ところで最初に話を戻すが、Light Peakそのものは新しい「I/O Protocol」は定義しないが、流石にTransport Protocolは何か用意しないとまずいというのは自明である。大昔のSCSI Extenderならば電気的変換だけで済むが、複数プロトコルだのQoSだのをTransport Protocolなしで実現するのは不可能である。このあたりの説明がこちら(Photo17)で、どうもUSB 3.0のTransport Protocolを簡略化したものを用意しているらしい。USB 3.0ではPipe、PCI ExpressやHyperTransportではVirtual Channelという概念を使ってRoutingやQoSを実現しているが、Light PeakはこれをVirtual-wireとして実装しているようだ(Photo19)。

Photo17: もっともUSB 3.0もかなり重いプロトコルな気はするのだが...パケットそのもののオーバーヘッドは少ないが、State Machineは結構複雑である。このあたりをどう解決するのか、が見ものである。

Photo18: もう一つ見えてこないのが、Application-Specific Protocol Stacksから、LPK Protocol Stackがどう見えるか? という問題。例えばDiscrete GraphicsのDisplayPort出力をLight PeakのRouterに入れる事ができるのか、それともIGPの出力を内部でRoutingして、Light Peakに入れる事しかできないのか、そのあたりもいまいち不明である。

Photo19: credit-based flow controlというあたりに一抹の不安を覚えなくは無い。ということは、PCI ExpressのFlow Controlを基本にしていることになるからだ。

まぁこのあたりはそれほど不思議ではない。やや不思議なのは、途中にSwitchが入るとされることで(Photo20)あるが、これが本当の意味でのSwitchなのか、それともHubとしてしか動作しないのか、は現時点で不明である。SwitchとHubの違いは? というと、要するに図2の様に複数のHostからぶら下がるDeviceを混在させられれば、確かにSwitchであるし、図3の様に単に1つのHostからのLight Peakの配線を複数に分岐させられるだけであれば、Hubということになる。USBをベースにするというあたり、実際には図2の構成は考えていない気もしなくはないが、これはCIO Headerの中身を見ないと現状ではなんとも言いがたい。

Photo20: パケットサイズが260Bytesという小ささなのも、どんなものか? Protocol Overheadそのものは小さい(4÷260≒1.53%)し、銅線の場合と異なり信号のスキューを考える必要はないから、無駄なタイミング確保の時間は最小になると思われるが、パケット数が無闇に増えることのオーバーヘッドが気になる部分だ。

一応Intelは2010年後半にはコンポーネントの提供を開始する予定で、2011年にはこれを使った製品が出てくるとしている(Photo21)。

Photo21: 問題はこの説明が行われた"Light Peak: High-speed Optical Cable Technology"というセッションがIntel LabsのRES(Redefining Tomorrow's Technology)で説明されたこと。つまりまだIntel Labsが主導を取っている状態な事だ。あと半年でこれを量産に持って行けるのか? が最初に気になるところだ。

ということでかいつまんでLight Peakの情報を説明してきたが、筆者の主観で言えば「なんかHyperTransport Linkを再発明してないか?」という感じがひしひしとする。LPK Stackの詳細が不明なので断言は出来ないが、光ファイバを使う以外はHyperTransport Linkと極めて似た機能を持つLinkという事になりそうだ。まぁIntelとしてはHyperTransport Linkを使う事はできないだろうし、なので再発明は致し方ないのだろうが。

で、このコンセプトは果たして成功するか? というと「すごく微妙」である。どちらに掛ける、と問われたら、とりあえず成功しないほうに3,000円位(?)は掛けてもいい。というのは、確かにこのアイディアでPCに配線が集中することは避けられるが、今度はLight Peak Dockに配線が集中するだけだからだ。つまり根本的な解決になっていない。Wireless USBの様に根本的に配線を撤廃するところまで行っておらず、単に配線の場所が移動しているだけである。

しかも10Gbpsという帯域は、既に不足することが目に見えている。なぜかといえば、マルチディスプレイがどんどん普及しつつあるからだ。別にAMDの「Eyefinity 6」をカバーせよとは言わないが、せめて3画面くらいはまとめてサポートしてくれないと不足を感じる人は少なくないだろうし、Display Port自身が最大10.8Gbpsの転送速度を持つから、もうこの時点で帯域を使い切ってしまう。せめて最初から20Gbps程度の性能はほしかった。

代替するソリューションが他にもあるのも問題だろう。Displayを別にすれば、その他の用途はUSB 3.0で全部片付く。家庭用には100mものケーブル長は必要ないし、今はまだちょっと高価(特にUSB 3.0 Hubは初物価格な事もあってかなり高価)だが、今年末にはもっと使いやすい価格になるだろう。Light Peakのアドバンテージは2倍の帯域と今後の性能拡張性だが、普及にはちょっと動機付けが弱い感じを受ける。むしろもっと帯域を広げて、サーバ向けのTransportにしたほうが良かったのではないか? というのが率直な感想である。