消費税の引き上げ分は完全に価格転嫁された。総務省が発表した2014年5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコア指数)は前年同月比3.4%上昇した。消費税引き上げがあった4月(前年比3.2%上昇)に続き、高い上昇率となった。

消費増税が物価に与える影響は、5月で+2%と推定されている。消費増税の影響2%を除くベースでは、5月のコア消費者物価は前年比1.4%上昇したことになる。3月時点での上昇率(前年比1.3%)を若干上回る。

(出所:総務省)

デフレ脱却を政策目標としてきた政府と日本銀行は、やれやれ一安心といったところだろう。ただし、消費者にとっては必ずしもうれしい話ではない。賃金の平均が3.4%上がっているわけではないからだ。

今回、価格転嫁がスムーズに実現した背景は、2つある。

  1. 国内景気が好調であったこと。中小企業まで好景気が波及したとはいえないものの、大企業景況感でみると国内景気は好調で、値上げが通りやすかったと言える。

  2. 価格転嫁がきちんと実行されるように、政府が目を光らせていたこと。「消費税転嫁対策特別措置法」を2013年10月から施行し、転嫁促進をはかっていた。この法律で、大規模小売業者が消費税増税分を価格転嫁しないで、その分、納入業者に値引きを強制する行為は違法とされた。

政府が旗振りをして、消費税転嫁を進めた効果は意外に大きかった。大手小売業は4月に値上げをしなかったら、中小納入業者に値引きさせてないか調査対象になりかねないからだ。便乗値上げでも何でも、とにかく値上げしておけば文句を言われないので、今回は思い切って値上げを決断したところが多かった。

1997年に消費税が3%から5%に引き上げられた時は、今とは逆の状況だった。政府は「便乗値上げは許さない」を旗印にしていた。この時は、増税分を上回る値上げをする業者が、やり玉に挙がる傾向があった。

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。