銀行から高級遊郭まで!　大阪府大阪市にあるレトロ建築のカフェ&レストラン

大阪が大都市として最も栄えていた大正～昭和初期、経済・産業の中心地であった北浜や船場界隈には、西欧の様式を取り入れた近代建築ビルが数多く建てられた。そうしたビルのいくつかは現在も残っており、レストランやカフェとして活用されている。そんな大阪のレトロ建築の佇(たたず)まいが楽しめる飲食店を紹介しよう。

昭和6年築の銀行を利用したレストラン

大阪市・南船場の堺筋沿いに、石貼りの外観のバロック・新古典主義様式のビルがある。昭和6年(1931)建造の、旧・川崎貯蓄銀行大阪支店だった建物で、18世紀頃のヨーロッパを思わせる佇まいだ。

現在、このビルはレストラン「堺筋倶楽部」となっている。軒高の高い吹き抜けの営業室だった1Fホールはイタリアンレストラン「アンブロシア」に。重い扉の奥の旧金庫は、ワインセラーとして活用されている。そして2、3Fのフレンチレストラン「リストワール」では、元々役員室や電話交換室だった部屋を利用した個室で食事ができるようになっている。

●Information
堺筋倶楽部アンブロシア
住所:大阪市中央区南船場1-15-12
営業時間:ランチ11:30～14:00L.O.、ディナー18:00～22:00L.O.
定休日:不定休
料金：イタリアンランチ1,260円～、ほか
アクセス：地下鉄長堀橋駅から徒歩約3分

英国式アフタヌーンティーを明治期の洋館で

大阪の金融街、北浜の大阪証券取引所向いにあるレンガ造りの小さな洋館。これは明治45年(1912)に、株仲買商(証券会社)の商館として建てられたビルで、国の登録有形文化財にも指定されている。戦後、商社として利用された後、廃ビルとなっていたところを現オーナーによって、当時の雰囲気を残しながらリノベーション。純英国式ティールーム「北浜レトロ」として営業している。

1Fは自家製カントリーケーキ、紅茶、英国雑貨の販売フロア、2Fが純英国スタイルのティーサロン。サロン北側の窓からは土佐堀川越しに中之島公園のバラ園を眺めることができ、優雅なひとときを過ごせる空間として人気を博している。

●Information
北浜レトロ
住所:大阪市中央区北浜1-1-26
営業時間:平日11:00～21:30、土日祝11:00～19:00
定休日:盆、年末年始
料金：アフタヌーン・ティー(ケーキ・スコーン2種・ドリンク)2,100円、ほか
アクセス：地下鉄・京阪北浜駅から徒歩約1分

大正10年築の個人宅応接間を利用

同じく北浜に、外壁を覆った蔦(つた)の緑が目を引くビルがある。大正10年(1921)築の青山ビルという建物で、元は食材店を営む野田源次郎氏の個人邸宅だったもの。スペイン調の外観を持つビルで、現在は先述の通り蔦がビッシリからまっているが、それがまたノスタルジックな雰囲気を醸し出している。

このビルの1Fに「丸福珈琲」という喫茶店がある。当時の邸宅の応接室があったスペースを利用しており、店内には暖炉や書棚、そして天井のブドウのレリーフなどが当時のまま残されている。ちなみに、この「丸福珈琲」自体も昭和9年(1934)創業という老舗の喫茶店(本店は難波・千日前)で、独自の製法による濃厚でコク深いコーヒーはコーヒー通の間で有名である。

●Information
丸福珈琲 北浜店
住所:大阪市中央区伏見町2-2-6 青山ビル1F
営業時間:平日7:30～20:00、土9:00～18:00
定休日:日、祝日
料金：ブレンドコーヒー470円、ほか
アクセス：地下鉄・京阪北浜駅から徒歩約1分

大正期の高級遊郭をそのまま利用

最後はガラリと趣が変わって、全くビジネス街とは無縁の和風建築。大阪市の西成区に、かつて遊郭だった飛田新地という場所がある。その中に位置する大衆料亭「鯛よし百番」は、大正7年(1918)開業の最上級遊郭の建物をそのまま利用しているのだ。

国の登録有形文化財となっている建物は、複数の宮大工に腕を競わせて建築されたもので、屋内の梁や柱には様々装飾が施されている。また、アールデコ様式の照明器具など、ところどころ和洋折衷となっており、襖(ふすま)に描かれた龍や牡丹、床や壁の赤や紫といった色使いなどが、妖艶な雰囲気を醸し出している。

料亭としては、全室2名～35名用の個室で完全予約制。5,000円前後の値段設定で、各種会席や鍋のコースが用意されている。

●Information
鯛よし百番
住所:大阪市西成区山王3-5-25
営業時間:17:00～23:00
定休日:月
料金：会席4,200円～、ほか
アクセス：地下鉄動物園前駅から徒歩約10分

今回は、店内も建築当時のまま、もしくは当時の様子が多く残っているお店に絞ったが、その点にこだわらなければ、歴史的なレトロビル内で営業している飲食店などが大阪市内にはほかにもまだある。大阪で食事やお茶をする際には、そうした大正～昭和初期の佇まいを残す建築の見学も兼ねて、お店探しをしてみてはいかがだろうか。