東京証券取引所グループ 代表執行役社長の斉藤惇氏は24日、定例の記者会見において、取引時間延長に関連して検討していた「昼休みの撤廃または短縮」について、昼休みは撤廃せず、現在の1時間30分から1時間に短縮することを決議したと述べた。

東京証券取引所グループ 代表執行役社長の斉藤惇氏

東証では2010年7月26日、斉藤惇社長が記者会見で示した「取引時間の拡大に関するディスカッション・ペーパー」において、(1)昼休みの撤廃または短縮、(2)現物市場における夜間取引の導入、(3)派生商品(デリバティブ)市場におけるイブニング・セッションの取引時間拡大、(4)午前立会開始時間の前倒し、の4つの取引時間の延長案を提示し、これらの案について検討すると発表。同日から9月10日まで、パブリックコメント(意見募集)を実施した。

斉藤氏は11月24日の定例会見の冒頭、「パブリックコメントの結果、日本の取引時間が他の国と比較して短い状況であり、取引時間は延長するべきだとの指摘があるため、東証は市場開設者として幅広い投資者層の取引機会を拡大する観点から、総論として取引時間の延長について前向きに検討すべきであるという立場で考えてきた」と説明。

しかしながら、立会市場の午前立会の開始時間や午後立会時間の終了時間を変更することや、現在とは別の夜間市場を創設することによる取引時間の延長については、「非常に影響が大きすぎ、利用者のほうで否定的」と指摘。その結果、「とりあえず昼休みについて何らかの対応をすることが適当ではないか」と述べた。

ただ、昼休みに取引値段が止まっているということを利用して昼休み前後に取引を行う「板寄せ」や、同じく値段が動かないことを利用して機関投資家が行う「バスケット取引」のニーズが非常に高いとし、「結論としては、昼休みを完全撤廃するのではなく、短縮することにより、総取引時間を拡大するという結論に至った」と説明した。

具体的には、現物株の立会市場については、「アジア市場の動向に合わせた売買が可能となるよう」(斉藤氏)、午前の終了時刻を現在の11時から11時30分に30分後倒し(現在の「11時~12時30分」までの90分の昼休みを60分に短縮)して取引時間を拡大する。また、派生商品(デリバティブ)に関しても、指数先物・オプション取引の午前立会終了時刻を現物市場と同様に現在の11時から11時30分に後倒しするとともに、午後立会開始時刻を現行の12時30分から11時45分に変更(昼休みは現行の90分から15分に短縮)する。

斉藤氏は、上記の昼休みの短縮が実施される時期について、「来年のできるだけ早い時期に実現したいが、(パブリックコメント終了後)数カ月かかるので、春にはできたらいいなと思っている」と述べた。また、現物株市場で昼休みを30分短縮する効果については、「6%ほど取引量が増える」との試算結果を公表した。

今後の取引時間延長に関する議論の方向性については、「少なくとも昼休みをテーマにして議論することはない」と述べ、今回の決議で一定の結論が出たとの立場を表明。「個人的には、夜(夜間市場の創設)というところで、時間をかけながら討議していきたい」と、夜間市場創設を、今後の取引時間延長における主テーマとしたい考えを明らかにした。

また斉藤社長は同日、証券市場機能の強化策についての、市場関係者への提言も発表。特別気配の更新時間を現行の5分から3分に短縮して投資家の利便性を向上させることや、取引のグローバル化を踏まえた空売り規制の在り方について、調整していくこととすることなどを盛り込んでいる。