ところで、こんなレンズ(こんな、なんて言い方は失礼だけれど)、いったい誰が買うのだろうか。

「プロの方が多いですが、ハイアマチュアで購入される方もけっこういますね」とのことだ。なんと豪気な買い物だこと。で、用途は何なんですか?

「やはり、近づけないもの、ですね(そりゃそうだ)。野鳥ですとか、モータースポーツが多いですね」

そうだ、野鳥だ! 川の中洲の青緑色の鳥だ! モータースポーツも納得できる。鈴鹿にF1を観にいくと、たしかにこういうのがズラーッと並んでいる。プロもいるだろうけどハイアマチュアっぽい人も多い印象だし。

「それから、アフリカの野獣を撮られる方もいるようです」

アフリカの野獣? ライオンとかチーターとかジャッカルとかですか? たしかにそりゃあ近づけない。食われる(かもしれない)。

じゃあ、話はともかくさっそく撮ってみましょう。フルサイズセンサー搭載の「EOS-1D X」(これも借り物)に800mmを取り付けてみる。ガッシリした高級一眼レフに長尺のレンズ。まさに、である。これ、これ。子どもの頃のあの憧れを急激に思い出した。

シャッタースピードがある程度速ければ手持ちでも撮れるけど、たぶん普通はレンズ自体に三脚を装着して撮るスタイルなのだろう。野鳥や野獣を手持ちでは撮らないだろうし、F1でもそうだと思う。でも今回の試し撮りは、三脚がなかったので手持ちでやってみた。

カメラに取り付けると、レンズのほうがはるかにデカいから、見た目にはちょいアンバランス。レンズの先っぽにカメラが居候しているイメージである。こういうシーン、もちろん目撃したことはあるわけだけど、自分がいざ試すと、マウントのところから外れるんじゃないかとちょっと心配になる。

キヤノンの一眼レフは、以前のエントリークラスはプラスチックマウントを採用していたけど、現在のマウントはこの大きさのレンズでも問題なく支えられるとのこと。「EOS Kiss」に付けても大丈夫なのである。

「EOS-1D X」に「EF800mm F5.6L IS USM」を、「EOS Kiss X6i」に「EF-S18-135 IS STM」を取り付けて並べたところ。べつに何か言葉を書く必要はないでしょう。写真を見ればすべてが理解できると思う。「EF800mm F5.6L IS USM」はクルマでなければ持ち運べない……とまでは言わないけれど、手で持って電車やバスで運ぶのはちょっと怖いかも

参考までに、「EOS M」に「EF800mm F5.6L IS USM」を取り付けてみたところ。ここまでいくと、カメラが本当にオマケにしか見えない……

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