スポーツ写真として珍しい撮影方法&アングル

次に、クリス・マクグラス氏がコメンテーターとして登場。同氏は一般ニュースの部で1位を受賞したが、その授賞式会場において、ほかの写真家から作品に隠されたバックストーリーを聞くことができたという。

同氏が最初に紹介したのは「スポーツ・フィーチャー」の部、組写真1位のピーテル・ホルゲション氏(スウェーデン)による作品。陸上女子七種競技の一流選手であるナディア・カサデイ選手が、リンパ腺がんに冒されながらも競技生活の続行を決意するとともに、ホルゲション氏に自身の姿の撮影を依頼したという。同作品には、過酷なトレーニングを続ける様子や化学療法のようすなどが収められている。被写界深度の浅いティルトシフトレンズを用いて、彼女の手術跡や目、足、腕などに焦点を当てていることが特徴的だと述べた。

続いて、「スポーツ・アクション」の部、単写真3位のアル・ベッロ氏(米国/ゲッティ イメージズ)による、全米オープンテニス・男子シングルス4回戦でのノバク・ジョコビッチ選手の写真。これについてマクグラス氏は、夕陽に直接レンズを向けていることと広角レンズを用いていることの2点がスポーツ写真としてはとてもユニークで、かつ報道的だと語った。また、「スポーツ・アクション」の部、組写真3位のクイン・ルーニー氏(オーストラリア/ゲッティ イメージズ)がオーストラリア水泳選手権での3枚の組写真の特徴として「写実的」であることを挙げ、曲線や光を効果的に使ってフォームの美しさを表現していると説明した。

「スポーツ・フィーチャー」の部で受賞した2つの作品について説明する、クリス・マクグラス氏

その後、片岡氏が「現代社会の問題」の部、組写真3位のマーカス・ブリースデイル氏(英国/ナショナルジオグラフィック誌)による、捕鯨船に引き上げられるクジラの写真について、諸般の問題で消滅しつつあるノルウェーのクジラ漁の文化的な意味についてのフォーカスの当て方と、その独特なアングルの評価が高かったことを明かした。

そしてマクグラス氏が「自然」の部、組写真1位に輝いたスティーブ・ウィンター氏(米国/ナショナルジオグラフィック誌)がロサンゼルス・グリフィス公園で撮影したクーガー(日本では「ピューマ」と呼ばれる)の写真について、カメラマンがシャッターを押して撮られたのではなく、箱の中に設置したカメラが赤外線センサーに反応して自動的に撮影される装置によって撮影されたものだと説明。また、撮影者から聞いた話として「この装置は1年間ほど設置されていたが、この場所がジョギングコースになっており、ランナーが横切るたびに赤外線センサーに反応してシャッターが押されていた」、「酔っぱらいが写っていた」などの面白いエピソードを紹介し、聴講者を和ませた。

「一般ニュース」の部、組写真1位を受賞した自身の作品について、撮影現場のリアルな状況やエピソードなどを交えて解説するクリス・マクグラス氏