「家族関係の中心」

「親の生活費よりも子供の教育費にお金をかけるほうが良い」

博報堂生活総合研究所はこのほど、「家族に関するアンケート」の結果を公表した。

同調査は、日本の家族の現状とその行く末を見極めることを目的に、1988年より、98年、2008年と同一質問内容で実施している。調査設計は、首都圏40km圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)に住む、妻の年齢が20歳から59歳まで、夫婦が同居しているサラリーマン世帯が対象。5月23日から6月17日にかけて、訪問留置自記入法で実施し、1,000世帯のサンプルを得た。

家族の重心はより「子供」へ

家族の中心は、以前から「夫婦中心」よりも「子供中心」が高かったが、2013年はさらにその数値が伸びた。また、お金の使い道についても、「親の生活費よりも子供の教育費にお金をかけるほうが良い」という意見は上昇傾向にあったが、さらに子供寄りに変化した。

妻の充実させたい時間について、2008年まで上昇を続けていた「自分のプライベートな時間」が、はじめて減少した。「子供と一緒の時間」はこの5年間で+9ポイントと伸び、夫を上回った。「子供を早く親の手から離すほうが良い」と考える妻が減るなど、妻が「個」の時間を抑えても、子供との時間を大切にする傾向が生まれ、子供の将来に対する心配が強まっているようだとしている。

「いま充実させたい時間」

「子どもはできるだけ早く親の手から離すほうが良い」

子供との関係は、「友達みたいな親子関係であるほうが良い」が夫婦とも減少。また、「親子はけじめをつけた上下のある関係が良い」も、妻が一時期減少していたが、1998年以降上昇に転じ、この5年間でもわずかに上昇した。

「子どもとは友達みたいな親子関係であるほうが良い」

「親子はけじめをつけた上下のある関係が良い」

夫婦は、お互いの役割がクロスオーバー

夫婦関係について、25年前はまだ一般的だった「亭主関白」は減少し、今では「友達夫婦」が主流になった。発言権に関してみると、「夫の発言権は強い方が良い」が弱まり、「妻の発言権は強い方が良い」と考える傾向が夫婦ともに強まる結果となった。夫婦関係はフラットになり、家庭内における妻の存在感が相対的に高まっていると分析している。

「現実の夫婦像」

「夫婦の発言権」

「夫も家事を分担するほうが良い」と考える夫は一貫して増え、夫婦間の意識差は今回最も縮まった。さらに、実際の行動でも、以前から比較的多く見られる、"家の戸締まり"や"ゴミ出し"に加えて、"食事の後片づけ"、"食事のしたく"、"洗濯など"、いわゆる「家事」の領域においても、夫の参加が増えていることがあらわれた。

「夫も家事を分担するほうが良い」

「夫の家事への参加("よくある"と答えた人の率)」

子どもへの心配、東日本大震災が影響か?

東日本大震災によって、自分の家族に対する考え方や行動が「変わったと感じることがある」人は、全体で31%となった。特に妻のほうが、変わったと感じる人が多く、41%だった。自由回答による妻が"変わったと感じること"は、子供に関する内容が多くなった。この結果から、調査では「子供の将来を気にかける妻が増えていることに、東日本大震災も影響を及ぼしているのかもしれない」としている。

「東日本大震災の家族への影響~自分の"家族に対する考え方や行動"」

同調査の結果、今の家族は「時間、お金、意識」の重心をより「子供」に置く傾向が強まっていることが分かった。同研究所はこの現象を新しい家族像として「子供信託家族」と新たに名付けた。同調査ではこのほかに、「自身と親族の関係」などについても行っており、詳しくは同研究所のWEBサイトで閲覧することができる。