米Intelは5月4日(現地時間)、マイクロプロセッサの量産技術として、トライゲートと呼ばれる3次元構造を採用した新型トランジスタを開発したと発表した。低電圧・低リーク電流のマイクロプロセッサの動作を可能にするという。22nmプロセスで量産予定の同社次世代CPU「Ivy Bridge」(開発コード名)で利用する計画だ。

発表された3次元トライゲート・トランジスタの写真

3次元トライゲート・トランジスタの量産は世界初といい、従来の2次元のプレーナー型トランジスタとは根本的に異なるものとされている。従来の2次元構造のプレーナー・ゲートの代わりに、薄い3次元構造のシリコン"フィン"が、シリコン基板から垂直に立っており、電流の制御は、2次元のプレーナー型トランジスタにおける上面の1つのゲートだけでなく、"フィン"の両側面2つと、上面1つの計3つのゲートによって行うことができる。この追加されたゲート制御により、パフォーマンスを向上するトランジスタON時の電流を大きくし、一方、OFF時の漏れ電流をできる限り小さくすることで消費電力を最小限に抑えており、トランジスタのON/OFF動作を素早く行なうことができるとしている。

従来の2次元のプレーナー型トランジスタとの構造の比較。シリコンフィンによる3面のゲート電極で電流を制御できる

左が従来のプレーナー型トランジスタで、右が今回のトライゲート型トランジスタの写真

ゲートに対して垂直に"フィン"が通っているのがわかる

同社によれば、従来の32nmプロセス技術に基づくプレーナー型トランジスタと比較すると、低電圧で最大37%のパフォーマンス向上を実現できるとしている。これは少ない消費電力でスイッチのON/OFFを繰り返さなくてはならない小型携帯機器にとって、理想的なトランジスタだというが、逆に、同32nmプレーナー型トランジスタと同等のパフォーマンスで実行した場合において、消費電力を半分に抑えることもできると説明している。

今発表にあわせて同社では、3次元トライゲート・トランジスタを利用した22nmプロセス製造の「Ivy Bridge」を搭載した試作PCの動作デモンストレーションも披露している。3次元トライゲート・トランジスタを用いた初の量産プロセッサはIvy Bridgeになる予定だが、今後は将来世代のAtomプロセッサでも、これを用いる計画だという。

まずは今年後半の登場が予定されているIvy Bridgeで用い、さらにAtomの22nmプロセス世代へも利用をひろげる計画