「レディースコミック」と聞いて、どんな漫画を想像するでしょうか。個人的にはレディースコミックというと"大人女性向けで過激な性描写がある漫画"というイメージが強かったのですが、実際のところは必ずしもそういうわけではないようです。

詳しい説明は省きますが、最近では過激な性描写を含む漫画を「レディコミ」と呼び、そうでないものを「レディースコミック」と呼ぶことが多いのだとか。

そんなレディースコミックに興味を持ったので、電子貸本サービス「Renta!」で探してみると、今まで知らなかった面白い作品がザクザク見つかりました。これを知らずに過ごすのはもったいない! ということで、今回はRenta!でレンタルできるオススメのレディースコミックをご紹介していきたいと思います。

マダム・ジョーカー

『マダム・ジョーカー』(双葉社刊)

ゴージャスで破天荒な財閥マダム・月光寺蘭子が、身の回りで起こるトラブル・事件を豪快に解決していく痛快コメディ。

なんといっても本作の最大の魅力は、上流階級の生活を体験しているかのような非日常感を味わえるところ。リアルな人生ではおそらく僕が一生関わることのないだろう、華やかでセレブな財閥の世界にワクワクさせられます。……もちろん漫画ですし、フィクションなのでリアルではないかもしれません。でも大事なのはそれが本当にリアルかどうかではなくて、"読者目線でのリアリティがあるか"どうかなんです。

その意味では、本作は上流階級だからこそのドロドロした人間関係などもしっかり描かれており、少なくとも"ありそう"と思わせられるだけのリアリティを持っています。このあたりはさすが「シャルトル公爵家シリーズ」などで人気を博した名香智子といったところでしょう。

また、ストーリーも安定して面白い! コメディをベースにしつつ、ミステリーあり、ラブロマンスあり、人情話ありのバラエティ豊かなストーリーには毎回新鮮な驚きがあり、作者の引き出しの多さに感心します。短編から中編が中心というのも読みやすくて良いですね。

そんなセレブな世界を舞台にしたストーリーを引っ張るのは、もちろん主人公の蘭子。彼女が自らの財力・権力・美貌を武器に様々なトラブルを解決に導く様は痛快そのものです。つねに自然体で裏表のない蘭子は、女性のみならず男性から見てもとても魅力的な主人公なんです。

さらに蘭子以外の登場人物もこれまた個性豊かな面々がそろっています。蘭子の2人の子どもたち、亡夫の弟で蘭子に密かな恋心を抱いている斎、名家の娘なのに貧乏な生活を送る蘭子のライバル・藤原さん、八百屋を営む豪快なママ・杉浦さん、蘭子の屋敷で家政婦をしている清里さんなど、等々……いずれも一癖も二癖もある人物ばかりで、彼らの活躍がよりいっそう物語に彩りを添えてくれています。

ゴージャスな上流階級を舞台に繰り広げられる、驚きと笑いに満ちた物語「マダム・ジョーカー」。本稿はレディースコミック特集ではありますが、そういったジャンルの垣根を越えて万人にオススメできる傑作です。

パンジー・パンジー

『パンジー・パンジー』(宙出版刊)

本作は、大人の女性にこそぜひ読んで欲しい漫画です。……まあ「レディースコミック」特集なので当然なのですが、本作は特に"大人の女性"に薦めたいと思いました。特に20代後半から30代くらいの、ちょうど自分の人生について考え始めた時期に読むと、必ず得るものがあるはずです。もちろん男性でも共感できることは多々あるのでオススメですよ。

主人公は35歳独身のフリーライター、香。6年つきあった彼と別れ、仕事先の倒産で失業した彼女は、一大決心をして18年ぶりに故郷・小樽へと戻ります。そこで改めて自分と向き合うことになった香の悩みや迷いは、同年代なら男女問わず痛いほどよくわかるはず。35歳という年齢は、ちょうどそういう時期なのかもしれませんね。

地元の友人との再会、新たな出会い、別れなどを繰り返しながら、香は少しずつ自分の道を見つけていきます。

「人生は、うまくいかないことだらけ。でもそれはそれで悪くない」

本作を読んで、僕はそう思えるようになりました。

まんがグリム童話 毛皮を着た猫

『まんがグリム童話 毛皮を着た猫』(ぶんか社刊)

眼帯をつけた占い師の老婆が狂言回しを務めるオムニバス形式の物語。変わったプレイ専門の娼婦や、浮気夫を殺して埋める妻など、各話にはそれぞれ"哀しい女"が登場し、彼女たちが放つ"匂い"に誘われて老婆はやってくるのです。

老婆は自分が持ち歩いている「クライム童話」を"哀しい女"に教え、それが結果として彼女たちを正しい道に導いたり救ったりすることになります。クライム童話自体はよくできたごく普通の童話に見えるのですが、その内容と現実がうまくリンクする物語の構成はお見事!

基本的には一話完結なのですが、作品全体を通して「老婆はいったい誰で、なぜ旅を続けているのか」という謎があり、読み進めていくとそれが次第に明らかになっていくという流れも面白い。

不満を挙げるなら上下巻で終わってしまっているところでしょうか。面白いだけに、正直短いと思ってしまいました。もっと読みたいんだけど、続きは出ないのかなぁ。