近年、ビール人気が低迷している。いくつか理由が考えられ、思いつくものを挙げると以下のとおりだろう。

まず、若者のビール離れ。もちろん絶対にやってはいけないことだが、バブル期によくみられた「一気のみ」といった習慣が少なくなり、ちびちびと飲むお酒に人気がシフトしている。また、缶チューハイといった酒類の台頭も大きい。居酒屋チェーンで誕生したチューハイが、缶入りというカタチで売られ、缶ビールの市場を大きく蚕食した。さらに、昨年に施行されたビールの安売り規制も影響しているだろう。

マンネリ化してしまった日本のビール

ただ、もっともビール人気にかげりをもたらしたのは、マンネリ化だと思う。「アサヒスーパードライ」や「キリン一番搾り」といったブランドが力を持ちすぎ、「どれを飲んでも同じ」というイメージがまとわりついた。日本酒やワインなら、自分の好きな銘柄を見つけて飲むという楽しみがあるが、ビールにはあまりそうした愛好家はいない。出された缶ビールやジョッキを、あまりコダワリなく飲むのではないだろうか。

クラフトビールの可能性を語る、キリンビールの山田精二氏

そうしたビールのマンネリ化に風穴を開け始めているのがクラフトビールだ。クラフトビールは20年ほど前に流行した“地ビール”とイメージを重ねるとわかりやすい。小規模な醸造所で造られ、伝統的な製法が用いられる。この小規模というのがポイントで、全国各地にクラフトビールメーカーがあり、そしてそれぞれ味が異なる。つまり、これまでどこに行っても一律の味だったビールに個性が生まれ、好みの味を見つけるという楽しみが増えたのだ。