若男女問わず、多くの人々に愛される1台になりそうなモデルだと感じた。