第3章 Windows 8.1の改良点/インタフェース - SkyDriveと融合したエクスプローラー

Windows 8.1は来るクラウドコンピューティングを実現するため、自社が運営するオンラインストレージサービス、SkyDriveをOSに内包した。その結果としてエクスプローラーのナビゲーションウィンドウに「SkyDrive」と言う項目が新たに加わっている。それに伴い、従来のライブラリは初期状態で非表示となり、各ライブラリは「PC」内部に移動するなど、細やかな変更が加えられた。この他にも些末な変更点だが、Windows 8で用いられていた「コンピューター」と言う名称も、Windows 8.1では「PC(英語版は「This PC」)」へ改称している(図092~093)。

図092: こちらは「PC」を開いた状態。新たに「フォルダー」と言うカテゴリが加わり、各ライブラリやデスクトップなども参照可能になった

図093: エクスプローラーで「SkyDrive」を開いた状態。同オンラインストレージ上のファイルが並ぶ

昨今の動向を見る限り、MicrosoftはSkyDriveを今後ユーザーの重要なデータ保存領域になる、と重要視しているようだ。インターネットへの常時接続が一般的となり、ネットワークスピードの向上した現状を踏まえれば、エンドユーザーがオンラインストレージを活用するようになるのは自然の流れだろう。Windows 8ではデスクトップアプリ版SkyDriveアプリをインストールすることで、ローカルストレージとオンラインストレージの同期を行っていたが、Windows 8.1はファイルの一部分を同期する「Placeholder(プレースホルダー)」と言う機能を搭載している。

Windows 8.1はアイドル時に、SkyDrive上に保存したファイルのプロパティ情報とサムネイル情報を持つPlaceholderファイルを、SkyDriveフォルダー(%USERPROFILE% \ SkyDrive)に格納。エクスプローラー上ではPlaceholderデータを元にファイルがローカルストレージに存在するように見せかけているのだ。一見すると画像や動画ファイルのサムネイル表示だけでも時間がかかるように思うが、事前にサムネイル情報を保持することで、問題を回避している(図094~095)。

図094: SkyDriveフォルダーをコマンドプロンプトから参照した状態。Placeholderのメタデータのみ保持するファイルは、ファイルサイズが括弧で囲まれている

図095: メタデータのみを保持するファイルのプロパティダイアログ。実際のサイズは84.5メガバイトだが、ディスク上のサイズは44キロバイトだ

ポイントはオンライン上にあるファイルの視聴や編集だ。文書ファイルや画像ファイルなどサイズの小さいファイルはすぐにダウンロードが始まり、各種操作が可能になる。ただし、動画ファイルなどサイズの大きいファイルはダウンロードしながら視聴するため、途中で再生が止まってしまうこともあった。このあたりはコンピューターやネットワーク帯域の状態に左右されるのだろう(図096)。

図096: 再生中に図102と同じMP4形式ファイルのプロパティダイアログを再確認すると、ディスク上のサイズが増加し、順次ダウンロードが行われていることが確認できる

その一方でモバイル型コンピューターのように、外出先などネットワーク接続環境を得られない場面も想定されている。その点をカバーするのが、Windows XP時代から用いられていた、ファイルサーバー上のファイルを非ネットワーク接続環境でも利用可能にする「オフラインファイル」と言う機能だ。ちなみにWindows 8.1でも、オフラインファイルの管理や同期を管理する「同期センター」がコントロールパネルに用意されているので、そのまま引き継がれている。

このロジックを利用し、エクスプローラーと融合したSkyDrive上のファイルを事前にフルダウンロードすることで、オフライン環境でもファイルを利用することを可能にした。下記に示した図は2013年6月に開催された開発者向けカンファレンス「Build 2013」のプレゼンテーション資料だが、Metered Network(従量制ネットワーク)とオフライン状態では動作が異なる。海外では一般的な従量制ネットワーク利用時に、無駄な使用量が発生しないための仕組みを用意したのだろう(図097)。

図097: ネットワーク状態によって異なるファイル操作の状態(Build 2013の資料より)

エクスプローラーでSkyDriveのファイルを参照する際、ファイルやフォルダーのコンテキストメニューに<オフラインで使用する>と言う項目が加わり、前述したダウンロードを実行する。ダウンロード済みの場合は項目名が<オンラインでのみ使用する>に変化し、ダウンロードデータの破棄が可能だ。同操作はコンテキストメニューからのみ実行可能で、リボンに同様のボタンは用意されていない。

また、これらのダウンロード済みデータを制御するコマンドは用意されておらず、「ディスククリーンアップ」にも同様の項目は存在しなかった。個人的には不要なデータをローカルストレージに保存することになるため、Microsoftには今後の改善点としてリクエストしたい。また、このようにSkyDriveがWindows 8.1と融合したことで、デスクトップアプリ版SkyDriveアプリにあった、特定のフォルダーのみ同期対象にするといった設定項目は「PC設定」にも用意されていなかった(図098)。

図098: オフライン環境でもファイルを利用可能にするため、コンテキストメニューに<オフラインで使用する>が用意されている

筆者は外出先でコンピューターを使用する機会が少ないため、現時点ではさほど利便性を感じていないが、オンラインストレージの内容がローカルデバイスと同じような感覚で操作できるようになったのは大きな進化と言える。もちろんファイルサイズが大きいものに対しては、前述したように操作までに遅延が発生するものの、数メガバイト程度であればさほど気になるものではない。

SkyDriveとOSの融合はWindowsストアアプリにも適用されている。同アプリ上でファイルを選択するファイルピッカーは、SkyDriveがリスト項目の先頭に移動。Windowsストアアプリ版SkyDriveには、設定チャームのオプションにオフライン環境でファイルを利用するための項目が用意されていた(図099~100)。

図099: 「メール」のファイルピッカーでは、SkyDriveがリストの先頭に置かれている

図100: Windowsストアアプリ版SkyDrive。オプション設定にオフラインアクセス機能が加わっていた