韓国のVIPも通う宮廷料理店

「韓国料理=激辛」。そんなイメージを持っている人も多いだろう。しかし、辛くない韓国料理もある。宮廷料理がその1つだ。海外ドラマ「宮廷女官 チャングムの誓い」にも登場していたので覚えている人も多いはず。朝鮮半島に唐辛子が伝わる前とされる朝鮮王朝時代に王が食べていた料理のことで、医食同源や五味五色の思想から、体によく彩り豊か。韓国ではいまも宮廷料理を供する店が多い。ここからは、本場韓国でもトップクラスの宮廷料理店「必敬斎」の料理を紹介していこう。

「必敬斎」店頭

「必敬斎(ピルキョンジェ)」(住所: 江南区水西洞739-1)は、現地では黒塗りの車で政治家も通うという名店だ。朝鮮王朝時代から19代に渡って守られている韓国式の家屋が店舗として用いられている。国の伝統建造物第1号にも指定されている建造物だ。ソウル中心部からは少し外れた水西洞にある。

「必敬斎」店頭。個室がメインで、それぞれの部屋は回廊でつながっている

今回選んだのは、「ランチコース」(6万w)。全品17品という豪華なコースで、前菜から炒め物、焼き物、鍋、肉料理、野菜料理、魚、蟹、ごはんと味噌汁、デザートといった順に、コース仕立てで数品ずつ、時間をおいてゆっくりと運ばれてくる。特筆すべきものを数品ピックアップし、紹介しよう。

前菜類

最初にでてくるのが、前菜の数々。中でもお粥は、宮廷料理の最初に決まって出てくるもので、まずこれを食べて胃に準備運動をさせるという意味がある。この日のお粥はカボチャで、きれいなオレンジ色。やさしい味わいで塩気が少なく、カボチャの甘みが感じられた。

その他の前菜は、、タコの刺身やパジョンなど。刺身には赤いコチュジャン風ソースがかかっているが、色みから連想するほど辛くなくさっぱり。パジョンは3種で、ズッキーニに卵液をつけて焼いたもの、レンコンの包み揚げのようなものなど、通常の家庭料理のお店と比べ、ひと手間加えてあるものが目立つ。

キムチは、ポッサムキムチと水キムチ、通常のキムチ。本来宮廷料理ではほとんど唐辛子を使わず、全体的に辛さがない。この魚貝類を白菜で包んだポッサムキムチと白菜キムチは現代風の味わいを取り入れたものだろう。実際、これ以外はほとんど辛いメニューはなかった。

「九折板」(クジョルパン)

九折板とは、9つに分かれた器の名前。今回のものは、生地と具材を合わせて7種類なので、正確に言えば「七折板」。スタイルは「九折板」と同じで、モチモチしたクレープ状の生地に、好みの具材をとって包んで食べる。生地も黄色や緑、白の3色で、並んでいるところが実に見栄えよい。ピーマン、人参、大根、肉など、具材はすべて細切り。具材自体にほとんど味付けしておらず、タレにつけて食べる。

「神仙炉」(シンソルロ)

しゃぶしゃぶ鍋のような独特の形の鍋にスープが張られ、たっぷりの具材がきれいに並べられて入っている。下から温められていているので温かな状態でいただける。大根や人参などの野菜類の他、練り物を揚げた鍋種も。スープは牛ベース。澄んでいているが、濃厚な旨みを持つもので、具材の味わいが溶け出していて、スープだけでもおいしくいただける。