『半沢直樹』『あまちゃん』で湧いた2013年を締めくくる秋ドラマが終了。人気作の続編『ドクターX』、『リーガルハイ』が独走ワンツーフィニッシュを飾る中、『夫のカノジョ』『家族の裏事情』は、視聴率5%を下回るという大惨敗に終わるなど、明暗がハッキリ分かれた。

『ドクターX』で主演を務めた米倉涼子

さらに象徴的だったのは、長年ドラマ界を支えてきたジャニーズ勢の主演ドラマが全て不振だったこと。その理由はいったいどこにあったのか? どの作品のどこが優れていたのか? 「視聴率や俳優の人気は一切無視!」の連ドラ評論家・木村隆志がその理由を探り、ガチ採点する。

【ポイント1 『ドクターX』が大ヒットの理由】
堺雅人、木村拓哉の新旧視聴率男が、米倉涼子の『ドクターX』にそろって完敗。視聴率、話題性ともに大きく差を開けられた。

『ドクターX』がここまでウケた理由は、[1]テレ朝最強の木曜21時枠と、各局裏番組の不振 [2]鉄板人気の医療モノにエンタメ性をプラス [3]米倉涼子のハマリ&痛快キャラ [4]西田敏行、三田佳子、遠藤憲一ら演技派ベテラン脇役 [5]「失敗しないので」「いたしません」「御意」の決めゼリフ連発(SNSの話題活性化) の5つ。これだけ条件がそろえば、記録にも記憶にも残る作品になって当然なのだ。堺雅人の演技力は素晴らしかったが、超強力布陣で臨んだ米倉涼子が有利だったと言える。

【ポイント2 ジャニーズ主演ドラマ低迷の理由】
錦戸亮の『陰陽屋へようこそ』と亀梨和也の『東京バンドワゴン』は視聴率1桁、草なぎ剛の『独身貴族』と木村拓哉の『安堂ロイド』はなんとか同2桁という極めて厳しい結果になった。『半沢直樹』の大ヒットで演技派俳優たちの実力が見直され、アイドルの主演ドラマは「それだけでスルーする」人が続出。特にアイドルが複数キャスティングされた作品への風当たりは強く、若年層以外を取り込めなくなっている。さらに彼らのファンは、「むしろ録画してじっくり楽しむ」、あるいは「映像よりライブなどの“生”を重視している」人が多く、視聴率に反映されない状況が進んでいる。

【ポイント3 『夫のカノジョ』だけでない、惨敗ドラマの理由】
第5話が3.0%という超低視聴率の『夫のカノジョ』ばかりが叩かれていたが、『家族の事情』平均4.5%、『東京バンドワゴン』同7.1%、『ダンダリン』同7.5%、『刑事のまなざし』同8.0%、『陰陽屋へようこそ』同8.7%と、2桁にすら遠く及ばない作品が続出。残酷なまでに明暗が分かれる時代になった。 その理由は、①同枠ドラマバトルの悲劇(『夫のカノジョ』『ダンダリン』 ②先述したアイドル主演への反発(『東京バンドワゴン』『陰陽屋へようこそ』) ③大家族下町ホームドラマへの“今さら感”(『東京バンドワゴン』『家族の裏事情』) ④20時代ドラマの拒否反応(『家族の裏事情』『刑事のまなざし』)。特に④は深刻。『刑事のまなざし』は素晴らしい作品だったが、もはや「20時代に連ドラは重い時代」になり、ファミリー層だけでなく、中高年も気軽に見られるバラエティに流れつつある。

今クールの最優秀作品に挙げたいのは、乱発される刑事ドラマの中、“静”の演出に徹した感動作『刑事のまなざし』。脚本・キャストも含め、低視聴率が信じられないほどの秀作だった。『リーガルハイ』は主演・堺雅人×脚本・古沢良太らしいハイクオリティだったが、過剰演出と脇役にやや不満が……。ベタなお仕事青春モノの『ミス・パイロット』はツッコミどころだらけだが、連ドラの王道をゆく爽快感があった。

一方、ウラ最優秀作品は、『家族の裏事情』。「裏事情」とは名ばかりで、使い古された「よくある事情」だった。『安堂ロイド』は強引な設定で視聴者を置き去りに、『独身貴族』は予定調和の連続だったのが残念。SMAP勢は、一度脇役になった方が、魅力を引き出せるような気がする。

【最優秀作品】『刑事のまなざし』 次点-『リーガルハイ』
【最優秀演出】『刑事のまなざし』 次点-『ドクターX』
【最優秀脚本】『リーガルハイ』 次点-なし
【最優秀主演男優】椎名桔平(『刑事のまなざし』) 次点-堺雅人(『リーガルハイ』)
【最優秀主演女優】米倉涼子(『ドクターX』) 次点-堀北真希(『ミス・パイロット』)
【最優秀助演男優】渡部篤郎(『クロコーチ』) 次点-遠藤憲一(『ドクターX』)
【最優秀助演女優】平岩紙(『独身貴族』) 次点-新垣結衣(『リーガルハイ』)

ちなみに、【ウラ最優秀作品】は、『家族の裏事情』 次点-『安堂ロイド』