『Hard Rock Calling』2日目-ラストへ向けて会場はトーン・アップ

前日に続く晴天に恵まれた6月29日。この日はKTタンストール、STARSAILOR、THE BANGLES、THE STRANGLERSら時代を彩ってきた人気アーティストたちが、メインと2ndの両ステージに次々と立っては迫力のステージを展開していった。しかし、この日集まったオーディエンスの一番の目的は、他でもないヘッドライナーのポリスだったに違いない。それを証明するかのように、ポリスの公演時間が迫ると、さっきまでビールや日光浴に溺れていた多くの観客が、次々とステージ前へ押し寄せていた。それもそのはず、2007年に期間限定の再結成を果たしたポリスにとって、今回がイギリスで最後の生ライブなのだ!

喉を痛めたKTタンストールは全取材を断ってステージに専念。声は通常より低かったが、喉を温存したおかげか!? ラストの『Suddenly I see』はやはり圧巻! 取材を断られた時に一瞬恨んでごめん……

ポリスの再々結成はない-ステージ直前にアンディが胸の内を語った!

イベントのおおとり・ポリスのギグが始まる直前。ほんの一瞬ではあるが、奇跡的にメンバーのアンディ・サマーズにインタビューすることができた。「ロンドンといえばハイドパーク。音楽だけじゃない。すべてにおいて"自分とは切り離せない場所"なんだ」――アンディは感慨深げに会場のハイドパークについて語った。

無愛想で気難しいかと思いきや、実は単にマジメなアンディ・サマーズ。インタビュー中も質問内容と答えがズレないように、何度も質問意図を確かめる姿が印象的だった

アンディ : 「個人的には、こういうフェスよりも、自分たちだけのソロ・ライブの方が観客もパワフルで好きだけどね。でも、そんなことはどうだっていい。ライブがどんな形態であろうと、俺たちはいつも最高のショーをするために努力しようとしているのだから」

しかし、この日は通常のフェスでのライブとは違う盛り上がりを見せるに違いない。何と言っても、今回はポリスにとってイギリス最後のライブなのだから……。

アンディ : 「確かに、再結成をしてからというもの、俺たちはものすごい成功を収めてきた。ポリスはグループとしての個性に何か魅力があったに違いない、と改めて思うよ。でも、それ以上に音楽が良かったんだろうね。最初から、俺たちの音楽は他のバンドには決してないオリジナル性があったから」

その言葉からグループとしての誇り、メンバーへのリスペクトの念がひしひしと伝わってくる。が、同時にアンディはキッパリとこう付け加えた。

アンディ : 「再々結成はないと思うよ。あと何週間もすれば、俺らの活動は終わりさ」

ポリスとしての活動は、この夏の全米ツアーを最後に見納め。アンディの含みのカケラもない口調から察するに、再結成ツアーの延長や再々結成は本当になさそうだ……

ポリス、イギリス最後のギグへ!

午後8時。メイン・ステージ前には今回のフェス最大数の観客が押し寄せていた。見渡す限り、レジャーシートの上でゴロゴロ転がっている観客はもはやいない。みんな、イギリスで見られるポリス最後のステージを全身で楽しもうと構えていた。

ライブは突然始まった。しかも1曲目は、誰もが知る名曲『Message in a Bottle(孤独のメッセージ)』! 会場からは悲鳴に近い歓喜の声が沸きあがった。ステージ上のポリスとすし詰めのオーディエンスとの間に、ものすごい熱気が行き交う。その熱気は、スティングによるバンド紹介でさらにヒートアップ! 「The legendary Andy Summers!(伝説のアンディ・サマーズ)」、「The extraordinary Stewart Copeland!(非凡なスチュワート・コープランド)」――目の前にいるのが紛れもないポリスであることを再確認し、さらなる興奮に包まれるオーディエンス。それに応えるかのように、極度の腰痛から異例の背もたれ付きチェアーに座ってドラム演奏をするスチュワートも、体調不良を感じさせない最高の笑顔を振りまいている。

ちなみに、お喋り好きのスチュワート・コープランドは、フェス2日目に総合司会を担当する予定だったが、腰痛が本当に辛かったらしく断念。プレイ中も後半、時折辛そうだった……

56歳とは思えぬパワーと、渋みのあるカッコよさを併せ持つスティング。普通の爺さん化していたクラプトンの容姿にガッカリした後だったので、余計に輝いて見えた!

しかし、スティングはまだまだ満足できなかったようだ。2曲目の『Walking On the Moon(ウォーキン・オン・ザ・ムーン)』直前で3回も「歌う準備はできてるか?」と言ったかと思うと、少し雰囲気が間延びしがちなライブ中盤には「両手を上げろよ!」、「俺をガッカリさせるなよ!」と叫び、ステージを左右隅々まで走りながら客を煽る、煽る! プレイも然ることながら、その勢いたるやまるで初ライブのよう。決して衰えることのないポリスのパワーに触発され、オーディエンスも『Don't Stand so Close to Me(高校教師)』、『Roxanne(ロクサーヌ)』など全17曲に最高のノリで応えた。

こうして、ポリスのイギリス最後のライブは最高の熱気とともに終わり、『Hard Rock Calling 2008』も幕を閉じた。なかなか帰ろうとせず、ビール片手に意気揚々と歌ったり、熱く語ったりする客たちの姿から、このイベントがロンドナーたちに与えた興奮度の高さが伺われた。その熱狂ぶり、WOWOWで8月27日に放送される『HARD ROCK CALLING~ロンドン最大級の音楽イベント』でぜひ味わってほしい!

さて、そんな大イベントを仕掛けたイベント興行会社LIVE NATIONのプロモーター、トビー・レイトン=ポープ氏にも今回の取材でお話を伺うことができた。
【トビー・レイトン=ポープ氏インタビュー】
こちらでは当イベントの舞台裏に迫っているので、読んでいただければ幸いである。

(c)PG Brunelli