7月5日、医薬品会社の日本イーライリリーによるプレスセミナー「骨折と家族介護の実態~母の痛みは、家族の痛み~」が行われた。同セミナーに登壇した鳥取大学医学部保健学科の萩野浩教授は2012年6月9日~10日、高齢の母親をもつ娘4,700名対して「母親の健康と介護に関する意識調査」を実施。高齢者が感じる腰痛は、骨がスカスカになる骨粗しょう症によって起きる骨折が原因である可能性もあるが、半数以上の娘が母親の腰痛に適切な対応ができていないことが判明した。

鳥取大学医学部保健学科の萩野浩教授

一度骨折すると、また骨折する可能性は4~5倍にも

「まずみなさんに3つの質問をします。平均的な50歳女性が死ぬまでに大腿骨近位部を骨折する可能性はどのくらいだと思いますか? また、一度骨折すると再度骨折する可能性はどのくらい高くなるでしょうか? そして、運動することで骨折は予防できるでしょうか?」。萩野教授によるセミナーはこの質問から始まった。寝たきりの原因になりやすい大腿骨近位部の骨折は、50歳女性で5人に1人。過去に骨折している人はまったく骨折していない人に比べ、今後骨折する可能性は4~5倍にも高まり、医学論文では運動することで骨折を予防できるとは証明されていないという。

家族が気づける骨折の症状として、身長低下や腰の曲がり、腰痛が挙げられる

萩野教授が実施した「母親の健康と介護に関する意識調査」では、「母親が訴えている痛み」において、「腰(33.0%)」「背中(9.0%)」と約4割の人が母親の腰痛を認識しているものの、半数以上が母親の腰痛に対して何もしていないことが分かった。また、腰痛の原因を「高齢者だから(68.6%)」と認識しており、「骨折」と回答した人は26.4%であった。腰痛の原因の1つである骨粗しょう症は無症状で進行することが多く、椎体骨折では激しい腰痛を伴う場合もある。身長低下や腰の曲がり、腰痛の有無に家族が気づければ、骨折の早期発見・治療につなげることができるという。

介護者の7割弱が同居家族であり、介護負担が家族の生活を変えている

10人に1人は骨折・転倒で寝たきりへ

高齢労働省の調べによると、介護が必要になった10人に1人は骨折・転倒が原因という。また、寝たきりになるとうつ病や認知症を発症する可能性も高まり、介護の負担は大きくなる。実際に上記の意識調査で「母親の介護に必要なった際に心配なこと」を尋ねたところ、「自分の生活スタイルを変えなければならないこと」が60.9%でトップ、次に「精神的な負担が生じること(58.1%)」が続いた。しかし、「母親の介護予防」として「定期的に医者に診てもらうことをすすめる」と答えた人は44.5%と一番多かったものの、「特になにもしない」という人も25.7%と多い。

家族が心身ともに健康で過ごすためにも、ただの腰痛だと見逃がすことなく骨折の有無を専門医に診断してもらうなど、介護につながる痛みに気づくことが大切であるようだ。

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