まとめと考察

とりあえず「よくもまぁこんな製品を作ったな」というのが正直な感想である。確かにAMDが言うとおり、性能的にはハイエンドである。また4K解像度でもそれなりに使える事は確認できた。

もちろん幾つかのベンチマーク結果を見ると、特に4Kでのもたつきが気になるが、これは4K解像度で描画オプション最高にしていることも理由の一つである。そもそも負荷を掛けるのが目的だから、4Kであろうともテストは描画オプション最高のままで実行している。

だが、現実問題4Kで例えばFSAAをフルに掛けることでどこまで描画が改善されるか、というのは一つの謎であって、特に筆者の環境の様に24inchなんぞで4K表示にすると、もうFSAAの有無なんて肉眼で確認できないレベルになる。であれば、もっと描画オプションを落としても現実にはあまり不利ではないだろうし、そうすればもう少し性能が上がると思われる。その意味では、4K解像度に対応したビデオカードというのも嘘ではないと思う。

またNekechuk氏の言っていた「HDで使うのは侮辱だと思う」も得心が行く。この製品の性能面でのアドバンテージが明確に出るのは、2048×1536pixel以上である。それ以下の解像度であれば、R9 290Xを使った方がいいだろう。そんな訳で、AMDのメッセージにはおおむね嘘は無い事は確認できた。

問題は「嘘は無い」≠「正しい」という話であって、そら嘘はないだろうけど、だからといってこれはないだろうよ、というのはベンチマーク中に常に感じていたこと。消費電力もすごいし、当然発熱も半端ではない。外気温が15℃切ってる日に窓をあけた状態でベンチマークを掛けて、室温が30℃を超えるのはちょっと問題がありすぎる。余りにも力技過ぎる、と思うのは筆者だけではあるまい。

ところでこの製品、この原稿を書いている4月8日早朝の時点で価格が未定のままである。Nekechuk氏曰く「競合製品(GeForce Titan Zの2999米ドル)みたいな無茶な価格ではない」とはしているが、それ以上の情報はない。

普通に考えると、R9 290Xの北米価格が549米ドルだから、これがダブルで1098米ドル。さらにPCIeスイッチや液冷クーラーの分があるし、Memoryがやや高速品だから、200~300米ドル位の上乗せはありそうだ。すると1299米ドルとか1399米ドルあたりが怪しいところになる。実のところ1299米ドルなら、エンスージャストなら買うかもしれないという気はする。

実際この製品、AMDのFX-9590なんかと同様に、そもそも大量に販売するつもりがあるようには思えないから、1999米ドルとかいう値付けも理論上は可能だろうが、さすがにもう少し値段を下げるだろう。まぁどんな値段であっても筆者は欲しいとはちょっと思えないが……と思ったらやっと価格情報が提示された。米国価格で1499米ドルとの事。思ったよりマージンが乗ってる気はする。

というか、最近のAMDはちょっとオーバークロック/オーバーパワー路線に走りすぎである。同社CTOのPapermaster氏は事あるごとに"Performance per wattが重要"と説いているわけで、もうちょっと構成を考えてもいいんじゃないかなぁ、という筆者の感想をもって考察とさせていただきたい。