ドキュメンタリー映画『ザ・コーヴ』上映中止に関するシンポジウムが21日、東京・霞が関の弁護士会館で行われ、ジャーナリストの田原総一朗氏、映画監督の崔洋一氏らがゲストに招かれた。

シンポジウムには田原氏(中央)や崔監督(右)のほか、漫画家の石坂啓氏(左)、月刊『創』編集長の篠田博之氏らも参加し、意見が交わされた

同作品は和歌山県太地町で行われるイルカ漁が批判的に描かれており、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞するも、日本では一部の映画館で上映中止に追い込まれるなど物議を醸している。田原氏は作品について「ノンフィクションではなく宣伝映画。ノンフィクションなら『なぜイルカを捕るのか?』と質問から始まるのに、この映画は『イルカを捕るなどありえない』という考えから入っており、最初から漁民は敵だと決め込んでいる」と述べる一方で、「ただ、宣伝映画としてはよくできている。隠し撮りでもあれほど大がかりにやると、血の海を見ても『見事に撮れてるなあ』と思えてしまう。もちろん不愉快ですよ。でも不愉快な映画を見てはいけないということではないし、ある部分では面白い映画だと思いました」と評価した。

質疑応答では、反捕鯨団体の「シー・シェパード」との関わりを隠している出演者・製作者がいることを報道陣から指摘される場面も。担当者から「シー・シェパードとの関連については、基本的にリック・オバリーさんもルイ・シホヨス監督も『ない』と断言しています」と説明があった後、崔監督もこの件に触れ、「製作者が…と言っていましたが、あれは虚構を前提に作られた映画であって、ある意味でプロパガンダ。意図をもって作られており、記録として、あるいは事実をフェアに検証した映画として語るのは難しい」とコメント。しかし、国内で上映中止への圧力がかかったことについては、「プロパガンダだからと言って、右か左かの認識で否定するのはナンセンス。この映画をなぜ"反日映画"と思う人がいるのか、僕には理解できなかった」と述べた。

シンポジウムには上映が決定している劇場の関係者も出席したが、うち1人が抗議団体による街宣活動で欠席を余儀なくされる事態に。他の劇場も電話やメールで続々と抗議が来ているそうで、上映に向けて苦慮している様子だ。それでも「作品を支持する・しないで上映を決めるのは、映画館として行きすぎ。『この作品はおかしい、偏っている』というのなら、まず見てもらってから評価してほしい」と語っていた。   映画『ザ・コーヴ』はシアター・イメージフォーラム(東京)、横浜ニューテアトル(横浜)、第七藝術劇場(大阪)、京都シネマ(京都)、フォーラム仙台(宮城)、フォーラム八戸(青森)の6館で7月3日より公開が決定。ほか、国内22館で順次公開される予定だ。