受信者の意向を無視して送られてしまうスパムメール。中にはウイルス感染や個人情報流出を狙った悪質なものもあり、企業としてもスパム対策は欠かせません。本稿では、おすすめのスパム対策ツールを紹介し、その特徴を比較するとともに、ツールの選び方についても解説します。
スパム対策ツールとは
総務省によると、2020年3月時点で電子メールの総数は1日あたり156,499万通あり、そのうち44.58%の69,768万通は迷惑メールが占めています。迷惑メールの一種であるスパムメールには、広告・宣伝目的のものだけでなく、フィッシングサイトへの誘導やウイルス配布・個人情報の詐取などもあり、放置していると危険です。
スパム対策の手段としては、メールサーバー・メールソフトでのフィルタリングやメールの受信許可アドレス設定などがあります。しかし、それでもスパムメールが多い場合は、セキュリティツールであるスパム対策ツール・サービスを導入すると効果的です。
スパム対策ツール・サービスのおすすめ7選徹底比較!
ここからは、おすすめのスパム対策ツール・サービスを紹介し、各製品の特徴を比較します。自社に合ったツールを探してみてください。
「m-FILTER」
デジタルアーツ株式会社
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:アプライアンス、クラウド
- 従業員規模:10名以上
- タイプ:ゲートウェイ型、クラウド型
- 対象機能:フィルタリング、送信ドメイン認証
- 無料トライアル:あり
メールの外部攻撃対策・無害化・誤送信対策とスパム対策が揃う 多機能なメールセキュリティソフト。 m-FILTER MailFilterとm-FILTER Anti-Spamを組み合わせることで、強力なスパム対策が可能 です。
Anti-Spamでは、Cloudmark社のスパム判定エンジンを使い、スパム対象除外メールアドレス自動学習機能やデザインテンプレートフィルタなどの多彩なフィルタリング方式を採用。また、 ユーザーごとにスパムフィルタリング時のアクションを指定できる点も便利です。
「OneOfficeメールソリューション」
株式会社TOKAIコミュニケーションズ
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド、SaaS、ASP、サービス
- 従業員規模:100名以上
- タイプ:クラウド型
- 対象機能:フィルタリング、ウイルスチェック(標的型攻撃対策の機能)、送信ドメイン認証
- 無料トライアル:あり
メールセキュリティソリューション「OneOfficeメールソリューション」は、 6種類のサービスを提供しており、スパムメール対策「SPAM Filtering」はその中の1サービスです。
平均99%というスパム検知率を誇るスパム検知エンジン CISCO社のIronPortを使うとともに、送信者とメール本体を2段階で評価する仕組みを採用。スパムメールの隔離やなりすましのフィルタリング機能、ホワイトリスト・ブラックリストも可能です。
「Microsoft 365 with IIJ」
株式会社インターネットイニシアティブ
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド
- 従業員規模:300名未満(300名以上は別プランあり、別途相談)、別途初期費用が必要
- タイプ:クラウド型
- 対象機能:フィルタリング、ウイルスチェック、送信ドメイン認証
- 無料トライアル:別途問い合わせ
「Microsoft 365 with IIJ」は、 IIJ経由でMicrosoft 365を購入すると、同じ価格でメールセキュリティ機能が追加 される、メールセキュリティサービスです。
Microsoft 365でもスパム対策はしていますが、グローバルサービスのため日本語メールのスパム検知は弱いとされています。本サービスを導入すると、 日本語メールのスパム検知率向上が見込めます。
中小企業で、 可能な限り低予算でメールセキュリティを高めたい、Microsoft 365を導入できる、という場合におすすめ のサービスです。
「使えるメールバスター」
使えるねっと株式会社
- 参考価格:受信フィルタ 1ヶ月契約1ドメイン 2,200円/月、送信フィルタ 1ヶ月契約1ドメイン 1,320円/月
- 提供形態:クラウド、SaaS
- 従業員規模:全ての規模に対応
- タイプ:クラウド型
- 対象機能:フィルタリング、ウイルスチェック、送信ドメイン認証
- 無料トライアル:別途問い合わせ
「使えるメールバスター」は、自己学習型のAIフィルタリング機能を搭載 したクラウド型のメールセキュリティサービスです。スパム対策だけでなく、ウイルスチェック機能などもあり、さまざまな手法でスパムメールをブロックします。
また、メール送信用のフィルタも提供。万が一ウイルスに感染しても、自社メールサーバーからのスパム・迷惑メール配信を防止 。自社の社会的信用の低下を防止できます。
「IIJセキュアMXサービス」
株式会社インターネットイニシアティブ
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド
- 従業員規模:全ての規模に対応
- タイプ:クラウド型
- 対象機能:フィルタリング、ウイルスチェック、送信ドメイン認証
- 無料トライアル:あり
「IIJセキュアMXサービス」は、クラウド型で低コスト・高機能なメールセキュリティサービスです。基本機能で提供される脅威メールフィルタは、ウイルスフィルタ・迷惑メールフィルタや条件を指定したフィルタなど 多層構造でスパムメールを検知。日本語メールのスパム対策が得意な点も強みです。
ドメインと送信元サーバーの整合性やメール自体の正当性も確認 し、なりすましメールも防止します。
「Vade for M365」
Vade Secure株式会社
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:SaaS
- 従業員規模:全ての規模に対応
- タイプ:クラウド型、エンドポイント型
- 対象機能:フィルタリング、ウイルスチェック、送信ドメイン認証
- 無料トライアル:あり
「Vade for M365」は、導入済のMicrosoft 365に対して、AIを使った脅威検知など高機能なメールセキュリティを追加するSaaS型のサービスです。 メールボックスを自動的に継続スキャン して危険なメールを排除。動的なフィッシングメール、ランサムウェア、スピアフィッシング攻撃(標的型攻撃)にも対応します。
「@Securemail Plus Anti-Spam」
株式会社ケイティケイソリューションズ
- 参考価格:初期費用 10,000円 10アカウント 2,000円/月~
- 提供形態:クラウド、SaaS、ASP
- 従業員規模:10名以上
- タイプ:クラウド型
- 対象機能:フィルタリング
- 無料トライアル:あり
「@Securemail Plus Anti-Spam」は、ProofPoint社によるスパム対策エンジンを利用した、クラウド型のスパム対策サービスです。10アカウントから利用でき、低コストで導入できるため、 従業員数の少ない中小企業にも利用しやすくなっています。
スパムメールを検知すると、アカウントごとに作成されたクラウド上の検疫フォルダに該当メールを格納。メールを利用している クライアント端末でスパムメールを受信せずに済みます 。検疫フォルダの内容は、月~金曜日の8・13・16時にメールにて通知されるので、必要なメールが検疫されてしまった場合にも対応できます。
スパム対策ツールの種類4つ
スパムメール対策ツールには、以下の4種類があります。それぞれの特徴を把握し、どのタイプを導入するか検討しましょう。
1、メールサーバー型
メールサーバーにスパム対策ツールをインストールするタイプです。オンプレミス型で、社内でメールサーバーを運用している場合に適しています。スパム対策ツールインストール済みの物理サーバーを設置したり、仮想環境に設置しているメールサーバーにインストールしたりするパターンもメールサーバー型です。
メールサーバー型の特徴は、自社で運用管理するという点です。柔軟なカスタマイズができる点や外的要因を気にせずに済む点はメリットですが、運用コストはかかります。
2、クラウド型
クラウド型は、GmailやOffice 365メールなどクラウド上でメール管理をしている場合や、自社でのメールサーバー運用が困難な場合に利用します。クラウド上のサービスを利用するため、運用する手間はかかりません。
ただし、自社に合わせたカスタマイズが難しく、障害がある場合の復旧はサービス提供者任せになる点がデメリットです。
3、ゲートウェイ型
ゲートウェイ型は、メールサーバーとインターネットの間にゲートウェイ機器設置するタイプです。自社の環境を変えず、機器を設置するだけで導入が簡単な点や、自社環境を変えずに済む点がメリットです。ただし、ハードウェアの導入が必要なので、初期費用が高額になりがちな点はデメリットとなります。
4、エンドポイント型
メールを送受信するエンドポイント端末(パソコンやスマートデバイスなど)にインストールして利用するタイプです。中小企業で従業員数が少ない場合は、導入コスト・運用コストともに安く抑えられる点が魅力です。ただし、全ての端末にスパム対策ツールをインストールする手間がかかります。
スパム対策ツールの基本3機能
スパム対策ツールの基本的な3つの機能について解説します。
1、フィルタリング
スパム対策ツールの基本機能は「フィルタリング」です。フィルタリングの種類は主に以下の4種類あり、それぞれ特徴があります。
種別 | 特徴 |
---|---|
ブラックリスト | 受信を拒否する件名やドメインを設定 |
ホワイトリスト | 受信を許可する件名やドメインを設定 |
コンテンツフィルタリング | メールの内容を自動解析 |
レピュテーションフィルタリング | スパムメール情報データベースを参照し、メールの内容からスパム度を採点 |
ブラックリストとホワイトリストは従来のフィルタリング方式ですが、登録に手間がかかる問題があります。
コンテンツフィルタリングやレピュテーションフィルタリングは自動でスパムメールかどうかの判別ができるため、利用者に負担はかかりません。ただ、スパム判定の精度や、高機能な分費用もかかる点はネックです。
スパム対策ツールは、多くの場合複数のフィルタリング方式を採用しているため、どのフィルタリングが可能かは確認しましょう。
2、ウイルスチェック
悪質なスパムメールの中には、メールを開封しただけでウイルスに感染するものもあります。メールのフィルタリング後にウイルスチェックを行い、メールを最終的に削除するかどうかの判断を受信者に任せる通知を行う、という処理が一般的です。
3、送信ドメイン認証
なりすましメール(送信者を偽装したメールのこと)を検知するための機能です。フィルタリング機能だけでは難しいなりすましメールも、送信ドメイン認証機能があれば検知できます。
検知方法は2種類。1つは送信者アドレスを利用した方法、もう1つは、電子署名を利用した方法です。
スパム対策ツールの選び方5つ
スパム対策ツールを選ぶ際に、比較検討したいポイントは以下の5点です。
1、予想損害金額と投資コストの比較
スパム対策ツールにかけるコストは、スパムメールで起こり得る被害や作業コストを算出して検討してください。スパムメールにより発生する可能性のあるセキュリティインシデントで発生する可能性のある損害額と、スパムメールを処理する従業員の作業コストは、思ったよりも高額になるかもしれません。
例えば、100人の従業員がスパムメール処理に1日5分使っただけでも、全社では1日8.3時間の無駄になります。従業員の平均時給が2,000円とすると1日16,600円、1年の営業日を240日としても、1年で398.4万円ものロスが発生する計算です。
このように計算をして、スパム対策にいくら金額をかけられるかを算出して、製品ごとのコストと比較検討しましょう。
2、既存のセキュリティツールで不足する機能かどうか
すでにさまざまなセキュリティツールを導入している場合は、不足するセキュリティ対策を補うスパム対策ツールを選びましょう。シンプルな機能のスパム対策ツールは、低コストで利用できるというメリットがあります。
3、提供形態と運用しやすさの比較
クラウド型(SaaS)やゲートウェイ型は、自社の運用負荷が軽くなるため、運用しやすい提供形態です。ただしゲートウェイ型はハードウェアの価格が高額になる傾向があります。
オンプレミス(メールサーバーやクライアント端末にインストールするタイプ)は、自社で運用する分手間はかかりますが自社に合わせた柔軟な運用やカスタマイズ性の高さがメリット。自社の状況に合わせて提供形態を選び、製品を絞り込んでください。
4、最新の脅威への対応
スパムメールやサイバー攻撃の手口は日々進化しています。未知の脅威に対してどのような対策を取っているのかも、製品比較時に確認したいポイントです。AIを利用した検知エンジンや、日々スパムメールの情報を収集するデータベースを活用しているなど、製品によって対応は異なります。
5、クラウドメールのセキュリティ対策
近年はクラウドメールを利用する企業も増えています。クラウドメールとは、Gmailなどのように、直接パソコンにダウンロードせず、ブラウザ上で利用できるメールサービスのことです。クラウドメールのセキュリティ対策は、基本的にクラウド型のスパム対策サービスが向いています。
まとめ
スパム対策ツール・サービスは、企業をセキュリティインシデントによる被害から守るために必要です。電子メール全体の4割以上を占めるスパムメールは、削除するだけでも手間がかかります。スパムメールの処理で従業員が手間取っているようなら、無駄な作業を削減するためにもスパム対策を検討しましょう。
ご紹介した中で気になるスパム対策ツール・サービスがあれば、より詳しい資料を入手して、導入時の比較検討にご活用ください。